ASDの人の適職とは?強みを活かせるプログラマーとの関係性を解説!

2022年12月8日

ASDの特徴には、コミュニケーション障害があることが挙げられます。
コミュニケーション障害は、仕事に大きな影響を与えるため、ASDと診断されてから仕事に悩む人も少なくありません。
一方で、ASDの人のもう一つの特徴である「強いこだわり」は、仕事によってはメリットになり得るものです。
今回は、そんなASDの概要とASDの特徴の強みを活かせる仕事の代表としてプログラマーを挙げ、両者の関係性を解説します。

 

ASDとは?

ASDとはAutism Spectrum Disorderの略称で、「自閉症スペクトラム障害」のことを指します。これは、社会性・コミュニケーション・想像力に難のある発達障害の一つです。

以前は、自閉症とアスペルガー症候群に分かれていたASDですが、アメリカ精神医学会の定めにより併せて自閉症スペクトラムと呼ばれるようになりました。といっても、言語発達に遅れがある人を「自閉症」、知能は定型の方と同様で言語発達の遅れがない方を「アスペルガー症候群」と分類するケースが多いようです。
以下ではASDの特性をご紹介します。

特性1:社会性に関する障害

まず、ASDの人は対人関係を築くことが苦手な場合が多いです。例えば、人と視線を合わせられない、名前を呼ばれても反応しない、上下関係を考慮しない、一方的に言葉を発してしまう、などの特徴があります。
他人と関係を持つ意識を「社会性」と言いますが、ASDの人は社会性に偏りが見られるようです。

特性2:コミュニケーションに関する障害

言葉のキャッチボールの不自然さや、相手の行動から汲み取れないことなど、コミュニケーションの障害がASDに表れます。
例えば、ほかの人の言葉をそのまま繰り返す、身振りから察せられない、質問の意図を汲み取れない、比喩や冗談を真に受ける、などの特徴があります。
このような特徴があるために、会話において意思疎通が成り立たず、ズレが生じる場合が多いです。

特性3:想像力に関する障害

ASDは、言葉のニュアンスを理解したり、想像力を働かせたりすることが苦手です。
そのため、「適当に」や「大体」などの幅のある表現を理解し、対応することが難しい場合があります。
ASDの人に頼み事をするときは、「1時間以内に」「15枚で」など具体的な数字を伝えることが必要になるでしょう。

特性4:行動に関する障害

ASDの人は独自の強いこだわりを持ったり、同じパターンの行動に固執したりすることが多いです。
例えば、自分ルールに固執する、順序や道順を変えられない、予定が狂うとパニックになる、などの特徴があります。
強いこだわりや、限られた興味からトラブルになることも多く、融通がきかないと思われてしまいがちです。
そのため、ASDの人は、パターン化した行動をとるほうが、平静な生活を送ることができると言われています。

 

ASDの方が苦手とする仕事の特徴

ASDの人は報連相が上手くできない、内容の理解や暗黙の了解が汲み取れない、人の話しを聞いていないと誤解される、などの対人コミュニケーションの障害があります。
特に、報連相が苦手なことは多くの仕事に影響が出るでしょう。

また、自身の体調を把握できず、不調のなか出社して倒れてしまうケースも少なくありません。
さらには、感覚過敏になりやすく、それゆえストレスを感じやすい傾向にあります。
感覚過敏になると体を前後にゆすり、気を静めようとする兆候がみられるようです。

 

ASDの強みと向いている仕事の特徴

ASDの特徴を強みに変えることで、職場での活躍を見込むことができます。

具体的な指示が仰げる

ASDの人は曖昧な言葉を使われると、混乱しがちな傾向があります。
そのため、「資料のコピーを10部印刷して10時15分までに2階のC会議室に持ってきてください」といった、具体的な指示を出してもらいましょう。

ASDの人は具体的な指示を仰ぐことを念頭に仕事をするべきであり、周囲もそれを理解する必要があります。

視覚的に理解できる

ASDの人は、口頭で指示される聴覚情報よりも、写真や絵、図などの視覚情報の方が、インプットされやすい傾向があり、これは専門用語で「視覚的構造化」と呼ばれています。
構造化とは秩序を容易に理解できるような仕組みなどのことです。
つまり、口頭で指示を出されるよりもスケジュール表や工程表など、チャートの形で提示してもらったほうが理解しやすいのです。

定型的に処理できる

ASDの人に共通する適職の特徴は、「ルールやマニュアルなどが決まっていて、定型的に処理できる仕事」です。これは、同じパターンの行動に固執するという特徴を応用したものです。

上記に適する職業として、IT系の業務やプログラミングなどがあります。これらの仕事は明確に決まった作業を繰り返すもので、ASDの人には向いていると言えるでしょう。

 

ASDとプログラミングの関係性

ASDの人にプログラミングが向いている理由の一つは、ASDの人が苦手としているコミュニケーションが発生しないことです。
自分のペースで思い通りにプログラムを書くことができ、パソコンとの一対一の作業なので集中して取り組むことができます。

また、IT業界には「シリコンバレー症候群」という言葉があります。
シリコンバレーで働く約半数以上の人が発達障害だと言われており、その中のASDの人をシリコンバレー症候群と呼びます。
シリコンバレーで働くエンジニアやプログラマーは癖が強く、コミュニケーションが苦手な人が多いです。
しかし、仕事におけるシリコンバレー症候群の人の評価はとても高く、現在のIT技術の背景には、彼らの活躍がある、と言っても過言ではありません。

 

プログラミングの仕事に就く4つのメリット

プログラミングの仕事を目指したり、就いたりすることのメリットを4つご紹介します。

将来性がある

IT業界の流行は急速なスピードで変化しています。
今後は、あらゆるモノがインターネットに接続されるIOT(Internet of Things)の時代になると言われています。
プログラミングをはじめ、テクノロジーの仕組みに関して理解を深めていくことは、今後のビジネスで役立っていくことでしょう。

また、パソコンを使える人は多いですが、プログラミングまで構築出来る人は少数という統計が出ています。プログラミングを学ぶことで、ほかの人よりも仕事の効率を上げることができるかもしれません。

例えば、Excelには「VBA」というプログラム作成システムがありますが、多くの人はこのシステムを使う技術を有していません。このシステムを扱える人は業務時間を短縮でき、短縮した時間を他のクリエイティブな仕事に回すことができます。

さらに、IT人材の需要に対する供給が間に合っていないという現状があります。
2030年には約80万人のIT人材が足りないとも言われており、プログラミングができるエンジニアの需要が無くなることはないでしょう。
実務未経験で求人を出す企業もあり、プログラミングができれば仕事には困らないとも称されています。

場所や時間に縛られずに働ける

プログラミングはパソコン一台のみで行えて、また場所に縛られることもありません。プログラムの動作確認も、自分のパソコンに仮想環境を用意することで開発を進めていけます。

さらに、近年では、フリーランスという働き方も主流になってきました。フリーランスであれば、仕事をする時間や場所を個人で決めることができます。
そのうえ、多くの企業が副業推進となった現在では、エンジニアの副業として在宅でプログラミングの仕事を受注することも可能でしょう。

ロジカルな思考が身につけられる

プログラミングはロジックから外れた指示をするとプログラムが作動しないため、論理的で正確な指示が必要です。
それゆえ、プログラミングを学ぶと論理的思考が身に付くでしょう。また、論理的な思考が身につくことで、汎用的なスキルをビジネスに活かすことができます。

やりがいや達成感も味わえる

プログラミングの世界は日進月歩であり、常に新しいものに取って代わられます。
ときには、最先端の家電製品や、自動車などさまざまな機能を開発することがあります。「新しいものを作る」ことは大きなやりがいにつながるでしょう。
また、アプリケーションやweb開発など、自分か携わったものが世間に認められ、たくさんの人に使用してもらえることは達成感にもつながります。

スマートフォンが普及したように、IoTの社会が到来した暁には、その最先端の知識や技術に触れられるエンジニアとしてものづくりに携われるでしょう。
今から数年後には想像できない端末が生まれているかもしれません。その技術を支えるものがプログラミングであることも、高い可能性を残すでしょう。

 

就労する際に気をつけておきたい4つの注意点

ASDの人が就労をする際に気をつけるべき4つの注意点をご紹介します。

雇用枠を吟味する

障害者の雇用には、一般枠と障害者枠の二つ種類があります。
ASDの人だけでなく、障害者が働くにはどちらもメリットとデメリットがありますので、以下に解説します。

一般枠とは、「通常の求人」のことです。
障害があるにも関わらず、自身の障害を開示せずに一般枠で応募する場合は「クローズ就労」と呼ばれます。
クローズ就労のメリットは、職種の選択肢が増える、求人数が狭まれない、給与が高い、などがあります。
対してデメリットは、仕事において配慮が受けづらい、障害を隠すことへの不安、などがあります。

次に、障害者枠とは、「障害のある人専用の求人」のことです。
自身の障害を開示して障害者枠に応募する場合は「オープン就労」と呼ばれます。
オープン就労のメリットは、仕事において配慮が受けられる、通院・服薬を優先できる、支援機関や就職先から支援が受けられる、などがあります。
対してデメリットは、職種の選択肢が少ない、給与が低い、などがあります。

アルバイトなど非正規雇用も視野にいれる

ASDなどの発達障害を抱えている場合、最初からフルタイムで仕事をするよりも、場合によってはアルバイトなど非正規雇用から始めた方が良いこともあります。
フルタイムの正社員はそれだけ責任もあり、ASDの人は心身が持たず定着できないことがあります。
徐々に仕事に慣れるという意味でも、初めはアルバイトなどから仕事をすると良いでしょう。
アルバイトから始めることで、その企業や職種に自分が合っているのかどうかも、正社員の場合より気軽に確認できます。
また、アルバイトから正社員登用がある会社もあり、希望する場合には職場に確認してみましょう。

医療機関を頼る

ASDの人が就職について一人で悩んで仕事に行き詰まったときは、医療機関を利用しましょう。
ASDの症状として自分の感情を絶対とすることがあり、第三者に頼るのを拒む傾向があります。
しかし、症状の専門家であればASDの人の力になれることは多く、周囲も積極的に働きかけると良いでしょう。

就労支援機関などに援助を求める

就労支援機関とは、障害特性をメリットとする仕事の進め方や、就職活動をアドバイスしてくれる機関です。
ASDの人が就労したい場合は、まずこの就労支援機関に援助を求めましょう。
就労移行支援事業所などでは、無料でサービスを提供したり、就職後のフォローまで行ってくれたりする機関もあります。
手厚い支援を用意してくれていますので、興味がある場合は事業所に無料相談すると良いでしょう。

 

まとめ

ASDと診断されることは本人にとってみれば苦痛なことです。
しかし、ASDはシリコンバレー症候群とも呼ばれるなど、特徴を強みにかえることもできる障害です。
一般の人には発揮できない集中力でプログラマーとして働くことはASDの人の得意とするところです。活躍する場所を見出したASDの人は、一般の人以上に輝きを増すことでしょう。