身体障害者の仕事の実態 データから見る身体障害者の雇用状況

2022年12月29日

企業に求められる障害者の法定雇用率の増加に伴い、企業で活躍する身体障害者の方は増えています。身体障害を持つ方の障害内容や程度、必要な配慮事項、希望する就業内容は人によって様々です。身体障害があり転職をしたいと思っているけれど、身体障害者の仕事の実態が分からない方や、1人で転職活動をするのが不安だという方も多いでしょう。そこで、この記事ではデータから見る身体障害者の仕事の実態を解説します。

数から見る身体障害者の仕事の実態

まず、数字から見る身体障害者の仕事の実態を説明します。

身体障害者と障害者雇用の成り立ち

第二次世界大戦後の日本では、戦傷を負った軍人の雇用のため、法制度が整備されました。欧州において主流だった法定雇用率方式を採用して、1960年に身体障害者雇用促進法が制定されました。この時の法定雇用率は、公的機関は義務、民間企業は努力目標でした。1976年には全ての企業に対して法定雇用率が義務化されました。1976年の法定雇用率は1.5%でした。1987年に「障害者の雇用の促進等に関する法律」に変更され、法律の対象となる範囲が身体障害者、知的障害者、精神障害者全ての障害者に拡大されました。1998年に知的障害者の雇用が義務化され、2018年は精神障害者についての雇用が義務化されました。2018年には法定雇用率は2.2%、2021年3月1日からは2.3%に引き上げられています。

身体障害者の総数

厚生労働省職業安定局の平成29年度の調査によると、身体障害者の総数は392万2千人であり、知的障害者の総数は74万1千人、精神障害者の総数は392万4千人です。知的障害者の数は身体障害者と比べると少なく、精神障害者は身体障害者と近い人数になっています。

身体障害者の雇用者数

厚生労働省職業安定局の平成29年度の調査では、身体障害者の雇用者数は32万8千人、知的障害者は10万5千人、精神障害者は4万2千人と、障害者の中では身体障害者が多い割合を占めています。

身体障害者の新規就業件数

平成28年度のハローワークにおける障害者の就職状況によると、身体障害者の新規就業件数は26,940件、知的障害者の新規就業件数は20,342件、精神障害者の新規就業件数は41,367件となっており、精神障害者の新規就業件数が多い結果となっています。

質から見る身体障害者の仕事の実態

ここでは質から見る身体障害者の仕事の実態について厚生労働省の平成25年度障害者雇用実態調査と平成29年のJEED(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構)の調査を基に説明します。

身体障害者の勤続年数

身体障害者の平均勤続年数は10年、知的障害者の平均勤続年数は7年9ヶ月、精神障害者の平均勤続年数は4年3ヶ月と身体障害者の平均勤続年数は他の障害者と比べると長く、精神障害者の平均勤続年数は短い傾向にあります。

身体障害者の仕事に就いている年齢層

身体障害者の仕事に就いている年齢層は55歳以上が42.4%と多くなっており、高齢化の傾向が見られます。一般的には企業の求人では20~40代を求める傾向にあります。

身体障害者の仕事への定着率

身体障害者の仕事への1年後の定着率は障害者求人が70.4%に対して、障害を開示する一般求人が52.8%、障害を開示しない一般求人が41.5%と、障害者求人の定着率の方が一般枠入社の定着率よりも20~30%程度高い傾向にあります。このデータから分かることは、一般求人で就職すると障害の無い人と同じ勤務条件で働くことになり、仕事に定着しづらいということです。障害者求人の場合は障害があることを前提に、担当業務や労働環境について業務の継続が可能なよう企業側も配慮や努力を行っている傾向にあります。

身体障害者の仕事の離職理由

身体障害者の仕事の離職理由の多くは、「職場の雰囲気・人間関係」「賃金、労働条件に不満」「仕事内容が合わない」「会社の配慮が不十分」などでした。労働条件や企業の「働く場」に関する課題が多く見られました。

身体障害者が仕事に求める改善点

身体障害者が仕事に求める改善点は「調子の悪いときに休みを取りやすくする」、「コミュニケーションを容易にする手段や支援者の配置」などの障害への対応をおさえて、「能力に応じた評価、昇進・昇格」という項目がトップの割合を占めます。雇用する企業に対して、賃金や能力への評価に不満を感じている身体障害者が多いことが分かります。

障害者の人材活用の理想は、障害者本人が「活躍している」という感覚を自覚し、企業もそれを評価する状態です。現状では、働くことに不満や不安を持つ障害者と人材活用が進まない雇用側の間で溝が生まれることもあるようです。

身体障害者が仕事で受けている配慮

他の障害と比べ、身体障害者は、特別な配慮を受けない傾向にあります。もちろん、個別の障害特性に応じて、「バリアフリー」、「筆談器具の導入」などの業務に必要な体制は準備されているでしょう。一方で、業務内容、業務負担、コミュニケーションの取り方など、その他の観点で言うと、健常者と同等の扱いを受けやすいのが、身体障害の雇用の特徴といえます。

身体障害者が定着支援を受けることで変わる仕事への定着率

就労定着支援とは指定障害福祉サービスの1つで、障害者総合支援法に定められています。障害者との相談を通じて、生活面の課題を把握し、関係機関や企業と連絡を取りながら、障害者の課題解決に必要な支援を実施します。定着支援がない場合の身体障害者の1年の職場定着率が68.9%なのに対し、定着支援がある場合は77.2%と8.3%アップしています。

身体障害の方が障害者雇用専門の転職エージェントへの登録すべき理由

身体障害の方で転職を考えるなら、障害者雇用専門の転職エージェントへの登録がおすすめです。ここでは転職エージェントに登録するメリットを2つ紹介します。

能力に応じた評価や昇給がある企業の紹介が受けられる

転職エージェントは障害者1人ひとりにあった求人を紹介してくれるので、書類選考の通過率が高くなります。非公開の求人も多く、能力に応じた評価や昇給がある企業の紹介が受けられます。障害を受け入れる準備が企業にあるのか転職エージェントが把握しているため、企業と障害者とのミスマッチを防ぐことができます。また、転職エージェントに登録すると、面談があり、将来のキャリアの形成や選考の対策をしてくれます。履歴書や職務経歴書など書類の対策から面接対策まで行ってくれるので、内定をもらいやすくなります。面接で伝えきれなかった長所や熱意を後で伝えてくれることもあり、個人で応募するより内定率が高くなります。

定着支援を受けて長く安定的に働くことができる

障害者の就職の定着には、仕事内容や評価などの条件面の他にも、人間関係や職場の雰囲気など「職場の環境」も重要になってきます。残念ながら、職場環境構築に配慮がなされないケースもあります。転職エージェントは、求職者と入社後にも面談を行い、必要に応じて企業にも相談を行います。企業、障害者双方の入社後の不安を解消し、長期就労につながるように生活面、体調面、就業面でサポートを行ってくれるので、入社後就業の定着に不安がある障害者でも、長く安定的に働くことができます。

まとめ

この記事では数や質から見た身体障害者の仕事の実態について解説してきました。身体障害者の転職には転職支援と定着支援が受けられる障害者雇用専門の転職エージェントへの登録がおすすめです。転職エージェントに登録して、自分に合った企業への転職を目指しましょう。