障害者の就労支援とは?受けられるサービス・利用方法を解説!

2023年1月11日

障害のある方のなかには、就職したいけど一般就労は難しいという方もいるのではないでしょうか。そのような方にご紹介したいのが就労支援です。

就労支援とは、障害や疾患などの理由で働くことが困難な人を対象とした、就職や働き続ける過程をサポートする制度のことです。

今回は、障害者を対象とした就労支援の概要、また就労移行支援と就労継続支援の2つについて詳しくご紹介します。

障害者の就労支援とは?

まず、障害者の就労支援とはどのような制度なのか、障害者就労の現状も含めてご紹介します。

「就労」支援とは

就労支援とは、国が進める雇用政策の一つで、障害者が就職に必要な知識、能力を身につけるトレーニングを提供している支援のことです。

一方で、就労支援と酷似した名称の就職支援というものもあります。

就労支援と就職支援の違いは目的にあり、就労支援は「就労を通じた自立」を目的とした継続的な支援であるのに対し、就職支援では職業紹介や職業訓練などによって「就職すること」を目的としています。

障害者就労の現状

厚生労働省の「障害者の就労支援対策の状況」では、就労支援施策の対象となる障害者は、全国の障害者約964万人中、18歳から64歳の在宅者で約377万人と推測されています。

また、平成30年3月卒業の特別支援学校の卒業生2万1657人のうち、1万2906人が卒業後に障害福祉サービスを利用、そのうちの6626人が就労系障害福祉サービスを利用しています。

障害者総合支援法とは

障害者総合支援法は、18歳以上の「身体障害者」「知的障害者」「難病」を持つ人を障害者と認め、障害者に対する支援を定めた法律です。

「障害の有無にかかわらず、すべての国民が基本的人権を持つ個人として尊厳を尊重され、ともに生きる社会を実現すること」「そのために障害者が地域社会で、日常生活や社会生活を営むための支援を受けることができること」などを基本理念としていて、障害者の様々なニーズに応じて福祉サービスを利用できる仕組みを定めています。

 

就労支援は障害者総合支援法の福祉サービスです。

就労支援には「就労移行支援」と「就労継続支援」の2種類があり、それぞれ支援の目的と、対象者が異なります。

就労移行支援は就労を希望する障害者を対象に、就職するための支援を目的としており、一方で就労継続支援は一般企業での就職が困難な障害者を対象に、働く場の提供を目的としています。

就労移行支援とは

就労移行支援は、一般枠または障害者枠で働く意欲のある障害者を対象に、就職のための知識や能力を鍛える場所です。ここでは就労移行支援の対象となる利用者、具体的なサポート内容などをご紹介します。

利用者

就労移行支援の利用者は、企業などへ就職を希望する18歳以上65歳未満の障害や難病のある方です。

統合失調症やうつ病などの精神障害、ADHD・ASD・LDなどの発達障害、難聴や視覚障害などの身体障害など幅広い障害を持つ方が対象になります。

利用者は、目標や課題を持って就労支援を利用している方が多いようです。

例えば発達障害があり「自分らしく活躍できる仕事がしたい」と考えている方は、「コミュニケーションが苦手」「注意散漫」などを課題に挙げ、その改善に向けてトレーニングします。

サポート内容

就労移行支援の具体的なサポート内容としては、次のようなものがあります。

職業訓練

希望する就職先に必要な知識とスキルを身につける訓練です。

就職や就職後の将来に対するビジョンを見据えながら、一般就労に向けたトレーニングを行います。PC操作などの一般的なスキルから、デザインソフトの取り扱いや簿記といった専門的なスキルまでさまざまなトレーニングを行っています。

就職に関する相談や支援

就職に関する悩みや、不安を相談できます。

例えば、「働きたいのに仕事が見つからない」「具体的にやりたい職種がある」「就職して一人暮らしがしたい」などです。相談した個人のニーズに応じて、職業訓練の内容を設定してもらうこともできます。

就職活動のサポート

就労移行支援は、職業紹介を行うことができませんが、ハローワークや障害者就業・生活センターなどと連携して、利用者の方に合った就職先を見つける手助けをします。

本人に合った職業探しやアドバイス

利用者の方の得意なこと、不得意なことを考慮し、その人にあった就職先を一緒に探します。

職場見学や実習などを行い、働くための環境作りも行っています。

履歴書や応募書類の添削、模擬面接なども実施しています。

利用料金

就労移行支援の利用料金は、サービス提供費用の1割を上限として、世帯の所得に応じて月ごとの負担上限額が設けられています。

自己負担額は所得に応じて0円~37,200円まで4区分あり、ひと月に利用したサービスの内容や時間にかかわらずこれ以上の負担は発生しません。

利用手続き

まずは利用したい就労移行支援に問い合わせし、見学申し込みをしましょう。

見学や体験を通して、事業所の雰囲気や受けられるサポートの範囲が自分に合っていると感じたら、市区町村が発行する「受給者証」を申請する手続きに入りましょう。

 

受給者証を受け取るには、まず市役所や区役所にある障害福祉の窓口で、障害者手帳か医師の診断書または意見書を提出します。窓口の名前は自治体ごとに異なりますのでチェックしておきましょう。

このとき利用計画書に記入する必要がありますが、一人で考えるのが難しい場合は就労移行支援事業所の担当者に代行してもらうことも可能です。

 

手続き後に市区町村による審査があり、支援が必要と認められれば受給者証が利用者宛に送られ、就労移行支援事業所を利用できるようになります。

 

就労継続支援とは

就労継続支援は、大きく分けて「就労継続支援A型」と「就労継続支援B型」という2つの形態があります。

就労継続支援A型の概要

就労継続支援A型(A型事業所)とは、障害や難病のある方が雇用契約を結んだうえで、一定の支援がある職場で働くという福祉サービスです。

障害者総合支援法に基づく福祉サービスのひとつであり、一般企業での勤務が困難である65歳未満の方が継続して働けるような職場となっています。

 

勤務形態は事業所ごとに異なりますが、1日の実働時間は4~8時間程度です。

仕事内容は、カフェやレストランの接客・パソコンによるデータ入力代行・自動車部品などの加工といった業務があります。

 

利用者はA型事業所との間で雇用契約を結ぶので、自治体の定める最低賃金以上の給料がもらえる場合が多い傾向にあります。

ただし前年度の年収によっては、給料からサービス利用料を差し引く必要がある場合もあることを念頭に置いておきましょう。

就労継続支援B型の概要

就労継続支援B型(B型事業所)とは、障害や難病などのある方で年齢や体力の面から一般就労が困難な方を対象にした福祉サービスです。A型と比べると、短時間から働くことが可能な事業所が多いのが特徴です。

 

仕事内容は軽作業が多く、A型事業所と異なり雇用契約を結ばないため、賃金ではなく「工賃」として支給されます。工賃は最低賃金を下回ることが多い反面、自分の障害の状態に合ったペースで働くことができます。

A型とB型のメリット・デメリット

A型事業所は雇用契約を結んで就労が可能と見込まれる人が多く、一般企業を離職した方、または養護学校卒業者などが入所します。

事業所と利用者は雇用契約を結ぶため、最低賃金の保証による安定した収入と社会保険などの福利厚生の適用で安心して職場で訓練が可能というメリットがあります。

デメリットとしてはB型と比べるとレベルが高い仕事を任されるため体調・病状に合わない場合もあること、事業の受注状況によっては自分のペースで働けないことが挙げられます。

 

一方、B型作業所は就労の機会を通じて生産活動の知識や能力の向上が見込まれる方、年齢や体力面で課題があり雇用契約が困難な方が対象です。

どちらかといえば、就労移行支援やA型事業所に入るための準備をする場所といった立ち位置です。

雇用契約を結ばないのでマイペースに働けますが、A型と比べて労働時間が短いうえ、最低賃金の保証がないことから収入も低いことが難点です。

利用手続き

就労継続支援を利用する際にも、就労移行支援と同様に自治体の発行する受給者証が必要になります。手続きの流れもほぼ同じですが、雇用契約を結ぶA型事業所ではハローワークに掲載している求人票や紹介状を持参する必要があるほか、労働時間によっては雇用保険の手続が必要になる場合があります。

ハローワークや自治体の窓口とのやりとりがB型事業所や就労移行支援よりも少し増えるので、心配であれば見学や体験の際に担当者へ相談してみるのがよいでしょう。

まとめ

本記事では、障害者就労支援の概要や利用方法についてご紹介しました。

障害者就労支援は主に「就労移行支援」と「就労継続支援A型」「就労継続支援B型」の3つがあります。それぞれの特徴を知っておき、自分の障害や現在の体調などを考慮して、適切なサービスを受けられる事業所を選ぶことをおすすめします。

就労を通じて自立を目指している方は、障害者就労支援をうまく利用しましょう。