障害者雇用に契約社員が多い理由と、そのメリットとは?

契約社員と聞くとマイナスなイメージをお持ちになる方が多いかもしれませんが、デメリットばかりではありません。障害者雇用における契約社員は、むしろ働き方に柔軟性がでるといったメリットもあります。障害者の雇用の多くは契約社員からのスタートですが、雇用には会社側の都合だけではなく、障害者側の都合も絡んでくるのはご存知でしょうか。この記事では、障害者の契約社員雇用についてご説明します。

正社員と契約社員の違いとは

まず、障害者の契約社員をご説明する前に、健常者の正社員と契約社員との違いとは何かをご紹介します。

雇用期間の違い

正社員と契約社員の最も大きな違いは、雇用期間に定めがあるかないかです。正社員は定年まで基本的に解雇はありません。試用期間が過ぎたら無期雇用という雇用形態に移行します。契約社員の場合、契約期間の終了時に雇用契約の更新が行われないとそこで雇用が打ち切りになります。数か月から1年ほどの単位で契約期間が決まっているため、続けて働くには会社と労働者が合意の上で契約更新をする必要が生じます。

給料の違い

会社によっては、正社員と契約社員の間で、基本給の差、手当の差、ボーナスの有無、福利厚生の差などの違いが生じることがあります。結果として正社員よりも契約社員の給料が低くなる場合が多いです。一方、パートやアルバイトなどと比較すると、契約社員の給与額は高い傾向にあります。ただし、正社員と契約社員の給与の差は雇用制度で決まっているものではなく、会社によっては給与面での差が少ないケースもあるので注意しましょう。

業務内容の違い

会社の方針によっても異なるのですが、責任の重い仕事や難しい仕事は正社員が担当する場合が多いです。所謂、管理職は正社員によって構成されています。契約社員はサポート業務を任されることが多い傾向があります。

障害者雇用の9割は契約社員、そのワケとは

障害者を雇用する際、会社側は慎重になり、契約社員からの契約を望むことが多くなっています。会社側と障害者側のそれぞれの視点で、そのワケをご説明します。

会社側の理由

初めから障害者を無期雇用することは、会社側には一定のリスクが伴います。なぜならば、障害者は障害があるだけに離職率も高いからです。厚労省の調査では、障害者雇用の入社後一年以内の離職率は30~40%もあります。契約期間が満了した後に契約が更新されなかった人も含みますがが、契約途中で自己都合により退職する人が多いのが現状です。ゆえに、雇用する従業員に職場がマッチするかどうかをしっかりと見極めるため、障害者の雇用は契約社員雇用からという慎重な対応になりがちなのです。

障害者側の理由

障害者にとっても契約社員から始めることは、都合のいい側面もあります。ご説明のとおり、正社員ほど、責任の重い仕事が任せられる傾向にあります。初めから荷が重い仕事をするよりも、初めのうちは軽い仕事から始め、慣れてきたら通常の仕事へと移行していく体制の方が、合っていると感じる方が多いもいます。仕事の内容によっては、思ったようにうまく遂行できないこともあるでしょう。仕事の重さ難易度をある程度コントロールしてもらうためには、正社員の仕事から入らない方が得策という側面もあります。

障害者が契約社員で働くメリットとは

正社員ではなく契約社員といっても、デメリットばかりではありません。改めて障害者が契約社員で働くメリットをまとめます。

難易度を下げた業務からスタートできる

障害により体力的にもパフォーマンスに不安がある場合に、調整して難易度を下げた業務からスロースタートさせてもらえる会社もあります。責任の重い業務がない、やりやすい仕事を回してもらえる、会議への出席が必要ない、残業がない、勤務時間が短い、転勤がない、などコントロールしやすい仕事を回してもらえる傾向があります。仕事の慣れ次第でステップアップして業務を任せてもらえることはメリットではないでしょうか。

正社員よりも柔軟な体制で仕事ができる

正社員の働き方は基本的にはフルタイムです。朝の9時から始まり夕方に終わる仕事が通常でしょう。契約社員であれば、勤務時間やお休みなどをある程度柔軟に調整できる可能性が高くなります。短時間勤務からスタートして、慣れてきたらフルタイムに移行するという対応を行う企業もあります。

正社員の仕事は、やりがい、雇用の安定度、給与において魅力的といえます。一方で、業務の大変さや責任範囲が広くなる、代わりのきかない仕事をアサインされるなど、休みづらくなる不安があります。その点、契約社員であれば、上述したハードな要素を柔軟に変更しつつ仕事を任せてもらえるでしょう。

将来的に正社員へと昇格することもある

障害者雇用で契約社員として入社した場合でも、その後に正社員登用される可能性は十分にあります。良く働けている期間が長くなれば長くなるほど、企業側にとっては手放したくない人材となります。希望より正社員登用を検討してくれる可能性は十分に秘めています。

雇用期間に定めがある契約社員には「5年ルール」というものが存在します。2013年に改正された労働契約法により、労働契約が繰り返し更新され、通算5年を超過する場合、労働者の申し込みで無期労働契約に転換する、と定められました。契約社員で5年以上働いたら、無期雇用切り替えられるということです。しかし、雇用期間が無期契約になるということで、給与や業務が正社員と同等のものになるわけではないので、注意しましょう。

まとめ

障害者になぜ契約社員が多いのかについて、ご理解いただけたでしょうか。会社側と障害者側、双方に理由が存在することをご紹介しました。時間や仕事の業務量にもある程度の融通が利く契約社員は、必ずしも悪い契約ではありません。契約社員からスタートした場合でも正社員への道は残されています。正社員への道を探しているのであれば、入口として契約社員になることは、最初のいいステップかもしれません。