障害者雇用にも自己分析は必要?障害者ならではの分析内容も紹介!

2022年12月8日

就職活動をするうえでは、自分の就きたい職業を探すことが大切ですが、自分には何ができるのか、どのようなことを苦手としているか、などの自己分析をすることも重要な過程のひとつです。
自分のことは自分がよく知っているように思いますが、就職を前提とした自己分析によって本当の自分の考え方が見えてくることがあります。
自分自身の特徴や長所、短所などを把握することで、就職活動でも自分の魅力を的確に伝えることができるようになります。
もちろん障害者の就職活動でも自己分析は重要です。
障害者の場合は健常者の自己分析に加えて、障害をもちながらどのように働いていこうと考えているかなど、自分の障害についての考え方の分析も必要です。
この記事では、障害者雇用における自己分析の必要性や分析方法などを解説します。

 

自己分析とは

人間ならば誰でも、その人なりの価値観や考え方を持っているものです。
しかし、あらためて「自分はこういう人間だ」と説明しようと思うと、多くの人は戸惑ってしまうでしょう。
自己分析とは、自分の心の深層にある価値観や考え方を、言語化できるようにする訓練のようなものだといえます。
多くの場合、これまでの人生で印象的だった出来事と、そのとき自分はどのように感じたか、また、その結果どのような行動をしたかを分析することによって「自分という人間がどのような人物であるか」が見えてきます。
このように自己分析をすることによって、自分という人間の姿を明確にすることは就職活動をするためには大変重要です。
自己分析の目的や分析するポイントなどを以下で詳しく紹介します。

分析する目的

自己分析は就職活動をするうえでなぜ重要なのでしょうか。
自己分析をする目的は大きく分けて二つあります。
一つ目は「会社に自分のことを的確にアピールするため」です。
就職を希望する会社に対し、説得力のあるエピソードともに自分の魅力や長所を伝えることで、採用に至る可能性は高くなります。
自分という人間に魅力を感じてもらうことももちろん大切ですが、自分で自分を理解していこうとする姿勢や、自己分析の説得力、常識的な考え方をしているかどうかという点でも、求職者の自己分析は採用担当者から注目されています。
二つ目は「自分の望むキャリア形成ができる職に出会うため」です。たとえば過去の出来事などから、「自分は負けず嫌いな人間だ」と考えたとき、それに派生する形で「競争すると良い結果が出やすい」、「目標達成を目指すのはワクワクする」、「ずっとそのような環境にいたい」など自分の希望がはっきりとします。
このように自己分析を進めた結果、自分が今後輝けそうな職種や希望するキャリアプランが見えてくることがあります。
自分自身の揺るぎない希望や人生プランを持っていれば、きちんと目的を持った就職活動ができるだけでなく、就職後のミスマッチの可能性を減らすことができます。

分析するポイント

今の自分を分析することは、過去の自分とも向き合わなければなりません。
障害者だからといって、自分の障害をすべて受け入れ、悩みがない人ばかりではありません。
また、過去の出来事や自分と向き合うにあたってつらい気持ちになる人もいるでしょう。そのようなときは無理のない範囲で行うことをお勧めします。
就職活動では自分の強みをアピールしたくなりますが、自分自身の弱みや障害の特性について的確に自分で理解できているかどうかも大切です。
自分の強みを誇張するのではなく、等身大の自分の姿を伝えられるようにしましょう。特に分析が大切なポイントについて以下で詳しく解説します。

自分の強み・弱み

誰にでも得意な分野と苦手な分野があります。
自己分析で大切なことは、自分が持つ強みと弱みを見つけることです。
自分の強みは何か、という問いに対してすぐに答えられる人もいるかもしれませんが、それは本当に自分の強みなのか、もう一度考えてみましょう。
自己分析を進めると、それは強みではなく願望に近いものであったり、他の人から見るともっと別の強みがあったりした、というケースがあります。
一方で、自分自身の弱みだと思っていたことが、かえって良い効果を生み出していたということもあります。
このように、自分の強みと弱みをしっかりと理解することは、自分自身がどのような人間かを理解することに繋がり、どのような役割で会社の役に立てるかがわかるようになります。

障害の特性

障害者雇用では、自分の障害についての分析も大切です。
自分の障害はどのような特性か、何ができて何ができないかなどを的確に伝えることで、会社側は自社での仕事ができるかどうかを判断することができます。
それだけではなく、障害者が自分の障害について正しく理解していることは、会社にとっての安心感にも繋がります。
また、障害を持った経緯や、障害が自分に与えた影響、障害についての考え方の変化、今後の障害との付き合い方などを、わかりやすく説明できるということは、きちんと自分と向き合い、落ち着いた環境の中で働ける人という印象を与えてくれるでしょう。
このような障害に関する内容は話せる範囲内のことで構いませんが、事前に整理しておくことは障害者の自己分析では重要なことです。
また、服薬や通院の必要性、職場環境やサポートの要望など、最初に伝えるべき内容もきちんと整理しておきましょう。

自己分析に必要なもの

現在、自己分析は就職活動の際に多くの人が取り組んでいます。
そのため、自己分析のためのツールもいろいろな種類が手に入りやすくなっています。
自己分析・自己PRの解説や分析に役立つ質問が設けられたWebサイトや本を、インターネットや書店などで探して読んでみましょう。
同じく、インターネット上で手に入る自己分析シートの利用もおすすめです。
質問に答えていく方式で、自分自身の考え方の特徴がわかるようになっています。
障害者の場合、障害の特性によって自分のやりたい仕事と出来る仕事が違うこともあり、悩むケースもあります。
そのような場合は自分と同じ障害を持った人の経験談が参考になることがあります。
そのような人が身近にいれば話を聞かせてもらうのが良いですが、いない場合はWebサイトの体験談や、書籍なども参考にすることができます。

 

障害者が自己分析するメリット

障害者が仕事を探すとき、「自分に何ができるか」と考えるのが一般的であり、「自分が何をしたいか」は二の次になってしまう傾向があります。
もちろん障害の特性に合わせた仕事を探すのは大切なことですが、自分自身の本当に望む仕事や、強みを活かせる仕事に就ければ、働くことがとても楽しく、人生が明るいものになるでしょう。
そのために障害者の就職活動でも自己分析は重要です。障害者が自己分析をすることでどのようなメリットがあるのか以下で詳しく解説します。

自己PRが作りやすくなる

自己PRでは、志望動機や自分が入社後に貢献できる内容などを書きます。
自己PRでは「会社のために役に立ちたい」、「自分はこんなに会社に興味をもっている」という熱意が伝わることが大切であり、きちんとその理由を述べて自分をアピールできる能力があるかどうかを採用担当者は判断します。
自己分析で自分の強みや得意なことを把握できていると、会社にどのような点で貢献できるかがおのずと見えてくるでしょう。
このように精度の高い自己分析をすることで、より質の高い自己PRを作成することができるのです。

適切な配慮の仕方を伝えられる

障害者と一言でいっても、障害には種類があり、その特性によって職場がとるべき配慮や支援もさまざまです。
職場に対して適切な配慮の仕方を伝えるためにも自己分析が役立ちます。
多くの会社では障害者に対する対応方法を十分に把握できておらず、「この人が自社で問題なく働けるのか」「この人に対してどのような配慮をすれば良いのか」などの不安を持っています。
また、職場の障害に対する知識が少ない場合は、「〇〇をしてください・しないでください」と言うだけでは、十分に意図が伝わらないこともあります。

そのため自分の障害を分析し、「こういう障害で、このような不便があるので、〇〇してください・しないでください」と伝えられるようになることで、職場の理解が深まり、障害者自身にとっても働きやすい職場環境になるでしょう。
それに加え「これならできます」「このような配慮は不要です」といった、自分でできる内容も伝えられれば、配慮や支援の度合いを微調整することができ、お互いの安心感につながるでしょう。

このように、自分がしてほしい配慮の内容を伝えられるかどうかは、職場環境の整備のためだけではなく、障害者が自分の働く姿を想定できているかどうかを判断する材料にもなります。

就職への熱意が伝わる

多くの会社は熱意のある社員を求めています。
「この会社に入りたい」という強い熱意がある人は入社後も士気が高く、仕事に一生懸命だったり、早期退職のリスクが小さかったりするなどのメリットがあります。
適切な自己分析をすることで自分の強みや好みなどが見えてくるため、自分に適している業種や職種に辿り着きやすくなります。
自分で合っていると思った会社には、採用面接でも熱意が伝わりやすいものです。
自分は何が好きで入社後にどう活かせるか、自分の長所と会社の事業が具体的にどう合致しているかなど、やる気や入社後の貢献について会社に伝えることで採用にいたる可能性は高くなるでしょう。

企業とのミスマッチが防げる

障害者雇用の課題の一つに、障害者の離職率が健常者に比べ高いことが挙げられます。
このような問題の原因はさまざまな要因があり一概に述べることはできませんが、自己分析により自分が望む働き方を明確にすることで、相性が良くない会社に入社する可能性を減らすことができます。
この場合の「相性」とは賃金、仕事内容、障害に対する考え方、などについて障害者本人が納得できるかどうかということです。
例えば、障害者雇用では賃金や仕事内容が健常者と同じでない場合があります。
このような差異が障害の特性上、仕方ないと納得できるものなのか、働いていくうちに不満を感じそうか、自分の考えをしっかりと持つ必要があります。
このようなときに自己分析の過程で自分自身を理解していることがとても重要になります。
障害者の雇用定着には、会社側が責任を担うべき部分もありますが、障害者自身も自己分析をしっかりと行い、自分が長く働いて活躍できる会社を探す必要があります。

 

障害者雇用における自己分析の進め方

障害者が就職活動する際の自己分析は健常者の場合と大きな違いはありません。
自分の過去の体験や考え、自分の客観的な性格などをもとに、自分の人となりや長所・短所などを把握します。
障害者の場合は障害による経験や苦手なことなどもまとめる必要があります。
自分がどのような人物かわかれば人に伝えやすく理解もされやすいため、段階を追って自分の詳細を紐解いていきましょう。障害者の自己分析方法について以下で詳しく解説します。

自分の過去を振り返る

まずは現在までの自分を振り返って、得意なことと苦手なことを書き出します。
このときはあまり深く考えず直感的に思ったことで構いません。
いくつか書き出したら、得意なこと・苦手なことそれぞれに対し、そう思った理由や根拠となる出来事を書き加えましょう。

「楽しかったことや辛かったこと」「成功や失敗の体験」「のめり込んだ趣味や体験」「人に喜ばれたことや貢献できたこと」「人に迷惑をかけたこと」「障害に関して辛かったことや克服できたこと」などのエピソードがあれば書き出します。
そして書いた内容を見て、自分にとって特に重要だと思うこと、これからも大切にしていきたいことを丸で囲むなど印をつけます。
また、人に負けない能力や自分がやりたくないこと、将来的になりたい社会人像などが浮かんで来たら書き足していきます。

ネガティブな内容に対しては、なぜやりたくないのか、これをやらないことでどのような問題があるか、今後どうやって改善していくのかなどを書き出すことで「弱みの本質」が見えてくるかもしれません。
同じ弱みでも、「これはなんとなく苦手です」ではなく、「こういう経験から、このような内容に苦手意識がありますが、このようにすれば改善できると思います」と答えられるだけで、聞いた人の印象は大きく変わってくるでしょう。

自分の障害について考える

自分が抱えている障害の特性や度合いなどを整理しましょう。
自分の障害について詳しく理解していないと、職場に十分な配慮を求めることもできません。
先天性の障害か後天的なものか、これまでに障害が原因で社会的な壁を感じたことはあるか、障害で行えない業務はあるか、どのようなサポートが必要かなど、過去のエピソードを交えつつ自分の障害について分析していきます。

障害や苦手なことについて考えるときは「なぜ苦手なのか」を突き詰めて考えると具体的な要素が得られます。
複数の業務を同時進行するのが苦手という場合、どうして苦手なのかを分析すると「優先順位をつけられない」、「指示担当者への相談をしづらい」、「報連相が苦手」と、苦手な要素を把握することができます。
そのようにすることで、会社に求める配慮として「定期的に報連相の時間を設けさせてほしい」、「仕事の割り振り方に配慮が欲しい」などといった具体的な内容を挙げられるでしょう。また、自分の得意なことを知るためには、自分の苦手なことがヒントになることもあります。

例えば、複数の業務を同時進行するのが苦手という人には、一人で集中してコツコツする仕事が得意というケースが多いといわれています。
特に発達障害者の場合はこのように苦手なことの反対が得意である傾向があり、今の自分の環境でやりにくいと感じている内容を書き出すことで、その反対はどうなのか考えてみるのも良いでしょう。

ほかの人の意見も分析のために重要です。健常者であっても、自己分析はときに自分の願望や思い込みが反映されてしまい、本当の自分自身の姿と乖離してしまうことがあります。
そのため、家族や友人、先生など身近な人に自己分析を聞いてもらい、違和感がないか意見をもらうと良いでしょう。
他人からの指摘をうけることで、自分では気付けなかった自分の一面に気付くことができるかもしれません。

自分の性格を考える

自分がどのような性格か把握することも自己分析で必要な過程です。
心理学においては、大半の人は複数の特徴や因子が合わさり個人の性格を形作っているといわれています。
そのため、自分に当てはまる要素を複数選び、それらを組み合わせると、自分の性格がわかるとされています。
このような性格診断テストはインターネット上でもチェックシート方式で手軽にできるものが利用されています。
もちろん簡単なテストでは人間の性格や心の中を完全に理解することは難しいものの、自分の性格にどのような傾向があるかを把握することができるでしょう。
自己分析の初期段階などに客観的な自分の性格を考えるヒントになるかもしれません。
自分の性格を深く理解すると、自分の向いている職種や労働環境が見えてくるため、職を探すうえでの大切な指標になります。

自己PRなどを考える

自己分析の結果、自分の特性や性格などを把握できたら、どのように企業へのアピールをするかを考えます。
自己PRを作成する際は、上記のように「過去をふりかえって思い出した出来事」が役に立つ場合があります。
印象深い出来事を説明したあとに、「このときに私はこう思った・行動した」「だから私はこのようなことができる」というように、自分が感じたことと自分の強みを感じたことを原因と結果の関係でわかりやすく説明すると、採用担当者は納得しやすいでしょう。
また、自分の大切にしている価値観や考え方と、会社の経営方針に共通点があれば、志望動機としてアピールすることもできます。

 

まとめ

ひと昔前は、障害者の雇用機会は今よりも少なく、自分のやりたい仕事を選り好みすることなどは難しいことでした。
そのため、障害者の自己分析が重要視されるようになったのは比較的最近のことと言えるでしょう。
さらに、現在においても、障害者が就職できる環境は整いつつあっても、障害者の長期的なキャリア形成に関しては、障害者本人と雇用者側ともに明確なプランニングができていないケースがあります。
今後さらに門戸が開かれる障害者雇用では、より広い雇用機会の提供だけでなく、雇用の次の段階であるキャリア形成に力を入れる必要があるでしょう。

そのため、障害者本人が就職を「ゴール」とせずに、その後の自分がどのような人生を歩みたいか、一人の職業人としてどのような働き方をしたいかを明確にしておくことは大切です。
精度の高い自己分析をして、自分の人生を豊かにしてくれるような働き方を見つけましょう。