てんかんのある方の働き方について解説!仕事探しや仕事をするうえで気を付けたいポイントについてもご紹介!

2023年3月20日

てんかんは症状の種類や頻度に個人差の出やすい病気であるため、仕事探しの際には自身が抱えるてんかんの特性を正しく把握しておくことが重要です。

この記事では、てんかんのある方が仕事探しを行ううえでのポイントや、実際に仕事を行う際に気を付けたいポイントについて解説します。

てんかんとは

てんかんとは、一時的に脳内の神経細胞が過剰に興奮することによって発作を起こす脳疾患です。
てんかんは約100人に1人の割合で発症するとされており、一度症状が出ると繰り返し発作を起こすことが特徴になっています。

てんかんは慢性的な脳疾患ですが、継続的な通院もしくは投薬治療を行うことで症状が安定するケースが多いとされています。

一般的に、発作が治まるまでの時間は数秒~数分程ですが、数時間継続してしまうケースもあります。

てんかんの種類

てんかんは、発症原因に応じて大きく「特発性てんかん」と「症候性てんかん」の2種類に分けられます。

ここでは、それぞれの発症原因や治療方法に関して解説します。

特発性(一次性)てんかん

脳に目立った病変がなく、発症原因が不明である場合特発性てんかんに分類されます。

小児期から若年期に発症する傾向があり、成人期には症状が治まる傾向にあります。

特発性てんかんを治療する際には、抗てんかん薬による薬物療法や生活習慣の指導が行われることがほとんどです。

症候性(二次性)てんかん

脳腫瘍や脳梗塞などで脳が損傷したことが原因で発症する場合症候性てんかんに分類されます。

年齢に関係なく発症する場合があり、発作の症状によっては負傷や骨折などを伴うリスクがあります。

症候性てんかんを治療する際には、発症原因に応じて外科治療あるいは抗てんかん薬による薬物療法が行われることがほとんどです。

てんかんの発作症状

てんかんによる発作症状は、脳全体に生じる全般発作と、脳の一部分に生じる部分発作の2種類に大別されます。

全般発作の症状

全般発作では、脳の広い領域が過剰に興奮することで発作を起こします。
意識障害を伴う症状が多く、発作を起こしたことを周囲が気づきやすいのが特徴です。

ここでは、全般発作に分類される症状について解説します。

強直間代発作

主な症状として、発作が起きた際に意識を失って全身が硬直します。

数分ほどで回復する場合がほとんどですが、前兆がないため、周囲の状況によっては転倒し負傷を引き起こすことがあります。

欠神発作

一時的に意識を失い、数秒~数十秒ほどの短時間で回復する場合は欠神発作だと考えられます。

意識障害のみを発症する定型欠神発作と、意識障害と他の症状を併発する非定型欠神発作に分類されるのが特徴です。

ミオクロニー発作

発作が起きた際に全身あるいは一部分の筋肉がけいれんを起こし、不自然な動作をすることがミオクロニー発作の主な症状です。

小児期から若年期の発生が多い症状で、発作が起きても意識はあるのが特徴です。

脱力発作

全身の力が抜けて転倒し、数秒ほどで回復する場合は脱力発作だと考えられます。

脱力発作が起きた際も他の症状と同様、転倒による負傷を引き起こす場合があります。

部分発作の症状

部分発作では、脳の特定の部分が過剰に興奮することで発作が生じます。

発作を起こす部分や症状の表れ方が人によって異なるのが部分発作の特徴です。

ここでは、部分発作に分類される症状を解説します。

単純部分発作

体の一部がけいれんを起こしたり、嘔吐や腹痛といった症状を起こしたりといった症状が見られます。

発作が起きた際に意識があり、どういった症状が起きていたかを本人が覚えているという点が単純部分発作の特徴です。

複雑部分発作

発作が起きた際に意識を失い、数分間にわたって継続するのが主な症状です。

発作が起きる部位に応じて症状が異なり、前触れなく大声を発したり、意識を失ったりするのが複雑部分発作の特徴です。

二次性全般化発作

主な症状としては最初に部分発作が発生し、次に意識障害を伴う全般発作へ移行する傾向があります。

発作が起きた直後は意識があり、全般発作に移行した段階で意識障害を起こしてしまうのが二次性全般化発作の特徴です。

仕事探しの選択肢

てんかんを持つ方が就労を検討する際には、症状の種類や度合い、目指す業種などに応じて求職活動を行いましょう。

てんかんを持つ方は自動車の運転や航空機の運転など、症状が危険な事故につながるような職業には原則として就業できませんが、その他業務に関してはてんかんであることをを理由に就業が制限されることはありません。

ここでは、てんかんを持つ方に適した仕事の探し方についてご紹介します。

オープン就労

病気に関する情報を職場へ開示して就労を目指すことをオープン就労といいます。
オープン就労を選択するおもなメリットは、病気に対する理解を得やすく、業務上の配慮を受けられる場合があるという点です。

また、必要に応じて障害者雇用枠や職業訓練などの利用を検討できる点もメリットでしょう。
業務内容や就業時間などの配慮が必要である場合は、オープン就労の求人に応募するのがおすすめです。

一方で、オープン就労は求人数が比較的少なく、目指せる業種が限られていたり、賃金が低かったりするなどの問題に直面する点がリスクになります。

クローズ就労

病気に関する情報を職場へ公開せずに就労を目指すことをクローズ就労といいます。
オープン就労と比較して求人数が多く、業種を選びやすい点がメリットです。

一方でクローズ就労では、職場から病気に対する理解や配慮を受けられないことが問題になる場合があります。

てんかんの種類によっては、突発的な発作の際に職場側で対応できない危険性が高くなるでしょう。

就労移行・就労継続支援の利用

就労移行・就労継続支援は障害者総合支援法に基づいて実施される制度で、主に職業訓練や職場開拓といったサポートを受けられます。

就労移行支援は、企業への就職を目的とした職業訓練や、職場定着支援を受けられる制度です。
就労移行支援を利用できる期間は原則2年以内であり、各市町村の障害福祉窓口から申し込めるようになっています。

就労継続支援は、一般企業への就労が困難である方を対象として、働く場を提供する制度です。就労継続支援にはA型とB型の2種類があります。

A型では利用者と企業が雇用契約を結ぶことが特徴であり、各都道府県における最低賃金以上の給与が利用者に支払われます。
B型では雇用契約を結ばず、定期的な通所の中で授産的な活動を行い、成果に応じた工賃が支払われる支援事業です。

業務内容や通勤日数によりますが、収入は就労継続支援A型のほうが高い傾向にあります。

仕事をするうえでのポイント

てんかんを持つ方が就労する際には、職場との間で勤務条件を調整したり、発作が起きた場合の対応を職場内に周知したりすることがポイントです。

発作時の対応の周知

オープン就労の場合、就業中に発作が起きた場合の症状や、必要な対応について職場に伝えておく必要があります。

服薬によって発作が収まるかどうか、業務に支障があるかどうかなどを職場内に周知することで、職場から適切な配慮を受けられるかもしれません。

業務内容の中に対応できないことが含まれている場合は、発作が起きても自己解決できるか、他の業務に支障はないか等をあらかじめ伝えることで、誤解を受けるリスクを低減できます。

職場と勤務時間の相談

疲労やストレスの蓄積によって発作が起こるリスクがある場合、採用面接面接を受ける時点で勤務時間の相談を行う必要性があります。

対応できる勤務時間や日数について事前に伝えておくことで、時間調整や通院への配慮などを職場へ相談しやすくなり、勤務中に発作が起こるリスクを最低限に抑えられるでしょう。

職場への相談と並行して、過度な運動や寝不足など発作のリスクがある行動を避ける対策も必要です。

医療機関との連携

てんかんを持つ方が就労する際には、目指す業種や就業時間などを医療機関と相談して進めることも重要なポイントです。

必要に応じて診断書を発行してもらったり、発作が起きた際のサポートを実施してもらったりすることで、仕事探しから職場への説明、定着支援までをスムーズに進めやすくなります。

職場で理解を得られないときの対処法

職場によっては、てんかんによる発作の症状、抑える方法などを説明しても理解が得られない可能性もあります。

例えば、適切な業務を割り当てられない場合や、てんかんのない同僚との間に昇進に差を付けられる、などの差別を受けるケースが考えられます。

障害の有無を理由として雇用条件の差別を行うことは障害者雇用促進法で禁止されているため、障害を理由とした差別を受けた際には、事業主あるいはお近くのハローワークにご相談ください。

もし自主的な努力による解決が困難である場合、都道府県労働局の職業安定部への相談をおすすめします。

まとめ

てんかんは脳内の神経細胞が過剰に興奮することで発作を起こす脳疾患であり、発作の生じる頻度や症状には個人差があります。

仕事探しを進める際には、てんかんであることを職場に伝える場合はオープン就労、伝えない場合はクローズ就労の選択をおすすめします。

実際に就労し、適切に仕事を進めていくためには、職場の事業主や医療機関と連携を取りながら仕事を進めていくことが重要なポイントになるでしょう。