障害者雇用枠の給料事情|データで見る給与の実態

2024年10月7日

障害者雇用枠で働く人の給料相場はどのようになっているのでしょうか。障害者雇用枠の給料は一般の人より低くなるのではないかと考える人もいると思います。果たして障害者雇用枠で働く人全員がそうなのでしょうか。実際の事例も交えながら、障害者雇用枠で働く人の給料を見ていきます。

障害者雇用と一般雇用の平均給料

まずは障害者雇用の平均月給を障害種別に見ていきます。厚生労働省の平成30年度障害者雇用実態調査結果は以下の通りです。

  • 身体障害者:21 万5千円
  • 知的障害者:11 万7千円
  • 精神障害者:12 万5千円
  • 発達障害者:12 万7千円

となっております。

また、全労働者(一般雇用枠と障害者雇用枠を合わせた場合)の平均月給は、厚生労働省の平成30年賃金構造基本統計調査によると、

  •  全労働者の平均月給:30 万6千円

となっております。

障害者の中で最も月給が高い身体障害者と全労働者の月給を比較した場合であっても、およそ10万円の差があり、年収で計算すると約100万円以上の差があることがわかります。厚生労働用のデータを見る限りでは、障害者雇用の給料は一般雇用の給料より低いと言わざるを得ないでしょう。

障害者雇用が一般雇用の平均給料より低くなる背景

厚生労働省のデータから、障害者雇用枠で働く人の平均給料が一般雇用で働く人の平均給料よりも低くなっていることがわかりました。

その一方で、平成28年に施行された障害者差別解消法という法律では、障害を理由にした不当な差別や、権利利益を侵害する行いは禁じられています。障害を理由にした不当な差別を禁止する法律がある中で、障害者雇用と一般雇用の給料に差が出るのはなぜなのでしょうか。

仕事の難易度が低いことが多いため

まず障害者雇用枠で働く人の職種に注目してみます。厚生労働省の平成30年度障害者の職業紹介状況等に記載のある、平成30年度職業別の就職状況のデータでは、障害者雇用枠で運搬・清掃・包装等の職業に就いている人の割合が全体の約34.1%と最も多くなっています。続いて事務的職業に就く人の割合が22.1%となっています。

次に総務省の労働力調査結果によると、平成30年の職業別就業者(一般雇用枠と障害者雇用枠を合わせた場合)の割合では、事務的職業が19.7%と最も多くなっているものの、続いて専門的・技術的職業従事者が17%となっています。中でも、障害者雇用枠で働く人の割合が最も高い運搬・清掃・包装等の職業に就く割合は7.1%となっており、その割合は大きく差があることがわかります。

この数値からわかる通り、全労働者の中では専門職に就く人の割合が多数を占めているのに対して、障害者雇用枠で働く人は清掃などの軽作業の職に就いている割合が多くなっています。

専門的なスキルを持った人は希少性が高く、その分給料が高くなる傾向にあります。障害者雇用枠で働く人の中で、専門的な知識や経験を活かして働く人がまだまだ少なく、そのことが障害者雇用枠で働く人の給料に影響を与えてしまっていることが言えそうです。

短時間労働者の割合が多いため

平成28年の日本の全労働者(一般雇用枠と障害者雇用枠を合わせた場合)のうち、短時間労働者(30時間未満)の割合は、22.8%となっております。

その一方で、厚生労働省の平成30年度障害者雇用実態調査結果によると、週所定労働時間が短時間労働者(30時間未満)の割合は、

  •  身体障害者 20.2%
  •  知的障害者 34.5%
  •  精神障害者 52.8%
  •  発達障害者 40.2%

となっています。身体障害者のみ一般雇用枠の労働者と同水準となっていますが、その他の障害を抱えた方は、一般雇用枠より短時間労働者(30時間未満)の割合が倍ほどに高くなっていることがわかります。

勤務時間が短くなると、当然、手元に残る給与も少なくなりますよね。このように、短時間労働者の割合が一般雇用枠より障害者雇用枠において高くなっていることが、障害者雇用枠の給料が低くなっていることに影響していると考えられます。

障害者雇用枠で高待遇の人とは

ここまで障害者雇用枠で働く人は給料が低くなる傾向があることを見てきました。しかし、これはあくまで障害者雇用枠で働く労働者全体の数字から読み取ったものになっています。障害者雇用枠で働く全ての人の給料が、一般雇用枠で働く人の給料を下回ると言い切ることはできません。障害者雇用枠で働く人の中には、一般雇用枠からみても高い給料を受け取っている人がいます。障害者雇用枠で働く人の中で高待遇の人の特徴と、その給料水準を見ていきましょう。

障害者雇用枠で高待遇の人の特徴

障害者雇用枠で働く人の給料が一般雇用枠で働く人よりも低い傾向にあることの背景を見てきました。これらの背景は、全ての人に当てはまるわけではありません。障害者雇用枠で働く人の中には、

  • 専門的な知識や経験を活かした仕事に就いている
  • 契約社員以上で雇用契約を結びフルタイムで働いている
  • 配慮をほとんど受けずに働いている

といった働き方を実現している方がいます。これらの条件を満たしている人は障害者雇用枠で働きながらも高い給料を受け取っている傾向にあります。

障害者雇用枠で高待遇の人の給料水準

転職経験者の事例から見ていきましょう。身体障害者の平均月給がおよそ21万円だったのに対して、障害者雇用枠で働く高待遇の人は、内定時に年収400~600万円ほどの条件で提示を受けています。転職経験者の一例として、

  • Aさん 人事職 年収450万円で内定

人事経験が6年ほど。肢体に障害は抱えるものの、PC操作や移動は全てお一人で行う

  • Bさん 企画職 年収500万円で内定

営業経験が約4年と、営業管理職としての経験が3年ほど。双極性障害をお持ちでしたが、勤務時間や仕事量をコントロールすることで直近の勤怠は安定

  • Cさん ITエンジニア職 年収600万円で内定

ITエンジニアとして10年以上の経験。過去にうつ病に苦しんだ時期があるものの、直近3年間安定して勤務していた方。

このように障害をお持ちの方であっても、周囲のサポートを得つつ、自立的に働き高待遇を実現している方がいます。

転職する際に給料だけを追い求めることの危険性

障害者雇用枠に限らず、給料面だけを追い求めると、有意義な転職に繋がらないことがあります。高待遇の人ほど成果として求められるものが高くなったり、過度に仕事量が多くなったりします。過剰にプレッシャーを感じ、過度に疲労をためこんでしまうと、体を壊す原因となり、仕事が続かなくなってしまいます。高い給料が受け取れる仕事は魅力的ではありますが、自身の体調やライフスタイルに合った仕事であることも重要です。日々の健康があってこその仕事なので、転職活動において高い給料を希望する人は、転職希望先の労働環境を慎重に確認した方がいいかもしれません。

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