障害者雇用における資格の活用術

2020年6月17日

障害者雇用枠で就職・転職するにあたって、資格を取ることは有利なのでしょうか?有利であれば、どの様な資格を、取ったら良いのでしょうか?

もちろん、資格を持っていなくても就職・転職は可能です。しかし、資格取得には、労力をかけただけ得られるメリットがあります。自分に合った資格を取得することで、就職・転職活動を有利に進められるようになるかもしれません。それは、障害者雇用枠であっても同じことがいえます。

今回は障害者雇用における資格取得の意義、資格の種類、取得方法をご紹介します。

資格を取得する意義

まずは資格を取得する意義を見ていきましょう。

自分の強みを分かりやすくアピールできる

資格を取得することで、自分のスキルや知識、適性を分かりやすく伝えることができます。スキルや知識の水準を客観的に伝えられるというだけでなく、面接の際、資格を取得した背景やその分野での意欲について自然に話題を広げられるのも良いですね。

希望の職種に就職しやすくなる

採用担当者の中には、障害者の方にどのような仕事を任せたら良いのか、イメージが湧かない、という方もいます。そこで、何をどこまでできるのか、資格で伝えることができれば、選考を進めるポジションを早く決めてもらえる可能性が高くなります。ある程度の知識を資格によってアピールできれば、未経験の分野への転職やキャリアアップにも挑戦できます。

勤勉さをアピールできる

ある資格を取得できたということは、一定の目標に向かって物事をやり遂げる計画性や勤勉さを備えていることの証明になります。これらはどんな職種での就職を目指す時でも、アピールポイントなります。

障害者雇用で活用できる資格の種類

それでは、障害者枠での就職に役立つ資格を、職種別に見ていきましょう。

事務系の職種に就きたい人が取るべき資格とは?

ここで紹介する資格は、事務系の職種に就きたい人だけでなく、他の様々な職種に就きたいと思っている人にとっても、ビジネスマンとして基本的な知識・スキルを証明するのに役立ちます。

事務系の職種全般で活用可能な資格

①マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)

Word・Excel・PowerPoint・Access・Outlookを使うスキルを証明することができます。Word・Excelにはスペシャリストとエキスパートの2つがありますが、スペシャリストを取得していれば日常業務には十分で、即戦力として評価されます。

②TOEIC(Test of English for International Communication)

英語のコミュニケーション能力を測るための世界共通基準での試験です。ビジネス英語を最低限使えるようになりたいという人は700点台、ビジネスで英語を本格的に使えるようになりたいという人は800点台を目指しましょう。

③ビジネス・キャリア検定

人事・人材開発・労務管理、経理・財務管理、 営業・マーケティングなどの各分野での実務能力を証明することができます。BASIC級、3級、2級、1級があり、BASIC級は学生などこれから就職する人、3級は3年程度の実務経験がある人を想定したレベルになっています。

④秘書検定

秘書業務に留まらず、ビジネスマンとしての一般常識やマナーを学ぶことができます。2級を取得していれば、一般的な秘書業務を担える人材として通用しますが、準1級を取得してれば即戦力となる高いコミュニケーション力を備えた人と見なされます。

経理職で活用可能な資格

①日商簿記検定

経理業務に必要な会計知識や、財務諸表の読み方を習得できます。3級を取得していれば、通常の経理業務をこなすことができますが、中途採用で評価されるためには、企業の経営管理に役立つ2級を取得しておくと良いでしょう。

②FASS検定

経理業務における実務能力を証明することができます。日商簿記検定と違い、経理担当としての実際の業務遂行能力を示すことができます。レベルA~Eの5段階評価になっています。

③ビジネス会計検定

財務諸表を読み、そこから企業状況を分析する力を身につけられます。会計的な視点で企業を分析することができるようになるため、ビジネスに関わる多くの人におすすめできる資格です。2級ではキャッシュ・フロー分析や損益分岐点分析といった応用的な知識も求められますが、独学でも合格を狙うことは可能なレベルです。

④給与計算検定

給与計算の知識に加え、社会保険や、労働関連の法律、税務知識についても学ぶことができます。2級を取得していれば、一般職員として給与計算業務を担うための知識を示すことができます。

⑤ファイナンシャル・プランニング技能士

税金、投資、住宅ローンなど、お金に関する知識を学ぶことができます。経理業務だけでなく、人事・労務や銀行業務でも活用できます。日常生活に役立てるために取得する人もいます。一般的に評価されるのは2級以上であると言われます。

人事総務職で活用可能な資格

①人事総務検定

人事・労務管理・年金など、人事総務に関する実務や知識を体系的に学ぶことができます。これから人事総務職に就きたい人にも、さらにスキルアップしたい人にもおすすめです。3級・2級の場合、検定試験の他、特別認定講習の受講によっても資格を取得できます。

②衛生管理者

作業環境や作業・健康管理など、労働者の衛生を管理する職員として活躍できます。産業医と連携して労働者の心身の健康を保ったり、災害時の避難経路を確保したりすることも業務に含まれます。

③メンタルヘルス・マネジメントⓇ検定

労働者の不調の予防と活力ある職場づくりに役立ちます。職場内での役割に応じてⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種が用意されていますが、Ⅰ種(マスターコース)が、人事労務管理スタッフ向けとなっており、企業経営におけるメンタルヘルス対策の意義から、人事労務管理スタッフに求められる能力まで、幅広く学べます。

④キャリアコンサルタント

キャリアプランの立て方に悩む人に対し、一人一人の課題・悩みに応じたアドバイスを行うスキルを証明することができます。近年では、キャリアカウンセリングを行う人材サービス事業者だけでなく、人事・採用担当者の中でも取得を目指す人が増えています。

IT系の職種に就きたい人が取るべき資格とは?

これからIT系の職種に就きたいという人向けの「IT全般・情報処理系」の資格、さらなるスキルアップを目指したい人向けの「エンジニア系」「マネージャー系」の資格に分けて紹介します。

また、以下では国家資格を中心に紹介していますが、AWS認定資格やオラクルマスターなど、ベンダー認定の資格もあります。

IT全般・情報処理系の資格

①ITパスポート

ITに関する基礎知識を学ぶことができます。就職・転職にあたって直接有利になるというよりは、様々なIT知識・スキルを習得するためのファーストステップとして勉強するのに役立つでしょう。

②基本情報技術者

IT業界で働くための基礎知識を学ぶことができます。情報システムの開発プロジェクトにおける設計・開発・テストといった実践的な技術も習得内容に含まれます。新卒でIT業界に就職する人に取得が求められることもある資格で、未経験でのIT系の職種に転職するのに役立つでしょう。

③応用情報技術者

ITを活用した経営戦略・情報戦略の策定に求められる知識を証明することができます。既にIT系の職種の経験のある人が、知識・スキルの向上のために取得するのにおすすめです。

エンジニア系の資格

①情報処理安全確保支援士(旧:情報セキュリティスペシャリスト)

情報セキュリティを管理するエンジニアに求められる知識を証明することができます。

②ネットワークスペシャリスト

ネットワークシステムの企画・要件定義・開発・運用・保守に関わる知識・スキルを証明することができます。

③データベーススペシャリスト

データベースの技術の動向を踏まえた技術の選択、データベースの企画・要件定義・開発・運用・保守に関わる知識を証明することができます。

④エンベデッドシステムスペシャリスト

スマートフォンやデジタルカメラ、エアコンなどの組込みシステムの開発において、開発環境構築・設計・製造に関わる知識・スキルを証明することができます。

⑤システムアーキテクト

システムの要件定義・アーキテクチャ(構成)設計・開発主導といったシステム開発の上流工程で求められる能力を証明することができます。

マネージャー系の資格

①ITストラテジスト

企業の経営戦略に基づき、IT技術を活用した提案・計画・実行を行う能力を証明することができます。

②システム監査技術者

システムを、故障リスク等の観点から評価・点検(監査)する能力を証明することができます。

③ITサービスマネージャ

システムの安定的な稼働のための管理・改善(メンテナンス)を行う能力を証明することができます。

④プロジェクトマネージャ

システム開発プロジェクトにおいて、品質・予算・納期に責任を持ち、プロジェクトの管理・運営を行う能力を証明することができます。

Webデザイン系の仕事で活用可能な資格

①ウェブデザイン技能検定

デザインやコーディングを含めWebについての幅広い基礎知識を学ぶことができます。Webクリエイター能力認定試験、Webデザイナー検定など、似たような名前の検定試験もありますが、ウェブデザイン技能検定はWebデザイン業界唯一の国家資格であると言われ、就職・転職活動においても役立つ場面が多いでしょう。1級~3級があり、3級は未経験の人でも目指しやすいものとなっています。

②Photoshop®クリエイター能力認定試験/Illustrator®クリエイター能力認定試験

Photoshop/Illustratorの機能を使用するスキルを証明することができます。Photoshop/Illustratorそれぞれで、スタンダードとエキスパートの2つのランクがあります。スタンダードでは指示通りの作業ができること、エキスパートではニーズに合わせて機能を選びコンテンツを制作することが求められます。

③HTML5プロフェッショナル認定資格

HTMLやCSS、JavaScriptなど、コーディングにおいて求められるマークアップ言語の知識を証明することができます。レベル1とレベル2があります。PhotoshopやIllustratorといった、Web制作現場でよく使われるデザインソフトのスキルは、最低限求められることが多いですが、制作したデザインをWebページに仕上げるためには、コーディングに関する知識があるとさらに良いでしょう。

営業系の職種に就きたい人が取るべき資格とは?

営業を行う上で求められる能力は多いですが、目に見える形で示すのが難しい能力も多いので、資格を上手く活用できる余地は大きいでしょう。

営業で活用可能な資格

①営業力強化検定

営業業務・マーケティング・顧客対応・営業提案などに関する知識を学ぶことができます。公式HPから気軽に受験できるため、自分の営業力を測定し改善に繋げることができます。

②営業士検定

マーケティング・セールスのスペシャリストとしての知識を学ぶことができます。初級・上級・マスターの3段階あります。営業担当者に求められる、営業業務に関する全般的な基礎知識を身につけるなら、初級の取得を目指しましょう。

③セールスレップ

営業のプロとして求められる能力を証明することができる資格です。1級~3級があります。営業士検定と違い、企業から独立して営業活動を行う人が多く取得を目指しています。

④販売士検定

流通・小売業界向けの資格ですが、販売促進・マーチャダイジング・マーケティングといった営業職にも活用できる知識を学ぶことができます。1級~3級があります。

資格を取得するには?

さて、どんな資格を取得するのが良いか、イメージが湧いたところで、資格取得方法を確認しましょう。独学も良いですが、難易度の高い資格の取得を目指す場合や、短期間で取得したいという場合は、自分に合ったサポートを受けられる学校に通うこともおすすめです。資格取得対策を行っている民間のスクールの他、国や都道府県などが連携して提供している障害者向けの職業訓練施設もあります。

資格取得スクール

自分のペースで進められる通信教育から、専門の講師による指導を受けられる通学・通信講座、一定の時間を確保して着実に学べる専門学校、と、幅広い形態があります。講師や授業の質、サポート体制によっても、今後の学習は大きく左右されますので、可能であれば無料体験授業に出席するなどして確かめるのが良いでしょう。

障害者職業能力開発校

都道府県が運営する、障害者の職業訓練のための施設です。コンピュータサービス技能評価試験(CS試験)や全経簿記能力検定、ITパスポートなどの資格取得を目指しながら、授業料無料で学ぶことができます。

職業リハビリテーションセンター

障害者の雇用促進のために国が設置した施設で、埼玉県所沢市と岡山県吉備中央町にあります。CADの使用や機械設計・組立、Webサイト構築やシステム開発といった資格取得に繋がる訓練が、無料で受けられます。

地域障害者職業センター

職業準備支援の中で、コンセント組立・分解や商品管理、事務補助系作業を学ぶことができます。ただちに資格取得を目指すというよりは、職業に就くための基本的なスキルを、自分の障害の状況に合わせて学びたいという人におすすめです。このセンターでは他に職業相談やリワーク支援などの支援も行っています。いずれの支援も無料で受けられます。

まとめ

さて、様々な種類の資格と取得方法を紹介してきましたが、自分に合ったものは見つかりましたか?費用や時間はかかるかもしれませんが、自分の就職活動やキャリアアップに繋がりそうであれば、この機会に資格取得を検討してみるのも良いかもしれません。