発達障害の方がいきいきと働ける仕事・特性に応じた職場環境とは?

2020年7月13日

発達障害の方には、仕事の得意・不得意が大きく出やすいという特性があります。充実した職業生活を送るためにも、不得意が目立たず、得意を活かすことのできる仕事や職場環境を選びたいですね。今回は、発達障害の方がいきいきと働くためにできる工夫をまとめました。

発達障害の特性

発達障害の方の特性は、個人によって様々ですが、大きくASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD/SLD(学習障害/限局性学習症)に分類できます。

ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)の特性

「対人関係の障害」「コミュニケーションの障害」「限定した常同的な興味、行動および活動」が大きな特性としてあり、具体的には、社会生活の中では次のような困難を伴います。

・相手との適切な距離が分からない

・話す時に目を合わせられない

・その場に合わない表情をする

・言葉の裏の意味や場の空気を読み取るのが苦手

・客観的な立場(相手の立場)で物事を考えられない

・決まったやり方にこだわり、臨機応変の対応ができない

・興味・関心が極端に偏っている

ADHD(注意欠陥多動性障害)の特性

「不注意」「多動性・衝動性」が大きな特性となっています。どちらか一方が優位に現れる場合や、両方が混在して現れる場合があります。それぞれ具体的には次のような症状が見られます。

不注意

・注意を保てず、仕事などに集中できない

・抜け漏れや忘れがあり、約束や仕事の期限を守れないことがある

・整理整頓が苦手

・ものをなくすことが多い

多動性・衝動性

・落ち着きがなく、そわそわとした動きが目立つ

・止められずにしゃべり続けてしまう

・待つことが苦手

・考えるより先に行動してしまう

LD/SLD(学習障害/限局性学習症)の特性

知的発達全体の遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」のうち特定のものについて、学習に遅れが見られます。具体的には以下の困難が生じます。

「読み」「書き」の困難

・文章の読み書きが遅かったり、不正確だったりする

・文字を一つずつ区切った逐次読みをする

・読んでいる場所が分からなくなり、文字や行を読み飛ばすことがある

・似た形の文字を読み分け・書き分けが苦手

・読んでも意味を理解できていないことがある

「計算」の困難

・数の大小や関係性が分からないことがある

・数学的な概念が理解できず、時計を読めない、

・計算が苦手で、九九の暗記や暗算が難しい

・数を使った推論が苦手

発達障害の方の特性に適した職場や働き方

それでは、障害による苦手や困難が目立たず、得意な部分を活かせるような職場や働き方を考えてみましょう。

ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)の場合

ASDの方は、マニュアルやルールの定まったルーティンワークに向いていると言われています。障害特性に合った仕事としては、データ入力などの定型業務の多い事務や経理業務、工場での組み立てや梱包、食器洗い、清掃などの作業といった仕事が考えられます。また、自分の興味のある領域で、高い集中力をもって専門性を究め、研究者や芸術家として成功を収める方もいます。

一方で、場の空気や相手の気持ちを汲み取ることや、臨機応変に対応することが求められる、接客業や営業職は、苦手と感じる方が多いです。

ADHD(注意欠陥多動性障害)の場合

ADHDの方は、様々なものに興味を持ち、固定観念に囚われずアイデアを出せること、考えるよりもまず実行に移す行動力があることから、広告やゲームのプランニングやデザイナー・アニメーター、販売・営業といった仕事で強みを発揮できる可能性があります。

一方で、同じ作業の繰り返しや一度に複数のことに注意を向ける必要のある事務職などの仕事、正確さの求められる製品検査や校正の仕事は、苦手と感じる方が多いです。

LD/SLD(学習障害/限局性学習症)の場合

LD/SLDの場合は得意・不得意に個人差が大きいため、職業の向き・不向きを一概に言うことが難しいです。ただし、異なった考え方や表現ができること、細かい情報よりも全体像を読み取ることが得意であることから、広告関係やデザイナー、カメラマンなど、クリエイティブな仕事、物事を視覚的に認識できる仕事が向いているという方がいるようです。

読字・書字や計算の能力は、音声レコーダーや電卓の機能のあるスマホアプリや電子機器などで、補うことができる部分もあります。苦手をカバーできる自分なりの方法を見つけた上で、自分の関心や能力を総合的に見てどの職業が適しているか考えるのが良いでしょう。

より良い働き方を実現するには明確な配慮事項が鍵

障害の特性を意識して職場や働き方を選んだとしても、発達障害の方の苦手が出てしまう場面は多々あります。そのため、自分の障害の特性について周囲の理解を得、適切な配慮を受けることが大切です。

発達障害の方のよくある困りごと

発達障害を抱えている場合、どんなにやる気があって真面目に仕事に取り組んでいても、コミュニケーションや業務遂行における苦手が目立ってしまうと、「仕事ができない人だ」という一方的な評価を下されることがあります。このような状況で、「自分は仕事ができない、怠けている」といった自己嫌悪に陥り、うつ病や不安障害などの二次障害に苦しむ方もいます。

困りごとに対する対処法と、企業に求める配慮

発達障害は脳機能の障害ですので、苦手を全て個人の努力でカバーするのは難しく、ある程度は周囲の助けを求めるのが妥当であると言えます。適切な配慮をしてもらえるよう、周囲の人に自分の障害の特性を伝え、どのような配慮が必要であるのか説明しましょう。本人にとっても周囲の人にとっても無理のない配慮が行われることで、お互いに気持ち良く働くことができるようになるでしょう。

発達障害だと気づかずに就業してきた方に知ってほしい障害者雇用という選択肢

さて、障害の特性と必要な配慮事項を説明することの大切さを確認してきましたが、自分の障害について職場の方に伝えるのはハードルが高い、と感じる方も多いと思います。そのような方に是非検討していただきたいのが、障害者枠で働くということです。

障害者手帳があれば障害者枠で働くことが可能

障害の有無に関わらず誰もが職業を通じて活躍できる社会の実現のため、企業には、一定の割合で障害者を雇用することが義務付けられています。障害特性の理解と支援の手配をスムーズに行うために、障害者専用の雇用枠を設けている企業も少なくありません。障害者手帳を取得していれば、障害者枠の求人に応募し、働くことができます。

障害者枠で勤務する場合、企業から受けられる合理的配慮

障害者雇用では、障害者の方とそうでない方が、平等に働くことができるよう、企業の負担になりすぎない範囲で支援を行う「合理的配慮」が、企業に義務付けられています。

具体的には以下のような配慮が考えられます。

・急な予定の変更があると混乱してしまうため、スケジュールは早めに伝えてもらう

・「あれ」「それ」「だいたい」といった曖昧な指示を与えられると混乱してしまうため、事物の名称や数字を使って指示を具体化してもらう

・複数の指示を同時に与えられると混乱してしまうため、作業が一つ終わってから次の指示を出してもらう

・視覚や聴覚の刺激で集中力を切らしてしまうことがあるため、パーテーションやノイズキャンセリングイヤホンを使わせてもらう

・マニュアルを一人で読むのが難しいため、口頭で指示を出してもらう

・その場ですぐにメモを取るのが難しいため、紙のメモやメールで指示を出してもらう

データから読み取れる障害者枠の定着率の高さ

それでは、障害者枠だと実際に働きやすいのでしょうか?

障害者の職場定着率を、求人の枠別に見ると、障害者枠での求人の場合の定着率は、一般枠よりも大幅に高く、就労継続支援A型求人と大きく変わらない高さになっています。また、一般枠であっても、障害を開示することで定着率が高くなることからも、障害について伝えやすい環境が、職場定着にとっていかに重要であるかが分かります。

2017年4月 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」参照

発達障害の方の雇用環境

障害者枠での雇用者数を障害種別に見ると、近年、精神・発達障害者(精神障害者保健福祉手帳を所持する者)の数は急速に伸びています。

2018年に定められた特例措置の影響もあり、特に精神・発達障害者の雇用が進んでいると考えられます。

厚生労働省「令和元年 障害者雇用状況の集計結果」参照

発達障害の方向けの障害者枠求人の状況

それでは、障害者枠の求人にはどのようなものがあるのでしょうか?転職支援サービス、ココピアキャリアでご紹介可能な、発達障害の方向けの求人の状況に基づきご紹介します。

幅広い職種・ポジション

障害者枠での求人では、事務、営業・販売、IT・エンジニア、人事、経理などと幅広くなっています。「応募者の意欲・能力に応じて部門・職種を決定する」というオープンポジションで募集している企業もあり、はじめから「障害者枠だから希望する職種がない」と諦める必要はないでしょう。

経歴に準じた給与

「障害者枠だから給与が低い」ということも、必ずしも言えることではありません。企業の採用担当者は障害の特性だけでなく、その人の能力に応じて適切な給与が決められます。特に転職先で活かせる経歴や実績を持っている場合は、一般枠からの転職の場合でも、前職と同程度の年収額で検討してもらえることが多くなっています。

長期的な勤務を実現するための勤務時間

勤務時間についても、時差出勤や時短勤務が可能な求人が増えています。元々はフルタイム勤務の求人しか公開していなかった企業が、応募者の方に興味を持ち、体調を考慮し時短勤務から徐々に慣れていくという条件で採用を決めた、という例もあります。このように障害の特性により相談可能なケースも多いので、希望する企業や職種があれば、熱意を持ってアタックしてみましょう。

発達障害の人の転職は、転職エージェントへの登録がおすすめ

これまで確認してきたように、発達障害の人が職業生活において活躍できる機会は増えてきています。こうした機会を最大限に活かすには、転職エージェントに登録するのがおすすめです。

転職エージェントに登録すると、障害に理解ある専門のコンサルタントによる障害特性の聴取と、それに基づく最適な求人の紹介を受けられます。企業の採用ページや転職サイトに公開されていない、待遇の良い求人や、幅広い職種での求人の紹介を受けられることもあります。

自分に合った仕事・職場環境でいきいきと働けるよう、気軽に相談してみると良いでしょう。