難病の方に向いている求人の特徴とは?就労状況や求人探しのポイントを解説

難病を抱える方はこまめな体調のケアや通院が欠かせないため、一般企業でフルタイム就業をすることに不安を抱えている方が多いのではないでしょうか。障害についての理解が進みつつある現代でも、難病についてはまだまだ知られていないのが現状です。

とくに企業における難病患者への理解の少なさは大きな課題となっていますが、実際の難病患者の就労状況はどのようなものになっているのでしょうか。今回は、難病患者の就労状況と求人を探すポイントについて解説していきます。

難病とは

「難病の患者に対する医療等に関する法律難病」第一条によると、難病は次のように定義されています。

「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるもの」

そのうち、患者数が日本において一定の人数(人口の0.1%程度)に達しておらず、客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が確立している難病のことを、「指定難病」と呼びます。2020年時点で、指定難病の数は333疾患となっています。

難病というと、病状が重く入院生活が続く病気を連想する方も多いかもしれません。しかし医療技術の進歩とともに、一般の方と同じ程度の日常生活を送れる患者も増えてきています。その一方で、病状が不安定で体調を崩しやすく、定期的な通院が欠かせない患者がいることも事実です。そのため、国の医療費助成制度の充実や周囲の人の理解を促進することで、難病患者の方をサポートしていくことが非常に重要なのです。

難病患者の就労状況

体調が安定しにくく通院の頻度が高くなりがちな難病患者の方の中には、健康な人と同じようにフルタイムで働くことが難しい方もいます。それでは、難病患者の方の就労状況はどのようなものになっているのでしょうか。

まずは、平成18年に行われた厚生労働省の「難病患者の雇用管理・就労支援に関する実態調査」をもとに、難病患者の就労状況について詳しくみていきましょう。

在職中の難病患者は5割以下

厚生労働省が行なった調査の回答者によると、調査時点で在職中であった難病患者は46%だということがわかっています。内訳としては男性の割合がやや多く57%で、女性の割合が39%でした。過去に就業経験がある方の割合は46%で、一度も就業経験がない方の割合は9%にも上っています。

このデータを見ると、難病患者であっても病状や環境によっては働くことが可能だということがわかるでしょう。ただし、難病患者の多くは継続した医療ケアの必要性や複合的な機能障害を持っているため、就職をしても継続就労することが難しい傾向にあります。

推定失業率は高いが、就職を希望している人が多い

厚生労働省の調査によると、難病患者の方の推定失業率は20~50%程度でした。疾患によって推定失業率は異なり、「パーキンソン病」や「脊髄小脳変性症」は推定失業率が高く、「クローン病」や「潰瘍性大腸炎」といった疾患は比較的推定失業率が低めだという結果が出ています。また、病気を理由に無職になった方と、病気に関わらず就職や就業継続している方がほぼ同程度に多かったことが判明しました。

一方で、就業していない難病患者の50%が、生きがいや経済的自立のために仕事に就きたいと考えていることがわかっています。このことから、「難病になったからといって必ず失業する」「就業意欲がなくなる」というわけではなく、適切な環境であれば難病患者でも就労することは十分に可能だということが言えるでしょう。

ただし、病状を理由に解雇された方の割合が11%にも上っていることも事実です。職種によっては難病を抱えながら働くことが難しいものもあるため、再就職する際は慎重に企業や職種を選ぶことが大切です。

難病患者に多い雇用形態と職種

それでは、難病患者の方はどのような雇用形態や職種で働いているのでしょうか。実は、難病の大部分の疾患において、患者の半数近くが正社員で働いていることがわかっています。とくに「クローン病」や「潰瘍性大腸炎」の患者は正社員率が高く、60%を上回っています。次に多い雇用形態はパート・アルバイトで25~45%程度、自営業を営む方も10~30%程いました。福祉雇用で働く難病患者は少ない傾向にあり、割合が多い疾患でも33%程度でした。

職種として多かったのは専門・技術職で、患者の半数以上が専門・技術職に就いている疾患もあります。次いで事務職、サービス、営業・販売、管理職の順で多くなっていきます。このことから、難病を抱えていてもスキルや経験を活かせる仕事に就けることが読み取れるでしょう。

週休2日・8時間労働のフルタイム勤務が多い傾向

難病というと通院や療養期間が長いイメージがある方も多いかもしれませんが、意外にも週休2日で8時間労働をしている患者が多いことがわかっています。疾患によって異なりますが、1日の労働時間は8時間、通勤時間は往復30分が中央値となっています。

また週休2日で働く患者は全体の58%で、週休1日半もしくはそれ以下で働く方も29%いました。逆に、週休3日以上で働く方は14%にとどまっています。

もちろん、疾患によって働ける時間や必要とする休養日数は異なります。しかし、十分に配慮があって自分のペースで働ける企業であれば、難病患者であってもフルタイムで働くことが可能だということがわかるでしょう。

難病患者が求人を探す上で生じる問題

難病患者も、病状や企業の配慮によっては希望する仕事に就くことが可能です。しかし、今企業で活躍している難病患者がいる一方で、難病によって自分に合った求人を探すことを困難に感じている方も少なくはありません。

難病患者が求人を探すときは、どのような問題が障害になりやすいのでしょうか。ここからは、難病患者の求人探しを困難にする問題について解説していきます。

①病状の変動がありフルタイムでの勤務が難しい

難病患者の方の多くは、病状が不安定な状態にあります。今体調が安定して求人に応募できても、仕事の内容や働き方、季節によって体調を崩しやすくなってしまうため、退職を余儀なくされてしまうことがあるでしょう。一般枠の求人では、「安定しているときに働いて、体調を崩したらしばらく休む」という働き方ができないので、フルタイムや正社員での勤務が難しくなってしまうのです。

こういった働き方や病状の変動に対する配慮を受けながら仕事をするには、障害者雇用枠での求人応募が必須となってきます。もしも病状の変動が激しい場合は、雇用枠の見直しもしてみましょう。

②体力の消耗が激しく、身体的負担が大きい仕事ができない

難病の方は、症状や服薬によって体力を消耗しやすくなっていることがあります。場合によっては人と話すだけで疲れてしまう方もいるため、可能な業務が大幅に制限されてしまうこともあるでしょう。そのため体力を使う仕事はもちろんのこと、人と話すことの多い販売職や営業、残業が多い仕事などは向いていない傾向にあります。

体力に自信がない場合は、事務職やプログラマーといった座ってできる仕事、休憩や仮眠などの配慮が得られる環境の職場を選ぶことも非常に大切です。任せられる業務量もしっかりと確認しつつ、負担にならない範囲で働ける求人を探すようにしましょう。

②感染症リスクがある職場での労働が難しい

難病などの基礎疾患を持っていたり、治療のために大量のステロイドを使用していたりする場合、免疫力が下がって感染症のリスクが高まってしまいます。そのため難病患者は、不特定多数の人が出入りする施設での仕事や、保育士や看護師のような感染症リスクの高い求人への応募ができないケースがあるのです。

ほかにも症状が悪化する要因がある場合は、その要因を避けて求人を探す必要があります。症状によっては応募できる求人の幅がかなり狭まってしまうため、希望に沿った条件の求人に出会いにくく、就職・転職活動の障害になってしまうのです。

難病患者に向いている求人・仕事

難病の方は求人探しにおける障害が多いですが、自分の病状にあった求人を選べば、自分のペースで仕事をすることは可能です。ここからは、難病患者の方に向いている仕事について紹介していきます。

①無理のない範囲で働ける仕事

どんな難病にも言えるのは、無理のない範囲で働ける求人を選ぶのが大切だということです。ある程度負荷のある仕事でも、休養でしっかりと体調が回復できるバランスの取れた仕事であれば、難病を抱えていても問題なく就くことができます。

負荷が少なく難病患者でも無理のない範囲で働ける求人としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 経理や営業事務などのデスクワーク
  • システムエンジニア
  • デザイナー
  • プログラマ
  • ライター

専門職に就くことが難しいという場合は、初心者からでもスタートできる営業事務やデータ入力といったデスクワークがおすすめです。

②通院や休憩の融通が利く仕事

通院や休憩の融通が利く求人も、難病患者に向いている仕事です。体調を崩したときに休憩させてもらえたり通院日に合わせて休みをもらえたりすれば、難病を抱えていても長期的に就労することも十分に可能でしょう。

融通が利く求人としては、一定の成果を出せば自由に業務を進められる仕事が挙げられます。データ入力や内職、先述したエンジニアやデザイナーといった仕事であれば、納期に間にさえ合えば自分で自由にスケジュールを調整可能なケースが多いです。

また、シフト申告制のパートやアルバイトであれば、通院日や体調に合わせて比較的休みを取ることが可能です。雇用形態にこだわらないのであれば、パートやアルバイトといった短時間就労からスタートしてみてもいいでしょう。

③自宅でできる仕事

近年はテレワークの普及が進んできており、さまざまな仕事が自宅でできるようになってきました。デザイナーやエンジニアなどの仕事はもちろん、人事などの事務職や営業職もリモート勤務ができるようになってきています。

テレワークができる仕事であれば、難病の方でも体調に合わせて自分のペースで仕事を進められるようになります。もちろん業務量を調節してもらう必要はありますが、通勤の必要がなくなるため、身体的負担はグッと抑えられるでしょう。

難病患者に向いていない求人

それでは、難病患者に向いていない求人にはどんなものがあるのでしょうか。たとえば、以下のような求人は難病患者に向いていない傾向にあります。

  • 体力を使う清掃や建設関係
  • 立ちっぱなしの仕事が多い接客業
  • 感染症リスクが高い医療・福祉関係
  • 時間に追われるドライバー
  • 人と話す時間が多いコールセンター など

上記の職業であっても疾患の種類や病状、職場の配慮によっては問題なく働けるケースがあります。

難病患者が求人を探すときのポイント

最後に、難病患者が求人を探すときのポイントについて解説していきます。ご自身の症状に合った求人を見つけるためにも、4つのポイントを意識しておきましょう。

①障害者雇用枠で求人を探す

難病の方で障害者手帳を持っている場合、障害者雇用枠の求人に応募することが可能です。障害者雇用枠で採用されれば病状に配慮してもらいながら仕事ができるようになるため、一般求人で応募するときよりも長期就労が叶いやすくなるでしょう。

実際に、平成29年の厚生労働省が行なった調査「障害者雇用の現状等」によると、障害者全体の1年後の職場定着率は障害者求人で70.4%、障害開示の一般求人で49.9%になっていることがわかっています。なお障害非公開の一般求人では、1年後の定着率は30.8%にとどまっています。このことから、障害や難病を抱えている方が長期的なキャリアを形成するためには、障害に配慮してもらいながら就労することが欠かせないのです。

「障害者雇用では希望する条件の仕事が見つかりにくい」とお考えの方もいるかもしれませんが、障害者雇用でも経験やスキルを生かした求人が見つかることもあります。ただし、こういった高待遇・好条件の求人をご自分で探すことは難しいので、プロの手を借りながら探すことをおすすめします。

②難病患者就職サポーターに相談する

難病患者就職サポーターは、難病に関する知識を持つハローワークの専門スタッフです。障害者求人に限らず、難病がある方が無理なく働ける一般枠の求人を紹介してもらうことも可能なので、幅広い求人を比較・検討したいときに役立ちます。

また、難病患者就職サポーターは難病相談支援センターと連携しており、今後の働き方や企業への病状の伝え方についても相談に乗ってくれます。必要であれば面接に同行して企業への説明や相談を代行してくれるため、「配慮について自分からお願いすることに抵抗がある」と感じている方でも安心です。

ほかにも、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターなど、障害者や難病者へのサポートを提供する公的機関は豊富に存在しています。まずは難病患者就職サポーターに相談し、最適な相談先を紹介してもらうといいでしょう。

③就労継続支援サービスを活用する

就労継続支援とは、障害や難病を持つ方に対するサポートが整った職場を提供している福祉サービスのことです。雇用契約を結んで働く「A型」と、雇用契約を結ばないで働く「B型」の2種類のサービスがあります。

  • 就労継続支援A型
    一定の支援があれば継続して働ける方が対象。喫茶店のホールスタッフや簡単なパソコン入力、軽作業などを行い、原則最低賃金以上の給料が払われます。
  • 就労継続支援B型
    体調や年齢などが原因で、雇用契約を結んで働くことが難しい方が対象。軽作業がメインで、最低賃金を下回る「工賃」が払われます。賃金は安い分、体調に合わせて自分のペースで働くことが可能です。

現在、難病患者で就労継続支援を利用している方は少ないです。しかし、「シャイ・ドレーガー症候群」や「スタージウェバー症候群」など、障害によっては30%以上の方が就労継続支援を含む福祉雇用で働いていることがわかっています。一般企業で働けるか不安、療養しながら少しだけ仕事をしたいという場合は、就労継続支援を活用してみてもいいかもしれません。

④障害者向け転職エージェントに相談する

よりスムーズに求人を探したいのであれば、ここまで紹介した方法に加えて、転職エージェントで求人を探すことをおすすめします。障害者向けの転職エージェントであれば、難病の方向けの非公開求人を無料で紹介してもらうことができるためです。

難病の方が求人を探すときは、ハローワークや難病患者就職サポーターなど複数の公的機関に相談することになります。しかしこれらの公的機関は、基本的にハローワークに登録された求人のみが紹介の対象となります。そのため、どこに相談しても1つのデータベース内のみから求人を探すことになるのです。

転職エージェントであれば、ハローワークに登録されていない非公開の優良求人に出会えるため、より選択肢が広がります。障害者向け転職エージェントは障害手帳だけではなく、療育手帳・愛の手帳・精神の手帳・障害者保険福祉手帳をお持ちの方、または申請中の方などが利用できます。条件に当てはまる方は、ぜひお気軽に相談してみてください。

難病の方は自分の症状に合った求人を探すことが大切

一口に難病と言っても、症状や可能な業務は人によってさまざまです。難病を抱えながら仕事をこなしている方も一定数いるので、諦めずに無理のない範囲で働ける求人を探していきましょう。

難病の症状に合った求人を自分の力だけで探すのは、非常に難しいことです。一人で悩むのではなく、公的支援機関や転職エージェントといったプロの力も借りながら、就職・転職活動を進めていくことをおすすめします。

障害者向け転職エージェントのココピアでは、難病の方一人ひとりに合った求人の紹介や選考サポートを実施しています。難病と向き合いながら働ける求人をお探しの方は、お気軽にご相談ください。