障害者雇用は転職回数で不利になる?正しい退職理由の伝え方を解説

2022年12月8日

障害者にとって、自分に合った仕事や職場を見つけることは難しいものです。中にはなかなか障害に合った職場が見つからず、転職を繰り返している方もいるかもしれません。

障害者が転職するときでも、転職回数や理由で不利になることはあるのでしょうか。今回は、障害者に多い転職理由と転職理由の伝え方について紹介していきます。

障害者は転職が多い傾向にある

まずは、障害者の転職事情についてみていきましょう。大きな傾向として、障害者は健常者と比べると職場定着率が悪く、転職や退職が多い傾向にあります。

厚生労働省の「雇用動向調査」では、労働者全体における2017年の平均離職率は14.9%でした。一方で独立行政法人 高齢・障害・求人者雇用支援機構の調査では、障害者求人における1年後の離職率は29.6%にも上っていることがわかっています。さらに、障害非公開の一般求人で採用された場合の1年後の離職率は、69.2%と非常に高水準になっていました。

とくに障害をクローズにしている方の離職率が高くなる傾向にあり、障害への理解のない職場における定着が難しいことが顕著に現れています。

障害者の転職に多い理由

それでは、障害者はどんな理由で転職や退職を考えるのでしょうか。障害者の退職理由として多いのは、以下の4つです。

  • 職場の雰囲気や人間関係
  • 賃金や労働条件
  • 仕事内容が合わない
  • 体力や意欲が続かない

障害をクローズで就職をした場合、障害の症状を周囲に理解してもらえず、人間関係や仕事内容を苦痛に感じてしまうことが増えてしまいます。また、オープンで就職したとしても、自分に合った仕事内容でないと体力や意欲が低下してしまうこともあります。障害者向けの求人は業務内容の難易度が低く設定されているものも多く、そういった業務面での配慮がかえって、やりがいの低下につながったり、賃金に不満を抱いたりしてしまうケースもあります。

障害者が求職をするときはあらかじめ条件や業務内容をしっかりと理解し、自分の障害や適性にあったものを選ばないと早期退職につながりやすいのです。

障害者雇用では転職回数がネックになる理由

適職を見つけることが難しい障害者の転職。転職回数が増えてしまうのは仕方のないことですが、たとえ障害者雇用で求職をする場合であっても、一般枠と同様に転職回数が多いと選考のときにネックになりやすいので注意が必要です。

とくに、以下の条件に当てはまる方は注意が必要です。

  • 短期間で4回以上転職している
  • 転職理由に一貫性がない
  • 特定の理由で転職を繰り返している

ここでは、転職回数が障害者雇用でネックになる理由についてみて詳しくいきましょう。

①ストレス耐性がなく体調を崩しやすいと思われてしまう

障害者があまりにも短期間で頻繁に転職をしていると、「ストレスで体調を崩しやすく、また辞めてしまうのでは?」と思われてしまうリスクがあります。たとえ今は健康であってもそのことを証明することは難しく、企業側も面接や書類では正確に把握できません。体調が原因で転職を繰り返している場合は、体調を悪化させないためにとっている対策などをしっかりと伝えることがポイントです。

②一箇所に定着できない人だと思われる

あまりにも転職回数が多いと、たとえ前向きな理由でも転職が良く思われないケースがあります。高待遇な企業があればすぐに転職をして、一箇所に定着できない性格だと思われてしまう可能性があるためです。待遇などが理由で転職をする場合でも、仕事内容や企業理念など、条件以外でその企業に惹かれた理由を説明できるようにしておきましょう。

③対人関係に問題があると思われる

退職理由でもっとも多いのが、対人関係によるものです。転職が多い人は「対人関係が苦手で、周囲に溶け込めないのではないか」という懸念を抱かれてしまうことがあるため注意しましょう。とくに障害者雇用の実績が少ない企業は障害者への配慮を社員に十分に教育できていないことが多く、採用の際に敏感になりやすいポイントです。

過去の転職についての説明方法

過去の転職回数について、懸念点を抱かれないようにするために、転職理由をどのように説明すればいいのでしょうか。ここでは、理由別に転職の原因を説明する具体的な方法とポイントについてみていきましょう。

①体調不良で転職したときの説明方法

障害の発症や悪化が原因の場合、「どんな業務を負担に感じて、同じことを繰り返さないようにどんな対策をとっているのか」について説明することが大切です。マイナス表現はなるべく避け、前向きな転職理由にすることが説明する際のコツです。

【説明方法の一例】

仕事のストレスがきっかけで適応障害だと診断さました。障害に理解のある職場に転職した方が長期的なキャリア形成が見込めると思い、今回転職を決意いたしました。前職では障害の症状で苦手とする電話対応がメインの仕事でしたが、事務作業がメインの貴社の仕事であれば無理なく働けると考えています。

②対人関係で転職したときの説明方法

人間関係が原因で転職する場合、「パワハラ」などの言葉は使わないようにしましょう。会社を批判していると捉えられてしまい、責任転嫁をしている印象を抱かれてしまいます。ここでは、転職でしか問題が解決できないと考えた理由について説明することがコツです。

【説明方法の一例】

直属の上司から毎日の残業を強制され、障害の症状が悪化してしまいました。何度も長時間労働の改善案を提示して上司に直訴しましたが、職場全体で上司による強制残業が横行しており改善が見込めませんでした。このままでは業務面にも健康面にも影響が出てしまうと思い、より長期的なキャリア形成が見込める環境を求めて転職活動をしています。

③労働環境で転職したときの説明方法

長時間労働や入社前後で労働条件のミスマッチが合った場合は、客観的事実を提示しながら説明をすることがポイントです。ただし、場合によっては入社前のリサーチ不足だと判断されてしまう可能性があるため、自分にも非がある場合はそれを認めることが大切です。

【説明方法の一例】

以前の会社では休日出勤が多く、月に3日ほど休めない状況が続いていました。入社前後で労働条件が異なっており、障害の症状も悪化していたので退職いたしました。入社前の確認不足であった反省を踏まえて、今は障害に配慮があり長期的なキャリアを形成できる企業に絞って転職活動をしています。

④希望の条件の企業・やりたい仕事に就くために転職したときの説明方法

希望の条件の企業ややりたい仕事に就くために転職をする場合、明確なビジョンを持って転職をするということをアピールすることが大切です。目標が転職によって叶えられることを伝えるのが、転職理由を伝えるときのコツです。

【説明方法の一例】

障害が原因で販売職は諦めていましたが、この度貴社における販売職の障害者採用枠を拝見し、以前よりやりたいと思っていた販売職にチャレンジしたいと思い転職を希望しました。障害の〇〇という症状を〇〇で補い、いち早く戦力になれるように尽力したいと考えています。

障害者が転職で不利にならないための対処法

いくら障害者の方が自分に合った仕事を探すことが大変だと言っても、企業にとってはすぐに転職してしまう人材を採用することはリスクの高いことです。そのため、しっかりと転職理由を伝えられないと、選考が不利になってしまうことは避けられません。

それでは、障害者が転職で不利にならないためにはどうしたらいいのでしょうか。その対処法を2つ紹介していきます。

履歴書や職務経歴書に転職理由を記載する

正当な転職理由があっても、その理由を説明する場がなければ相手に納得してもらうことは不可能です。「面接で説明しよう」と準備していても、そもそも転職回数が原因で書類選考に落ちてしまってはチャンスを逃してしまうことになります。

そんなことにならないためにも、転職理由や退職理由は履歴書や職務経歴書にしっかりと記載しておきましょう。きちんと理由があった上で前向きに転職していることが伝われば、転職活動で不利になることを防げます。

プロに添削をしてもらう

転職理由の説明に自信がない場合は、第三者に書類や面接での説明方法を添削してもらいましょう。ハローワークでも選考対策はしてもらえますし、障害者向け転職エージェントや障害者の支援を行っている機関でも無料でサポートが受けられます。

本人は「しっかりと転職理由を説明できた」と思っていても、プロの目線から見ると説明が不十分である場合も少なくはありません。周囲の力も借りながら、スムーズに就活を進めていきましょう。

障害者の転職理由は転職エージェントに相談を

障害者は離職率が高く、自分に合った企業を探すことが難しい傾向にあります。障害者雇用の場合でも、転職回数や理由によっては選考が不利になることもあるため、相手を納得させられる転職理由を説明できるようにしておきましょう。

障害に合った仕事を探したい、転職理由の説明に不安があるという場合は、無料で求職サポートを行っている障害者向けの転職エージェントにご相談ください。ココピアでは多くの非公開優良求人を扱っており、選考対策や入社後のフォローまでしっかりと行っております。