障害者雇用促進法とは?事業主の義務や障害者への措置、最近の改正内容について解説

「障害者雇用促進法」という法律をご存知でしょうか。
精神および身体的な障害があって働くことが難しいという人でも、働けるような仕組みを構築するための法律です。
この法律が制定されたことにより、障害の関係なく、誰もが同様の職業生活を営めるようになりました。
この記事では、障害者雇用促進法について、事業主の義務や障害者への措置、そして2020年に行われた改正の内容についてご紹介します。

 

障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法とは、障害を持つ人の職業安定を目的とした法律です。
障害がある人に対する職業リハビリテーションの推進や、事業主が障害のある人の雇用を義務づけるなどの方法で差別を廃止し、合理的配慮の提供を義務づけることなどを定めています。

障害者雇用促進法の背景には、障害の有無に関係なく、すべての国民が個人として尊重されるという「ノーマライゼーションの理念」があります。
これは、生活面だけでなく就業面においても当てはまります。
障害者も労働者の一員となることで、本人の能力や意思を最大限発揮しながら働ける機会を提供・確保することが目的です。

対象となる障害者

障害者雇用促進法の条文によれば、対象となる障害者は「身体障害や知的障害、発達障害を含む精神障害、その他の心身の機能の障害により、長期にわたり職業生活に相当の制限を受けているもの、あるいは職業生活を営むのが著しく困難な者」と定義づけられています。

この条文における「その他の心身機能の障害者」について、明確な基準は提示されていません。
「長期にわたり職業生活に困難が生じている」ことを把握するためには、障害のレベルや特性、環境などを考慮する必要があります。
そのため、医師の診断書や、支援機関のスタッフの意見書などを参考に判断されているようです。

障害者雇用率制度

以前までは、自由競争のみに基づいた雇用によって、障害を持つ人が不利になってしまうケースがありました。
障害者雇用率制度が制定されてからは、障害を原因とした社会的格差を生まないように、障害の有無に関係なく、誰もが同様の雇用機会を確保する動きがみられています。
そこで、民間企業・国・地方公共団体などの事業主に対し、雇用する労働者に一定の割合以上障害者を含めることを義務付ける制度が「法定雇用率制度」です。
この「一定の割合」を「法定雇用率」と呼びます。
なお、障害者雇用促進法の対象者は幅広い一方で、「障害者雇用率制度」の算定対象となるのは、障害者手帳を持っている障害者に限定されます。

また、従業員が45.5人以上いる民間企業の法定雇用率は2.2%となっていましたが、これが2021年3月に2.3%まで引き上げられ、事業主の範囲も43.5人以上に広がりました。

障害者雇用納付金制度

障害者雇用納付金制度とは、前述した法定雇用率を達成できていない事業主から、「納付金」を徴収する制度のことを指します。
ここで大切なのが、納付金は「罰金」ではないということです。
納付金は、雇用義務を果たしている企業と、果たしていない企業の間に生まれる経済的負担を軽減させるためのものになります。
障害がある人の雇用にあたって、環境整備や特別な雇用管理が必要となるためです。

納付金の徴収対象となるのは常時雇用労働者数が101人以上の事業主であり、国や地方公共団体、教育委員会は対象外となります。
また、障害者雇用納付金以外にも、障害者雇用調整金や報奨金、また各種の助成金といった支給が発生する場合もあります。

障害者雇用促進法の罰則

分け隔てない雇用を実現するため、障害者雇用促進法には罰則も定められています。事業主が雇用状況の毎年の報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合には30万円以下の罰金が科されます。

また、先程触れたように、不足1人につき50,000円の納付金が徴収(従業員数や時期などで金額は変動)されるほか、障害者の雇用率が著しく低い事業主に対しては、公共職業安定所指導を行うケースもあります。
それでもなお改善が見込めない場合、労働局や厚生労働省からの指導が入り、企業名が公表される場合もあります。

 

事業主の義務とは

障害者雇用促進法は、2013 (平成25)年に改正され、2016(平成28)年4月から施行されました。
この改正により、事業主に対して差別禁止と合理的配慮の提供を義務とする項目が追加されました。ここでは、事業主が負う義務についてご紹介します。

障害者の雇用義務

以前の雇用義務の対象者には、精神障害者は含まれていませんでした。
現在では、発達障害をはじめとするさまざまな精神障害が認知されるようになったことで、2013年の法改正によって精神障害者も雇用義務の対象に含まれるようになりました。

差別禁止

2013年の法改正の際に盛り込まれた項目です。事業主に対し、労働者の募集や採用について障害のある人に障害のない人と同様の機会を与えなければいけないというものです。
事業主は、教育訓練や賃金の決定、福利厚生施設の利用などの待遇について、障害があることを理由にして不当な差別的扱いをすることを禁じています。

ただし、障害のある人に対して、障害のない人と異なる取り扱いを行ったとき、その扱いに合理的な理由が認められる場合は禁止の対象とはなりません。合理的な理由なく、「障害があること」を理由に採用を拒否する、必要な業務をさせない、などは障害者雇用促進法に抵触します。

合理的配慮

合理的配慮とは、一般の人と同様に、障害を持つ人が安定した生活を行えるように、個人の特性や環境に対応した調整のことを指します。現在は法改正によって、合理的配慮の提供は雇用者の義務とされています。

事業主は、労働者の募集・採用について、障害がある人に障害がない人と同様の機会を提供するために支障となる事情を改善するため、障害のある人からの申し出があった場合に配慮を提供しなければなりません。
また、採用後も、障害特性に応じた対応や配慮を定め、ほかの従業員にも周知する必要があります。

これらの対応や支援が事業側に対して過度な負担となる場合、合理的配慮の提供義務は発生しません。
しかし、過度の負担がないのに事業主が対応や支援を行わない場合は差別とみなされます。

労働者の雇用に関する状況の報告

事業者は、働くことが困難な障害者の雇用状況の確認や、雇用政策を有効なものにしていくことなどを目的に、毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況をハローワークに報告しなければなりません。
ハローワークはこの報告をもとに障害者雇用率制度の達成状況を確認します。

労働者数の計算と同様、20時間未満の短時間労働者は0.5人で計算し、重度身体障害者、および重度知的障害者は2人として計算するなどの方法で、実雇用率の計算基礎となる「障害者数」を算出します。
なお、雇用率が低い企業においては雇用状況を向上させるための計画の作成、提出、勧告などを受けます。

苦情処理や紛争解決の援助

事業主は、障害を持つ人からの相談に適切に対応するため、相談窓口を設けるなどして相談体制を整備し、障害がある人に対する合理的配慮の提供や差別禁止などに関する事項について、障害者からの苦情を自主的に解決することが努力義務として課されています。

もし、障害のある労働者と事業主との話し合いによって自主的な解決が難しくなった場合は、紛争解決を援助する仕組みが整備されています。
具体的には、都道府県の労働局長による助言や指導、勧告や、第三者による調停制度などがあります。これらは、都道府県労働局の職業安定部に相談することで享受が可能です。

 

障害者に対する措置

障害者雇用促進法に基づいて、障害者の就業等に関する何らかの措置を行う機関は、多数存在します。ここではその代表的な機関を4つご紹介します。

職業リハビリテーション

継続的・総合的リハビリテーション過程のうち、障害者が最適な職業の場を獲得し、なおかつそれを継続させるための職業サービスを、「職業リハビリテーション」とます。
具体的には、職業評価・職業指導・職業訓練・職業紹介などがあります。

職業評価

職業リハビリテーションの実施機関に入所する前に、身体的側面や学力などの基礎的な能力の側面、社会的側面、医学的側面、そして職業的側面についての整理を行うことです。
職業評価は、入所後の職業訓練を的確に行うために実施されます。職業評価を行うことで、その後に実施される職業訓練の受講の際に求められる基礎学力や適正、健康状態や就労に関連する要望などを確認し、職業リハビリテーション機関への入所が適正であるかどうかを判断します。

職業指導

職業評価で得られた情報をもとに本人の資質に適した訓練を行うことです。
はじめは自分の体調のコントロール方法を習得することから着手します。
プログラムが進行するにつれて仕事で求められるスキルを身につけるための「職業訓練」へと移行していきます。

職業紹介

職業評価と職業訓練を受けた人が、自分の持っている障害や病気の特性を理解し、就労の際に求められるスキルを習得した上で自分に適した職業を紹介してもらうことです。
面接のシミュレーションや必要書類の添削なども受けられます。

障害者職業センター

「障害者職業センター」とは、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションを提供している施設のことです。
全国の都道府県に最低1か所ずつ設置され、「独立行政法人高齢・障害者・求職者雇用支援機構」が運営しています。

障害を持つ人一人ひとりのニーズに応じた、さまざまな職業リハビリテーションの実施や、地域の関連機関への助言・連携・人材育成、事業主に対する雇用管理上の課題を分析し専門的な助言を行う、などのサービスを提供しています。
具体的な連携機関は、ハローワークや企業、医療・福祉などです。

なお、障害者職業センターで受けられる支援は専門性が高く、職員には厚生労働省が定めた研修・試験を修了した障害者職業カウンセラーがおり、加えてジョブコーチや相談支援専門員を配置しています。

障害者就業・生活支援センター

「障害者就業・生活支援センター」は、公益法人・福祉NPO法人事業所・社会福祉法人などによって、障害者雇用促進法に基づき運営されている施設です。
精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、身体障害者手帳のいずれかをもち、一般就労を希望するか、すでに一般就労している人が対象となっています。

就職についての相談や、仕事上の悩み事、金銭管理や健康問題にいたるまで、就業から生活面全般にわたる相談ができるようになっています。
生活支援センターのなかには、レクリエーション活動を実施したり、フリースペースを提供したりといった「場の提供」や、ランドリーなどの生活サービスの提供を行っているところもあります。

ハローワーク

「ハローワーク」は正式には「公共職業安定所(職安)」といい、障害のある人が仕事を探すだけでなく、働く上でのさまざまなサポートを行っています。

具体的には、障害者のために専門の職員・相談員を配置したうえで、ケースワーク方式により、求職の申込みから就職後のアフターケアまで一貫させたサービスを行っています。
障害者枠の求人のほか、一般求人に応募することもできます。
そのほかにも、個別でその人に適した求人を開拓したり、面接への同行をしたりといった、細かな配慮が特徴です。

さまざまな企業を訪問しながら、障害者雇用の啓蒙活動を実施したり、求職者に公共職業訓練を受けるように取りなしたりといった活動も行っています。
加えて、障害のある人を対象とした就職説明会の実施もしています。開催日時などの詳細は、開催地の各都道府県の労働局のホームページで案内されています。

また、ハローワークではインターネットサービスも利用可能です。
インターネットサービスでは、一般求人だけでなく障害のある方用の求人も検索できます。
求職登録をしていれば、ハローワークに行かなくても求人応募できるものもあります。

 

障害者雇用促進法の改正内容(2020年4月1日施行)

ここまで、障害者雇用促進法の内容などについて詳しくご紹介していきました。
2020年4月1日に、障害者雇用促進法は法案改正がされ、民間企業に対する「事業主に対する給付制度」と「優良事業主の認定制度創設」の2つの措置が追加されました。
ここでは、それらの措置の内容についてご紹介します。

短時間労働者に対して特例給付金を支給する

かつて、週所定労働時間が20時間を下回る雇用障害者は、雇用率制度の対象外であり、事業主側にも雇用調整金などの支援もありませんでした。
その一方で、障害の特性から週20時間を超えた勤務ができない人も存在していました。
そのため、法案改正によって障害を持つ週10~20時間未満の短時間労働者を雇用する事業主に対して、特例給付金が支給されるようになったのです。

これにより、短時間であれば働くことのできる障害者にも雇用機会をもたらすことが期待されています。
雇用率制度の対象となる常用労働者は「週20時間以上の労働者」であることは維持されるため、週所定労働時間が20時間未満の雇用障害者数は、法定雇用率には反映されません。

優良事業主を認定する

優良事業主としての「認定制度」は、中小企業を対象にしたもので、法案改正の際に新たに創設されました。
条件を満たした常用労働者300名以下の中小企業は、申請することで「優良な企業である」と認定されます。

中小企業において、障害者雇用率が満たされていない企業が多く見られていましたが、この認定制度の制定によって、中小企業において障害者雇用が促進されることが期待されています。
自社の商品・広告などに障害者雇用に関して優良な中小事業主である旨の認定マークが使用でき、ダイバーシティや働き方改革などの広報効果をもたらすでしょう。
また、障害の有無に関係なく多種多様な人材の採用・確保の円滑化につながるといったメリットがあります。

 

まとめ

障害がある人でも働きやすい社会をつくることは、働き方の多様化などの面においても重要なことです。
今後も状況に応じて障害者雇用促進法は改正されていき、障害のある人がより働きやすい社会へと変わっていくことが予想されます。
事業主にはより一層障害者を積極的に雇用することが求められていくでしょう。