「特例子会社」とは?特徴からメリット・デメリットまでご紹介

2023年3月17日

害者の雇用促進や安定を目的に設立された企業のことを「特例子会社」と呼びます。

障害者は、一般企業での仕事が困難になる場合が多いため、特例子会社などの障害に理解のある企業で就労するのが通例です。

現状、企業が健常者を一定数以上雇用していると、障害者も併せて雇用しなければならない制度が設けられています。

しかし、企業の業種や業態によっては障害者の雇用に踏み切れないこともあるため、特例子会社はそういった場合に活躍する制度です。

ちなみにですが、法定雇用の対象となりうる障害者であることを証明できる書類として、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかの障害者手帳が必要です。

この記事では、そんな特例子会社のいろはについて詳しくご紹介します。

特例子会社とは

特例子会社とは、障害者の雇用促進・安定のために設けられた会社を指す呼び名です。所定の要件を満たした厚生労働大臣の認可を受けた親会社の、一事業所のことを指します。親会社は、子会社への意思決定や役員派遣を行い、親会社が行う仕事の一端を子会社に任せます。

親会社にとっては、特例子会社で障害者を雇用することにより、「障害者雇用促進法」で定められている障害者の法定雇用率に加算できるというメリットがあります。

また障害を抱えている方にとって、自身の障害をオープンにしながら障害に配慮された環境で働けるという利点があります。そのため長期雇用など、将来面での期待ができるでしょう。

雇用形態は企業によって異なりますが、大体は契約社員から始まり、勤務状況、体調、仕事の進み具合などの時期を見て、正社員登用される形がパターン化されています。

さらに、特例子会社を設立している親会社は大きな企業である場合が多いため、福利厚生が充実している特例子会社が多く存在します。

たとえ年収が低くても、福利厚生が充実していることで給料以上の待遇を受けている、と考えられるでしょう。

以下では、特例子会社と一般企業との違いについて解説します。

特例子会社と一般企業との違い

特例子会社と一般企業との違いは業務内容ではなく、障害者を雇用「する」か「しない」かという点です。

特例子会社といっても、ひとつの企業として経営・運営・管理などは一般企業と同様に必要です。まず特例子会社を設立するためには、設立手順を知るとともに、継続的に運営する方法を併せて検討する必要があります。

また、特例子会社は障害者雇用を促進する会社であるため、障害に配慮があることも一般企業と大きく異なる点と言えるでしょう。

特例子会社と一般企業の障害者雇用の違い

障害者の仕事先は、特例子会社だけではなく、一般企業の障害者雇用枠も選択肢の内のひとつでしょう。

一般企業の障害者枠での就労は、仕事のやり方や内容について、障害者に対する一定の配慮がある点は特例子会社と同様です。
しかし、一般企業では就業規定や人員配置などを障害者雇用に合わせて調整することが困難である場合があります。業務上のコミュニケーションが発生する場面では障害者にとって負担がかかることもあるかもしれません。

また特例子会社は、一般企業と比較してバリアフリー設備や専任の指導員の配置など、障害者の雇用管理を行うことがが認定要件として含まれている点も違いとして挙げられます。

特例子会社認定の要件

特例子会社の設立には、親会社と子会社の双方に求められる、一定の要件があります。

その一定の要件を満たした上で、さらには厚生労働大臣の認可を得ることにより、はじめて特例子会社の親会社として設立することが認められます。

以下では、特例子会社の認定に関する親会社・子会社、それぞれの要件について詳しく解説します。

親会社の要件

まず、親会社として認定される要件の一点は、親会社が特例子会社の株主総会などの「意思決定機関」を有しているかどうかです。

つまり、子会社の議決権の過半数を持つことが必要になります。

もう一点は、親会社から子会社への役員派遣や従業員の出向があり、人的交流が多いかどうかになります。少なくとも、この二点の要件が必要です。

子会社の要件

子会社には、主に4つの要件が挙げられます。

①特例子会社が株式会社であること。

②障害者雇用が5人以上で、なおかつ、全スタッフに占める割合が20%以上であり、雇用する障害者の障害の種類が重度身体障害者・知的障害者・精神障害者である割合が、30%を超えること。

③障害者の雇用管理を適切に行える能力があること

④障害者の雇用・安定が確実に行えると認定されること。

この4点の要件が必要です。

特例子会社で働くメリット

特例子会社で障害者が働くメリットには何があるのか、以下で解説します。

障害への配慮がある環境で働ける

特例子会社は、障害者雇用を「促進」する会社です。

障害者を雇うために設立された子会社であるため、障害者向けの環境や設備・規則・体制などが手厚く配慮されている可能性が高いです。

雇用者の障害に合わせたバリアフリー化や指導員の配置、障害に配慮した業務内容の割り振りなどが例に挙げられます。

障害に関する配慮がしっかりされているため、自身の障害を周りがどう見ているのか気になってしまう方にとっては、大きなメリットと言えるでしょう。

同じような障害を持つ同僚と働ける

特例子会社は障害者を雇用する会社であるため、そこで働く人の多くは何かしらの障害を抱えています。

中には当事者自身と同じ障害を持つ同僚もおり、そのような方と一緒に働くことで、障害に引け目を感じることなく、精神的に安心して仕事を続けていくことができるのです。

また、障害に関する悩みの共有や情報交換ができる点もメリットです。

上司・業務・環境が変わりづらく安定している

健常者の働く会社では、企業によっては上司が一定の期間で変わり、仕事も全体の状況によって変化する場合があります。
部署自体の編成が変更されることもあり、障害者の方に与える負荷は非常に大きいものと言えるでしょう。

一方で特例子会社では、親会社からの役員派遣や指導専門員の配置などが行われており、障害特性に配慮された環境で働きやすくなっています。
上司や業務内容など職場環境が変化しにくいため、障害者も特例子会社の雰囲気に安定して馴染みやすい環境であると言えます。

特例子会社で働くデメリット

特例子会社で働くにはメリットもありますが、もちろんデメリットも存在します。詳しく解説します。

給与が低い

特例子会社での業務は限定的な内容をメインとした末端業務を任されるという側面から、高収入での新規採用や昇給を目指すのは難しい環境です。

りたりこワークスの調査によると、特例子会社で働く障害者の平均年収で最も多かったのは「151〜200万円」が33.8%で、つぎに多かったのが「201〜250万円」の26.3%、「101〜150万円」が19.7%となっています。
一番高額だったのは「451〜500万円」ですが、全体の0.5%ほどでした。そのため「がつがつスキルアップを目指して、給料も上げていきたい」と考えている方には、特例子会社は不向きかもしれません。

そういった理由から、特例子会社でスキルを磨いてから他社への転職、キャリアアップを図る方がいるのが現状です。

職務範囲が限られるためやりがいを感じづらい

そもそも特例子会社は、もともと知的障害者の受け入れをしていた企業が多く、その名残が今でも残っています。
例えば過剰な配慮をされたり単調な仕事を回されることが多く、職務範囲が限られ、やりがいを感じづらいデメリットがあります。

2010年代以降、発達・精神障害者の受け入れも徐々に増加しましたが、業務内容や勤務ルールは知的障害者を対象に調整されていることがあり、業務内容や仕事量に物足りない印象を受ける人も少なくありません。

特例子会社は、あくまで定型化されたルーティン業務が苦ではないという方に向いている就業先でしょう。

スキルアップに繋がる仕事が少ない

特例子会社では、ルーティン業務や定型化されたマニュアル業務を障害者の仕事として振り分ける傾向があります。
そのため、専門的なスキルが備わっていなくても仕事を務められることがあり、勤務を継続してもスキルアップに繋がりにくいというデメリットがあります。

しかし、個人のスキルを鑑みて仕事を振り分ける企業もあるため、「どんどんスキルアップして仕事をこなしたい」と考えている方は、複数の特例子会社を比較・検討した上で応募するようにしましょう。
具体的な探し方としては、特例子会社の公式サイトの確認やハローワークで求人を探す、もしくはエージェントを利用するなどが妥当でしょう。

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特例子会社の現状

人数の多い規模の会社になればなるほど、障害者を雇用すべき最低限の人数が増えていきます。

事業の種類によっては、障害者をどうしても雇用できないといったケースも出てくるでしょう。

以下では、特例子会社の現状について詳しく解説します。

特例子会社制度設立の背景

特例子会社制度は、「障害者雇用促進法」に定められている雇用業務制度です。
企業はさまざまな理由で障害者雇用の促進が困難な場合に「特例子会社」を設立することができます。

障害者雇用促進法では、企業は障害者の雇用率2.3%以上を達成することが国から義務付けられており、これに基づいて企業は障害者雇用を進める必要があります。
しかし、企業の規模や業種などによっては、状況によりその時点での障害者雇用率を達成することが困難なケースも少なくありません。
特例子会社制度設立は、そのような背景から生まれました。

2.3%という障害者雇用率の割合は2021年3月1日から適用されており、これは従業員43.5名に対し1人の障害者を雇用する、ということになります。

障害者の法定雇用率との関係

特例子会社制度では、親会社が障害者雇用に配慮して要件を満たした子会社を設立した場合のみ、人数分の法定雇用率に加算することができます。

つまり、特例子会社において雇用した障害者を、親会社に雇用されているものと見なして障害者雇用率を計算できるということです。

また特例子会社を設立した親会社は、一定の要件を満たすことで、その他の関係会社でも特例子会社と同様の雇用率を加算することが可能になります。

特例子会社の主な業種・職種

2012年に独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が公開した報告書を見ると、特例子会社の雇用や経営の詳細な情報について確認ができます。

調査対象の特例子会社は、清掃やビルメンテナンスなどサービス業が約50%、印刷や食料品製造などの製造業が約25%、情報通信業が約5%です。

その中で障害者が就任している主な職種はというと、事務が約60%、運搬・包装・清掃などが約55%、生産工程が約31%という結果でした。

ちなみに業務形態では、フルタイムの正社員登用をしている企業が約84%、パートタイムの正社員登用をしている企業が約12%です。また、アルバイトのフルタイム雇用企業は約45%、パートタイム雇用企業は約39%となっています。

まとめ

ここまで特例子会社の特徴などを解説してきました。

特例子会社は、親会社と障害者双方にメリットのある会社です。

会社側は、特例子会社を設立して障害者を雇用すれば、親会社で障害者を雇用する必要がなくなります。

また、特例子会社は障害者雇用を基本とする会社であり、障害者に合わせた環境を構築するため、障害者にとっても働きやすい場所です。

障害に応じて配慮された環境であれば、安心して働けるという障害者も多いでしょう。

しかし、一度障害をオープンにして働いた履歴があると、履歴で障害の有無が分かってしまうケースも多く、もしも将来障害をクローズで一般就労したいと考えている場合は慎重になる必要があります。

メリットもデメリットもある特例子会社ですが、障害があっても働きたいと考えている障害者にとっては、就労への選択肢のひとつになることは間違いないでしょう。

就労場所に悩んでいる障害者の方にとって、特例子会社について紹介したこの記事の内容がお役に立てれば幸いです。