障害者手帳の取得で受けるメリットとデメリット、申請の手続きも詳しく解説

2023年3月14日

障害者手帳を取得すると、具体的にどのような良いことがあるのでしょうか。手帳取得を検討されている方・お悩みの方々が障害者手帳について理解し、自分に合ったサポートを利用していただけるよう、この記事では、障害者手帳によって得られるメリットについて、分かりやすくご紹介します。

障害者手帳とは?

 

障害者手帳とは、障害と共に生きる方を支援するために発行される手帳です。何らかの障害のある方とその家族を、経済的・物理的にサポートをしてくれる証明書となるものです。

障害者手帳には、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳の3種類があります。

  • 身体障害者手帳:身体の機能に一定以上の障害があると認められた方に交付されます。1級〜6級(7級)の等級があります。
  • 精神障害者保健福祉手帳:精神状態に一定の問題や機能障害があることを認定するものです。精神疾患の状態と、能力機能障害の状態の両面から1級〜3級の等級が総合的に判断されます。
  • 療育手帳:知的障害があると判定された方に交付される手帳です。上記2つの手帳と違って法律で定められたものではなく、都道府県や政令指定都市・中核市などの自治体が発行します。認定基準も自治体によって異なります。

取得は任意ですが、いずれの手帳も障害者総合支援法の対象となり、様々な支援や経済的負担の軽減を受けることができます。

 

障害者手帳を取得することで得られる3つのメリット

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障害者手帳を取得することによって、得られるメリットは大きく分けて4つあると考えています。

1つ目は、「働き方」の選択肢が広がること。2つ目は、公共料金の割引を受けられること。3つ目は、各種税金の軽減・控除が受けられること。4つ目は、医療費の助成や福祉サービスの給付が受けられることです。

障害者手帳制度は、障害による制約や生きづらさを抱えている方の経済的・物理的負担を減らすと共に社会活動への参加を促進・支援することを目指しています。これらの仕組みによって、精神的な不安や負荷の軽減にもつながります。

では、1つ1つのメリットについて、詳しく見てみましょう。

障害者雇用枠で就職・転職活動ができる

1つ目に紹介するメリットは、障害者手帳の取得により障害者雇用枠での就労が可能になることです。

障害者雇用枠とは何か、また障害者雇用枠で働くことにはどんなメリットがあるかについて、ご説明します。

障害者雇用枠とは?

障害者雇用枠とは、障害のある方のために企業や自治体に設けられている雇用枠です。
一定人数以上従業員のいる企業や自治体は、障害者総合支援法によって、一定の障害のある方を雇うことが義務付けられています。(令和2年現在、従業員が45.5人以上の民間企業の事業主には、2.2%の法定雇用率が定められています)

障害によって一定の制限がある方は、一般就職をしようとしても同条件では働くことができないことが多くあります。そのギャップを解消し、皆が働く機会を得ることができるよう定められたのが障害者雇用枠です。

現在、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳の3つのうち、いずれかの手帳を持つ方が対象になっています。

一般雇用枠との違い

障害者雇用枠での就労は、障害をオープンにして雇用関係を結ぶため、一人一人異なる障害特性に対しての配慮が受けられます。

一方で障害があっても、そのことを就職先に伝えず一般雇用枠で働くこともできます。
その際、一般枠では障害に対する配慮は少なく、周囲と同じ条件や裁量で仕事を任されるのが一般的です。

障害者雇用枠のメリットは、前述のように障害特性への理解・配慮が得られることです。障害への配慮もあり、残業のない求人が多くみられます。
しかし、一般雇用枠に比べると、求人の数は少なく、仕事の選択肢が狭められてしまうことがデメリットといえます。

また、障害に対する配慮が影響し、逆に裁量のある仕事にありつけないことで悩む従業員もいるようです。障害者雇用枠で就職する場合には、仕事内容、期待される役割、社内でのキャリアプランについて、より重点的に確認することが大事といえるでしょう。


上司とうまくコミュニケーションをとることで、「配慮のある労働環境」と「やりがい」の両面で満足の行く仕事についている方も多くいます。

障害者雇用枠で受けられる配慮とは?

障害者雇用枠では、障害の有無にかかわらず従業員が平等に働き、能力を発揮できるよう、1人1人の特性に合わせた配慮を得ることができます。これを合理的配慮といいます。

事業者には、この合理的配慮を障害のある方に提供する義務があります。そのため、障害者雇用枠での就労の際には、障害特性や体調等に合わせて、働きやすい環境にするための配慮や環境調整を企業側と相談することができます。

合理的配慮の具体例

発達障害:特性に合わせた業務内容の決定・定期的な声かけや個別相談の実施・業務指示やスケジュールを明確化するなど
視覚障害:口頭での説明・点字の活用・音声ソフトの利用・盲導犬対応など
聴覚障害:筆談やメールの利用・手話による通訳・重要事項の視覚化・マニュアル作成など
肢体不自由:移動負担の軽減・スロープや手すりの設置・車椅子への対応・出勤時間調整など
知的障害:ジョブコーチ配置・指導担当者を定める・理解度の把握の工夫・図や写真を活用した業務マニュアル作成など
精神障害:業務量の調整・個別相談やカウンセリング実施・時差通勤・残業なしの配慮・特性と対処法の共有など

参考:合理的配慮指針事例集

公共利用料金が安くなり、助成金も受けられる

障害者手帳を取得することによって、様々な公共料金の割引を受けられるメリットがあります。

  • 水道料金の基本料の減免
  • NHKの受信料の割引
  • 携帯電話料金の割引
  • 公共交通機関の運賃の割引
  • 美術館・映画館・遊園地など文化・娯楽施設での割引


※障害者手帳の種類・等級によって、受けることのできる割引には違いがあります。詳しくは自治体や各事業者にお問い合わせください。

税金が軽減される

障害者手帳をお持ちの方は、障害者控除をはじめ様々な税金の特例を受けることができます。

  • 所得税の障害者控除
  • 相続税の障害者控除
  • 贈与税の非課税(特定の障害者の方に限ります)
  • 少額貯蓄の利子などの課税免除

参考:国税庁ホームページ

また地域によって、自動車税などの地方税も割引になる場合があります。詳しくはお住まいの自治体窓口に問い合わせましょう。

※障害者等級や程度により控除額や非課税対象額は異なります。詳しくは国税庁や税務署等にお問い合わせください。

医療費助成や福祉サービスが受けられる

障害者手帳を持っていることで、医療費の助成や福祉サービスの給付を受けることができます。

  • 障害者医療費助成
    通院や入院にかかる費用が助成される場合があります。障害者手帳の種類・等級、またお住まいの自治体によっても、助成の範囲には違いがあります。
    心身障害者医療費助成(通称:マル障)
    重度の障害がある場合に受けられる医療費の助成です。自治体によって扱いが異なりますが、例えば東京都では、身体障害者手帳1・2級、療育手帳1・2度、精神障害者保健福祉手帳1級で住民税非課税の場合、医療費の負担がなくなります。
  • 補装具費支給
    身体障害者手帳をお持ちの方が、原則1割の負担で、車いす・補聴器・歩行器などの補装具を購入・修理する費用につき助成を受けられる制度です。
  • バリアフリーリフォーム補助金
    身体障害者手帳をお持ちの方が、住宅をバリアフリー化する際に、一定の要件で改修費用の補助を受けられる制度です。

 

※ 詳しくはお住まいの自治体の窓口にお問い合わせください。

障害年金との関係

障害者手帳と障害年金は別の制度として成り立っています。
障害者手帳を交付するかどうかの基準と障害年金を給付するかどうかの基準は異なり、それぞれ別に判断されるのが原則です。


ただし精神障害者保健福祉手帳の場合、申請時に障害年金の年金証書や年金支払通知書のコピーを提出することで、年金と同じ等級の手帳の交付を受けられます。
その逆、つまり障害者手帳を持っていても、障害年金受給の手続きを省略できることはありません。

 

障害者手帳を申請することにデメリットはあるのか?

障害者手帳取得によるメリットを紹介してきましたが、デメリットはあるのでしょうか?
手帳を取得するにあたり、周囲の目や偏見を気にされる方・ご自身の心理的ハードルで手帳取得を悩んでいる方も多くいらっしゃいます。


しかし、障害者手帳を取得しても、就職先に開示する義務はなく、一般雇用枠での就労を選ぶこともできます。また、障害者手帳が不要になれば返還することもでき、プライバシーは守られます。

そのため、障害者手帳取得による明確なデメリットはないと言えます。
あえて挙げるとすれば、障害者手帳発行にかかる手間でしょう。取得には、病院で診断書を発行する必要があります。精神障害者保健福祉手帳は、2年に1度の更新が必要です。

 

障害者手帳の取得方法・必要な手続き

 

障害者手帳を取得する手続きの流れや必要書類についてご説明します。
取得方法や提出書類は手帳の種類によって異なりますので、ご注意ください。

身体障害者手帳

  1. 申請書を入手する:まず市区町村窓口の担当窓口(市役所や障害福祉担当窓口など)で、交付申請書・医師に記入をしてもらう診断書の用紙をもらいます。
  2. 病院に行き、医師に診断書を記入してもらう:身体障害者手帳申請の場合、診断書を記入できるのは都道府県知事が指定した病院や医師です。これらは書類を入手する際に窓口で確認することできます。また、かかりつけ医がいる場合、病院や医師に指定を受けているかをチェックすることもできます。
  3. 申請に必要な書類をお住まいの市区町村窓口に書類を提出:以下にある申請に必要な書類をそろえ、窓口担当に提出します。
  • 交付申請書:お住まいの市区町村窓口でもらいます。
  • 診断書:市区町村窓口で入手し、医師に記入してもらい提出します。診断書は、「身体障害者福祉法第15条」に指定されている医師に作成してもらいます。
  • 本人の写真(縦4cm×横3cm):上半身・脱帽のもの
  • マイナンバーが確認できる書類:マイナンバー個人番号カードマイナンバー通知カード、個人番号の記載のある住民票の写しなど。
  • 身元確認ができる書類:本人確認のため、免許証や保険証など身元の確認できる書類の提示が必要です。

精神障害者保険福祉手帳

  1. 申請書を入手する:まず、医師に診断書を書いてもらうために必要な申請書を申請窓口にもらいにいきます。
    申請窓口は、お住まいの市区町村の担当窓口にあります。
  2. 医師に診断書を記入してもらう:主治医に診断書を記入してもらいます。精神障害者保健福祉手帳の申請のための診断書の作成は、精神科を受診した初診日から6ヶ月が経過していることが条件になるので注意しましょう。
  3. 申請に必要な書類をお住まいの市区町村窓口に書類を提出:以下にある申請に必要な書類を揃え、窓口担当に提出します。医師に診断書を書いてもらってから、3ヶ月以内に精神障害者保健福祉手帳を申請する必要があります。
  • 申請書:お住まいの市区町村窓口でもらいます
  • 診断書:市区町村担当窓口で入手し、医師に記入してもらったもの。または、精神障害を支給の理由として障害年金または特別障害給付金を受給していることを証明する書類の写し(年金証書など)
  • 本人の写真(縦4cm×横3cm):上半身・脱帽のもの

療育手帳

療育手帳は、自治体によって名称や制度、申請方法が違います。地域によって愛の手帳、みどりの手帳、愛護手帳などと呼ばれることもあります。まずはお住まいの市区町村の福祉担当窓口に相談するか自治体のホームページを参照し、申請方法や必要書類を確認しましょう。必要書類は都道府県によって異なる場合があります。
申請手順の具体例を紹介します。

  1. 市区町村の障害福祉担当窓口または児童相談所で申請を申し込み、知的障害判定の予約をする
  2. 必要な書類( 療育手帳交付申請書、本人の写真(縦4cm×横3cm)、印鑑)を揃える
  3. 心理判定員や小児科医による面接・聞き取り等を受ける。知的障害の程度は、18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所などで、心理判定員や小児科医が総合的に判断をします。*地域によって異なる場合があります

幼少期の様子が分かる資料や母子手帳の提示が求められる場合もあります。まずお住まいの担当窓口にご確認ください。

 

障害者手帳を申請する際に気をつけるべき2つのポイント

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都道府県によって障害認定基準が異なる

障害者手帳に関しては、お住まいの地域によって以下のような違いがあることにご注意ください。

● 手帳の名称(療育手帳)
● 色と形状
● 申請の方法や必要書類
● 手帳の発行の基準
● 障害の程度の認定区分
● 受けることができる福祉サービス

本来は統一基準が適用されることが望ましいですが、それぞれの手帳の発行に関する法的根拠の内容によって、各都道府県や自治体でその詳細が異なるのが実情です。
手帳取得に関する情報や受けられる支援の詳細に関しては、お住まいの自治体のホームページや窓口でご確認ください。

申請してから手元に届くまでに時間がかかる

障害者手帳は申請をしてから、通常以下の目安時間がかかります。

・身体障害者手帳:申請から交付されるまでに1ヶ月程度
・精神障害者保健福祉手帳:申請から交付されるまでに2ヶ月程度
・療育手帳:申請から交付されるまでに2ヶ月程度

なお、申請内容を医療機関等に確認する必要がある場合や、等級認定に審査が必要になった場合には、更に時間がかかることもあります。
障害者雇用枠での就職を希望される方、すぐに助成金やサポートを受けたい方は、早めに申請をした方が良いでしょう。

 

障害者手帳の更新手続き

身体障害者手帳の再認定制度

身体障害者手帳に再認定期日の記載がない方は、更新の必要はありません。

障害者手帳に有効期限が記載されている方は、決められた期限までに診断書・意見書の再提出が必要です。
また、障害の程度が変化した際、新たな障害が発生した際にも再認定を受けることができます。

*身体障害者手帳の障害再認定制度とは?
 将来的に障害程度の変化が予想されるケースでは、手帳交付時に自治体が再認定の期日を指定し、改めて障害の程度を診査されます。期日は1年以上5年以内とされています。医療の進歩等によって、時間の経過とともに身体の障害の障害程度が変化する事例が増加していることを受けて導入されました。
診査の結果、障害程度に大きな変化が見られた場合は、新しい手帳が交付されます。

精神障害者保健福祉手帳の更新手続き

精神保健福祉手帳の有効期限は2年であり、手帳保持を継続したい場合は2年ごとに更新が必要になります。
更新申請手続きは、有効期限の3ヶ月前から行うことができます。
現在交付されている手帳の写しと、前述した精神障害者保険福祉手帳を取得する際に準備するべき書類が必要です。
また、手帳更新の際には再度等級の審査が実施されます。

療育手帳の再判定

療育手帳の対象となる知的障害は、成長に伴い障害程度が変化するため、再判定が必要になります。
再判定が必要となる時期は自治体によって異なります。
療育手帳に再判定時期の記載がある方は、その時期までに再判定を受け、手帳の更新手続きを行ってください。
例えば、年齢に応じて再判定の時期を定めている自治体や、18歳未満の方に3歳・6歳・12歳時点で再判定を受けることを定めている自治体もあります。

 

まとめ

今回の記事では、障害者手帳を取得するとどのようなメリットがあるのか、そして手帳の取得方法や気をつけるべきポイントについてご紹介をしてきました。

障害者手帳の取得は任意であり、取得しなくてはいけないものではありません。
しかし、障害者手帳は、障害を持ち何らかの制約や困難を持つ方を支援するために作られたものです。
自分に必要だと思うサポートがあれば、この制度を使うことによって負担を軽減することができます。

医療費やその他の助成金が受給できること、各種公共料金が割引されることは経済的な負担の軽減につながります。また、障害者雇用枠での就職・転職活動ができることによって、自分に合った働き方を実現できる可能性が広がります。

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