発達障害の人の適職とは?向いている職業と向いていない職業をご紹介!

2023年3月31日

発達障害は一目見ただけではわかりづらい障害です。発達障害には、注意力を保つことが苦手で衝動的に行動してしまうADHDや、人とコミュニケーションをとるのが苦手なASD、特定の能力を必要とする学習が困難になるLDなどの種類があります。近年は発達障害に対する理解が少しずつ広まり、発達障害がある人の活躍の場が広がってきました。

この記事では、発達障害について解説したうえで、発達障害を持つ人にとって適職といえる仕事と向いていない仕事をご紹介します。

 

発達障害とは

発達障害とは、生まれつき脳の発達が通常と異なり、働きに偏りがみられる状態のことを指します。成長するに従って自分自身の不得意とする部分に気付き、苦しむ人も少なくありません。
そのため、障害の特性を本人や家族、周囲の人がしっかりと理解し、日常生活の送り方や学校・職場での過ごし方をその人に合わせて工夫する必要があります。

発達障害は、ADHD(注意欠如・多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム)、LD(学習障害)の3つのタイプに分類されるのが一般的です。いずれのタイプも脳に生まれつき機能障害があることが共通しています。
人によって複数のタイプを抱えることもあり、一口に発達障害といっても、それぞれの症状には共通する部分もあれば異なる部分もあります。以下で詳しくみていきましょう。

ADHD(注意欠如・多動性障害)

ADHDは「注意欠如・多動性障害」のことで、発達障害のうちの1つに分類されます。
好きなこと以外に対しては集中力を保てず、関心や興味を示さない「多動性」や、年齢に見合わない「不注意さ」、頭に浮かんだことを即座に実行してしまう「衝動性」といった症状を特徴とする障害です。

場面ごとに自分の行動を適切にコントロールすることが苦手であるため、さまざまな症状からくるミスや不注意などが他の人と比べて目立ちやすく、職場や学校、家庭などにおける日常生活に支障をきたす可能性があります。

一方、多くのADHDの人は、好きな分野や得意な分野では集中力を維持できる傾向にあります。豊かな発想力や独自の視点を持っているともいわれており、衝動性を適切な方向で発揮することによって行動力として活かしていくことも可能です。

ADHDは大人になってから診断されることもあり、幼少期から対人関係に悩みを抱えてきたケースが多いようです。成長の過程で自分なりに対処法を見つけてきた場合でも、大人になり社会との接点が増加し、環境が変わることで不注意や衝動といったADHDの特徴が表面化することもあります。
人間関係の変化から、うつ病や不眠などを発症する方も少なくないようです。

ASD(自閉症スペクトラム)

ASDは「自閉症スペクトラム」のことで、「広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」などの障害をまとめて呼称したものです。
社会的なコミュニケーションがうまくとれず、他の人とうまくやりとりができない、反響言葉(オウム返し)、感覚過敏、感覚鈍麻、自分のやり方や企業のルールに強くこだわるといった症状が代表的です。

自閉症スペクトラムは、問診や心理検査によって診断されます。誤解されがちですが親の育て方は関係なく、脳の感情や認知などに関与する部分に先天的または後天的な異常があることが発症の原因だと考えられています。

最近の調査では子どものおよそ20~50人に1人が自閉スペクトラム症と診断されるといわれており、男性の比率が多いという報告もあります。

LD(学習障害)

LDとは「学習障害」のことを指し、知能の発達に遅れはみられないものの「聞く」「話す」「書く」「読む」「計算する」といった学習が困難になる発達障害です。
LDには複数のタイプがあり、読字障害(ディスレクシア)書字障害(ディスグラフィア)算数障害(ディスカリキュリア)の3つに分類されます。

学習障害は人によって症状の現れ方が異なり、特定のことができない状態を苦手分野だと判断される場合もあるなど、診断が難しい障害です。
生まれつきの脳機能障害が発症原因だと想定されていますが、どの部位が障害を起こしているか、なぜ障害を起こしているか、といった具体的な原因は未だ解明されていません。

 

発達障害の人にとっての適職とは

発達障害を持つ人は、前述のとおり発想力や物事を見る視点に強みを持ち、得意分野や好きなことには高い能力を発揮できる場面が多くあります。得意分野を上手に活かすことによって、社会での活躍が見込めるでしょう。

ここでは、発達障害の種類別に向いている職業をご紹介します。

ADHDの人に向いている職業

ADHDの特性は「落ち着きがない」「注意不足の多さ」そして「行動を即座に実行に移してしまう(衝動性)」の3つです。

ADHDの特性を活かすには、毎日異なる作業をする仕事が向いているといえるでしょう。
たとえば、日々異なるものと向き合うものづくりに関する仕事や、新たな調理法や食材に挑戦する調理師、さまざまな観光地の取材に向かう旅行ジャーナリストなどです。

一方で、仕事中に気が散って集中できなかったり、ミスが多くなったり、遅刻や欠勤をしてしまったり、ということが起こりがちです。
そのため、電話対応や経理作業といった一人で完結しなくてはいけない仕事は、集中力が続きにくく不向きと言えるでしょう。

また、ADHDの人はアイデアが豊富で好奇心が強い傾向にあることから、デザイナーや広告、ゲームなどのプランナーも向いているといえます。

 

ASDの人に向いている職業

ASDの人は「社会的な通念やその場の空気、表情から物事を読み取るのが苦手」「他者とのコミュニケーションを取ることが苦手」「こだわりが強い」という特性があります。

そのため多人数での行動やコミュニケーションが苦手であり、冗談が通じない、空気が読めないといった印象を与えることも少なくありません。他者と接することが多い仕事や、マニュアル通りにいかない仕事には向いていないといえます。

つまりASDの人が向いている職業は、「他人と頻繁にコミュニケーションを取らなくていい仕事」と言えます。またひとつの物事に対して突出して高い集中力を発揮するという特性もあることから、そうした得意分野を活かせる職場を探すとよいでしょう。
具体的には、正確さが求められ集中力が必要なプログラマーやデザイナー、研究職、エンジニア、校正・校閲、工場におけるライン作業など、同じことを正確に続けられる職業が向いています。

 

LDの人に向いている職業

LDの人は「学習に関する特定の能力が欠けていて、実行が難しい」という特性を持っています。
そのため、苦手分野によって困難なことが異なります。そのため、困難の生じている能力を要求されない仕事や、補助してもらえる仕事が向いていると言えるでしょう。

例えば読字障害であれば、視覚で物事を把握するデザイナーやカメラマンの他、コピー&ペーストがメインとなるデータ入力業務、視覚に訴える広告関係の仕事が向いています。
書字障害や算数障害であれば、職種で仕事を選ぶというより電卓やタブレットなどの補助ツールに頼っても問題ない職場を選ぶのがよいでしょう。

余談になりますが、俳優のトム・クルーズさんも読字障害を公表しています。
彼は台本を他の人に読んでもらい、それを聞くことでセリフを覚えているそうです。このようにLDであっても自分が苦手とする分野に対して工夫したり代替手段を用意したりすれば、対応できる仕事の幅も広がるでしょう。

 

発達障害の人にとって向いていない職業とは

発達障害の人はその特性上、仕事の向き不向きが明確に表れやすい傾向にあります。そのため、向いていない仕事に就いてしまった場合は、不安やストレスを抱えてうつ病や不眠などの二次障害を引き起こしやすいといわれています。

ここでご紹介する「向いていない職業」を念頭に、適切に仕事を選びましょう。

ADHDの人に向いていない職業

ADHDの人の場合、主に「注意力が欠如してしまうこと」が仕事をする上で障害となるでしょう。医師やパイロットなど、ケアレスミスが人命に直結する仕事はADHDの人には向いていないといえます。

またADHDの人は衝動性や不注意などの影響により、時に不用意な発言をしてしまうことがあります。それによって顧客や取引先を不愉快にさせてしまう恐れのある、接客や営業などの仕事も適職とはいえません。

さらにマルチタスクが苦手なことから、事務職や秘書など複数の作業をスケジュールに組み込み、並行して行う能力が必要な仕事も難しいといえます。

 

ASDの人に向いていない職業

ASDの人はコミュニケーションをとることが苦手であったり、興味が持てない分野の物事に関しては集中力を保ちづらかったりする特性があります。そのため高いコミュニケーション能力が求められる販売業・接客業・営業職や、マルチタスクの能力も必要となる電話対応やコールセンター、一般事務などの仕事は不向きでしょう。

 

LDの人に向いていない職業

LDの人は苦手とすることが人によって大きく違うため、この職業が不向き、と言い切ることが難しくなっています。
ただし、明確に苦手な分野を自分や周囲がカバーできない仕事に就いてしまうと、業務を適切に処理できずストレスを抱えやすくなるのは確かです。

ひとつの傾向として、LDの人は全体像を読み取る能力が優れている反面、詳細な情報を読み取る必要がある仕事は苦手な人が多いといわれています。
そのため具体的な数字・データとじっくり向き合わなければならない経理やマーケター、文章を細かく読み込んで指摘する必要のある校正・編集者は向いていない仕事といえます。

 

まとめ

この記事では、発達障害の種類別に、向いている職業と向いていない職業をご紹介しました。発達障害は必ずしも3種類のうちのどれか1つに当てはまるわけではなく、人によって複数のタイプを併せ持っていることもあります。また症状や特性の表れ方も人それぞれです。

障害名はあくまでもひとつの基準と考え、仕事を選ぶ際は特性をどうしたら仕事に活かせるか、苦手分野をどうカバーしていくかなどが重要なポイントになります。

「その人にとってどんな職業が合っているか」を本人と周囲が一緒に考えていく姿勢を忘れないようにしつつ、負担になりづらい仕事選びをしましょう。