障害者雇用の離職率は高い?退職の理由と早期離職を防ぐ対策
障害を抱えている方の中には、障害が原因で職場の人間関係や業務に馴染めず、仕事がなかなか続けられなくて悩んでいる方も多いかもしれません。
障害に配慮しながら働くには障害者雇用枠で入社するという選択肢もありますが、障害者雇用で入社した人の離職率はどうなっているのでしょうか。今回は、障害者雇用にける離職率について深掘りしてみましょう。
障害者雇用の離職率はどれくらい?
2017年に行われた独立行政法人 高齢・障害・求人者雇用支援機構の調査によると、一般企業に就職した障害者の入社1年後の離職率は以下の通りです。
- 一般求人(障害非開示):69.2%
- 一般求人(障害開示):50.1%
- 障害者求人:29.6%
- 就労継続支援A型求人:32.8%
このデータによると、障害非開示の一般求人では離職率がもっとも高く、障害者雇用の求人では離職率がもっとも低くなっていることがわかります。
また、障害別で入社1年後の離職率と障害者雇用の割合を見てみると以下のようになります。
- 発達障害者:28.5%(障害者雇用の割合:82.6%)
- 知的障害者:32.0%(障害者雇用の割合:82.3%)
- 身体障害者:39.2%(障害者雇用の割合:52.4%)
- 精神障害者:50.7%(障害者雇用の割合:51.2%)
こちらのデータから見ても、障害者雇用の割合が高いほど離職率が低く、障害者雇用の割合が低いほど離職率が高くなっていることがわかります。
ちなみに、厚生労働省が毎年発表する「雇用動向調査」によると、労働者全体における2017年の平均離職率は14.9%だということがわかっています。この数値と比較してみても、障害者の離職率が非常に高いことが見て取れるでしょう。
障害者の方が働く上で、障害について配慮してもらうことができなければ、早期退職や離職率の上昇につながってしまう可能性が高いことは否定できません。それゆえに、障害のある方が長く勤められる会社を探したい場合は、一般求人だけではなく障害者向けの求人も見ておくことが大切なのです。
障害者雇用の離職率が高くなる理由
それでは、なぜ障害者の方は離職率が高くなっているのでしょうか。
厚生労働省の平成25年度障害者雇用実態調査をもとにすると、身体障害者と精神障害者の両方で、主に以下の3つの理由が離職の要因として挙げられました。
職場の雰囲気・人間関係
もっとも多く挙げられた離職の理由が、「職場の雰囲気・人間関係」でした。とくに精神障害者では、30%以上の方がこの理由で離職していることがわかっています。
職場の雰囲気や人間関係に関しては、何も障害者だけではなく一般に離職の理由として上位に上がってくるものです。しかし、一定の配慮が求められる障害者雇用では、とくに人間関係や障害への理解度が離職率に直結しやすい傾向にあります。
「障害者雇用で入社したけれど、企業内の理解が進んでおらず職場の対応や雰囲気が悪かった」というケースは、残念ながら未だに存在します。障害者雇用で入社する際は、企業内でどこまで障害に対しての理解が進んでいるかを確認しておくことが大切です。
賃金・労働条件
障害者の離職理由として次に多いのが、「賃金や労働条件」でした。障害者の方はそうでない方に比べて仕事内容を制限されることが多く、賃金や労働条件に不満を抱きやすい傾向にあります。
厚生労働省の「平成30年度障害者雇用実態調査」の結果によると、身体障害者の平均月給は約21万円、知的障害者や精神障害者、発達障害者の平均月給は約11~12万円だということが判明しました。一方で、厚生労働省の平成30年賃金構造基本統計調査によると、全労働者の平均月給は約30万円だということがわかっています。
また、労働時間や休日に関する不満を訴える方も多いです。本来であれば障害に合わせて出勤時間や出勤日数に配慮が必要な方であっても、仕事内容によっては希望に沿った労働条件が叶わないこともあります。
このようなミスマッチを防止して一人ひとりにとって適正な賃金・労働条件の企業に転職するためには、入社前の条件すり合わせをしっかりと行うことが大切なのです。
仕事内容が合わない
企業によって障害者雇用の仕事内容は異なりますが、障害者雇用では仕事の難易度が低く設定されていることがあります。
厚生労働省の「平成30年度障害者の職業紹介状況等 」によれば、障害者の方が従事している仕事内容の中でもとくに多いのは以下の4つになります。
- 運搬・清掃・包装等の職業(34.1%)
- 事務的職業(22.1%)
- 生産工程の職業(12.2%)
- サービスの職業(12.2%)
障害者雇用で専門職・技術的職業に就く方もいますが、その割合は全体の6.7%と少ないものです。このように、多くの障害者が清掃などの軽作業や事務作業に従事しているのです。
障害者雇用で就職すれば、障害に配慮しながら無理のない範囲で働けるというメリットがあります。しかしその一方で、仕事内容が簡単でやりがいを感じなかったり、思うように稼げなくて不満を抱いてしまったりする可能性があるというデメリットも存在します。
ご自身に合ったレベルの求人を自分の力だけで探すことは非常に難しいことです。転職支援サービスなども活用しながら、より多くの求人を比較して自分に合った求人を見つけることが転職成功への近道になります。
障害者雇用の転職で離職率を下げるためには
それでは、障害者雇用を考えている方が早期離職を避けるにはどうしたらいいのでしょうか。
障害者雇用での応募を考えているのであれば、最初に希望の仕事内容や条件をしっかりと洗い出しておくことが大切です。希望する業務や労働条件はもちろんのこと、自分には難しい業務についてもきちんと明確にしておき、面接などで説明できるようにしておきましょう。
転職活動の際は、自分から条件を提示しにくいかもしれません。しかし、できることとできないこと、譲れない条件をしっかりと話し合っておかなければ、早期離職で再び転職活動をすることになってしまいます。「早く転職したいから」と企業の条件を丸呑みせず、希望や配慮してほしい点はしっかりと伝えるようにしましょう。
転職エージェントなら障害者雇用の早期離職を防げる
障害者雇用や一般求人で採用される障害者の離職率は高く、人間関係や賃金、仕事内容に不満を抱いて退職しやすい傾向にあります。
早期離職を防ぐには、「企業に希望の条件や配慮についてしっかりと伝えること」がカギとなります。しかし、転職・就職活動の中で条件を話し合うことに抵抗感がある方が多いのも事実です。また、そもそも自分に合った求人が見つからず、転職活動が進まない方もいるかもしれません。
そういったお悩みを抱えている場合は、障害者雇用専門の転職エージェントの利用がおすすめです。転職エージェントを利用すれば、条件の交渉からあなたに合った求人探しまで全て代行してもらうことが可能です。
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