障害者雇用促進法とは?最近の改正を踏まえ、事業主の義務などを解説

2023年3月17日

「障害者雇用促進法」という法律をご存知でしょうか。

身体や知的機能、精神などに何らかの障害を抱える人々の職業的自立をサポートする取り組みを通じて、障害があっても能力や特性に応じて安定的に働けるようになることを目的とする法律です。

この記事では、障害者雇用促進法の概説から、事業主に課せられる義務や障害者に対する支援機関、さらには近時の改正ポイントまでをまとめて解説していきます。

障害者雇用促進法とは

障害者雇用促進法とは、障害の有無に関係なくすべての国民が個人として等しく尊重される社会の実現を目指す、「ノーマライゼーション」の理念を就労面において達成していくためのさまざまな取り組みを法的に根拠づける仕組みに他なりません。以下、対象となる障害者や具体的な制度、罰則についてみていきましょう。

目的・理念

障害者雇用促進法は、障害者の職業的自立を促進し職業的安定を図ることを目的としています。
この法律に一貫しているのは、障害者が社会の一員として能力を発揮して職業生活を営めるように社会の環境整備を進めていこうとする考え方です。
ノーマライゼーションの理念がその背景にあります。

対象となる障害者

障害者雇用促進法の条文によれば、対象となる障害者は「身体障害や知的障害、発達障害を含む精神障害、その他の心身の機能の障害により、長期にわたり職業生活に相当の制限を受けている者、あるいは職業生活を営むのが著しく困難な者」と定義づけられています。

 

この条文における「その他の心身機能の障害者」について、明確な該当基準は提示されていません。「長期にわたり職業生活に困難が生じている」ことを把握するためには、障害のレベルや特性、環境などを考慮する必要があり、法律で画一的な判断基準を示すのが適当でないことによります。

 

そのため、障害者手帳を取得できないことで発達障害のグレーゾーンにあたる方のように必要とする支援や配慮が受けられなかったり、次に述べる法定雇用率の算定対象から外れることで就活や就労に際して不利益を被ったりするなどの問題点が指摘されています。

 

法の趣旨に鑑みれば、手帳を取得できる障害者だけでなく、手帳を持たない障害者やこうした障害者の採用に前向きな企業に対しても相応の支援が行き渡るような仕組みにブラッシュアップすることが求められていると言えるでしょう。

障害者雇用率制度

障害者雇用率制度とは、民間企業や国・地方公共団体に対して、障害者雇用率に相当する人数以上の障害者の雇用を義務付ける制度を言います。

 

確かに以前までは、自由競争のみに基づいた雇用によって障害を持つ人が不利になるケースが多々ありました。しかし、障害者雇用率制度が制定されてからは、障害を原因とする社会的格差を生まないように、障害の有無に関係なく誰もが同様の雇用機会を確保することができ、障害に基づく社会的格差が生まれないようにしようとする動きが広く社会に浸透しつつあります。

 

なお、障害者雇用促進法の対象者は幅広い一方で、「障害者雇用率制度」の算定対象となるのは、障害者手帳を持っている障害者に限定されるのは前述の通りです。
これまで、民間企業の法定雇用率については2.2%となっていましたが、2021年3月に2.3%に引き上げられています。また、義務の対象となる企業の範囲も従業員数45.5人以上から、43.5人以上に広げられました。

 

2021年の民間企業の雇用障害者数と実雇用率がともに過去最高を更新する一方で、法定雇用率引き上げの影響もあり、法定雇用率達成企業の割合は50%を下回る結果となりました。
全体としてみれば雇用の伸びが堅調ではあるものの、業種や従業員規模によっては法定雇用率達成に向けたより積極的な取り組みが早急に求められます。

障害者雇用納付金制度

障害者雇用納付金制度とは、前述した法定雇用率を達成できていない事業主から、「納付金」を徴収する制度のことを指します。

 

ただし、徴収するとは言え、納付金は「罰金」ではありません。雇用義務を果たしている企業と果たしていない企業との間に生まれる経済的負担を軽減させるためのものになります。障害がある人の雇用にあたって、環境整備や特別な雇用管理が必要となるのは珍しいことではないのです。

 

納付金の徴収対象となるのは常時雇用労働者数が101人以上の事業主であり、国や地方公共団体、教育委員会は対象外です。
徴収した納付金は、法定雇用率を超えて対象障害者を雇用する事業主や納付金制度の対象外である中小企業が一定数を超える対象障害者を雇用した場合に支給される障害者雇用調整金や報奨金、あるいは各種助成金の原資として活用されます。

障害者雇用促進法の罰則

分け隔てない雇用を実現するため、障害者雇用促進法には罰則も定められています。対象となる事業主が雇用状況の毎年の報告を怠ったり、虚偽の報告をしたりした場合には30万円以下の罰金が科されます。

 

また、先程触れたように、法定雇用率を満たさない事業主に対しては不足1人につき50,000円の納付金が徴収されるほか、障害者の雇用率が著しく低い事業主に対しては、公共職業安定所から障害者の雇用に関する計画書の提出命令が出されます。

 

それでもなお改善が見込めない場合、労働局や厚生労働省からの指導が入り、企業名が公表されることもあります。企業名の公表は社会的信用の失墜という深刻なダメージをもたらしかねないため、指導が入ったら速やかに改善に努めることが大切です。

 

事業主に課せられる義務とは

1960年施行の「身体障害者雇用促進法」をルーツとする障害者雇用促進法は、改正の度に対象範囲の拡大や保護内容の拡充を図りながら、今日に至ります。
ここでは、事業主に課せられる義務について説明します。

精神障害者の雇用義務

以前の雇用義務の対象者には、精神障害者は含まれていませんでした。しかし、発達障害を含むさまざまな精神障害が認知されるようになったこともあり、2018年の法改正によって精神障害者も雇用義務の対象に含まれるようになりました。

 

今後のさらなる法定雇用率の引き上げも見込まれる中で、新たに算定式に加えられた精神障害者の雇用をいかにして増やしていけるかが、事業主側が取り組むべき重要課題の1つとなりつつあります。

差別禁止

次に述べる「合理的配慮」とともに、2016年より施行されている項目です。事業主に対し、労働者の募集や採用の際に障害を理由に採用を拒否したり、賃金や待遇面で障害者に不利な条件を設定したりなどの。不当な差別的扱いをすることを禁じています。

 

ただし、障害のある人に対して、障害のない人と異なる取り扱いを行ったときであっても、その扱いに合理的な理由が認められる場合や差別を解消する目的であえて障害者を有利に取り扱う場合などは禁止の対象とはなりません。
あくまで合理的な理由なくして障害者を不当に扱うケースに限り認めないものとする法の趣旨については、よく理解しておく必要があるでしょう。

合理的配慮

合理的配慮とは、一般の人と同様に障害を持つ人が安定した生活を行えるように、教育や就労、その他の場面において個人の特性や環境に対応した変更や調整を実施していくことを指します。

 

2016年施行の改正法では、事業主に対して、職場で働く障害者への合理的配慮の提供を法的に義務付けています。努力義務でなくして法的義務としているのは、職場における合理的配慮の提供を謳う障害者権利条約の趣旨を踏まえてのことです。

また、合理的配慮の提供が障害者の自立や社会参加を実効あるものにする上で欠かせないものであることや、一般に雇用契約において事業主の指揮命令下に置かれる労働者の中でも、とりわけ障害者は法的に保護すべき必要性が高いことなども理由に挙げられるでしょう。

 

事業主は、労働者の募集・採用の際に障害がある人に対して健常者同様の機会を提供するために、障害のある人からの申し出があった場合には相応の配慮を提供しなければなりません。また、採用後も、障害特性に応じた対応や配慮を定め、ほかの従業員にも周知する必要があります。

 

これらの対応や支援が事業側に対して過度な負担となる場合、合理的配慮の提供義務は発生しません。ただし、過度の負担がないのに事業主が対応や支援を行わない場合は差別とみなされます。

労働者の雇用に関する状況の報告

事業者は、障害者の雇用状況の確認や雇用政策を有効なものにしていくことなどを目的に、毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況をハローワークに報告しなければなりません。ハローワークは、この報告をもとに障害者雇用率制度の達成状況を確認します。

 

労働者数の計算と同様、20時間未満の短時間労働者は0.5人で計算し、重度身体障害者、および重度知的障害者は2人として計算するなどの方法で、実雇用率の計算基礎となる「障害者数」を算出します。

 

なお、雇用率が低い企業においては雇用状況を向上させるための計画の作成、提出、勧告などを受けるのは既にみたとおりです。

苦情処理や紛争解決の援助

事業主は、障害を持つ労働者からの相談に適切に対応するため、相談窓口を設けるなどして相談体制を整備しなければなりません。合理的配慮の提供や差別禁止などに関する障害者からの苦情を事業所内において自主的に解決することが、努力義務として課されているのです。

 

もし、障害のある労働者と事業主との話し合いによって自主的な解決が難しくなった場合には、都道府県労働局の職業安定部で実施される2種類の紛争解決援助制度の利用が可能です。
簡便な手続きによる迅速な解決を望む場合には、都道府県労働局長による助言や指導、勧告を受けるとよいでしょう。
一方で、より精緻な裁定を要するケースでは、弁護士をはじめとする労働問題に精通した専門家で構成される障害者雇用調停会議による調停を選ぶのが確実です。

事業者に支給される助成金

障害者雇用を促進するために、企業を支援する助成金が数多く用意されています。
障害者雇用促進法に基づく助成金として、障害者雇用調整金と障害者雇用報奨金が挙げられます。これらの原資となっているのは障害者雇用納付金です。

他の法律とともに障害者雇用促進法が密接に関わっている助成金もあわせてご紹介します。

障害者雇用調整金

常時雇用している労働者数が100人を超える事業主で、法定障害者雇用率を超えて障害者を雇用している場合に、超えている障害者数に応じて1人につき月額27,000円の障害者雇用調整金が支給されます。

障害者雇用報奨金

常時雇用労働者数が100人以下の事業主で、一定数を超えて障害者を雇用している場合に、超えている障害者数に応じて1人につき月額21,000円の障害者雇用報奨金が支給されます。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

障害者などの就職困難者をハローワークなどの紹介を通じて、継続雇用する労働者(雇用保険一般被保険者)として雇用する事業主に、特定求職者雇用開発助成金が支給されます。

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)

障害者トライアル雇用は、職業適性や業務遂行可能性の見極めを可能にすることにより、障害者の早期就職実現や雇用機会創出を図る制度です。
その目的でハローワークなどの紹介を通じて一定期間の雇用をした事業主に、トライアル雇用助成金が支給されます。

人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)

障害者の職業能力を開発・向上させるため、一定の教育訓練を継続的に行う施設を設置・運営する(職業能力開発訓練事業)事業主に、その費用の一部として人材開発支援助成金が支給されます。

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)

  • 障害のある有期雇用労働者を正規雇用労働者または無期雇用労働者に転換する措置
  • 障害のある無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する措置
    のいずれかを行った事業主に、キャリアアップ助成金が支給されます。

 

障害者に対する就労支援措置と支援機関

障害者に対する就労支援措置としては、障害者雇用促進法に基づく職業リハビリテーション(職リハ)の仕組みが整備されています。ここでは、職リハの概要と代表的な支援機関3つについて解説していきます。

職業リハビリテーション

「職業リハビリテーション」とは、さまざまな就労支援措置の実施により、障害者の職業を通じた社会参加やキャリア形成、経済的自立を促す取り組みを指します。

具体的には、職業評価・職業指導・職業訓練・職業紹介などのサービスがあります。

職業評価

希望する職リハを実施する機関に入所する前に、職業訓練の受講に必要な基礎学力や適性があるか、健康状態に問題がないかなどがチェックされ、就職に向けた要望などを確認のうえで入所の可否が総合的に判断されます。そして、入所が決まった場合には、評価の際に取得した職業能力等の情報をもとに各人に適した職業リハビリテーション計画が策定されるという流れになります。

職業指導

職業評価で得られた情報をもとに、本人の資質に適した訓練を行うことです。自身の体調のコントロール方法を習得することから着手し、プログラムが進行するにつれて仕事で求められるスキルを身につけるための「職業訓練」へと移行していきます。

職業紹介

職業評価と職業訓練を受けた人が、自分の持っている障害や病気の特性を理解し、就労の際に求められるスキルを習得した上で自分に適した職業を紹介してもらうことです。面接のシミュレーションや必要書類の添削なども受けられます。

障害者職業センター

「障害者職業センター」とは、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションを提供している施設のことです。障害者職業センター、広域障害者職業センター、地域障害者職業センターの3種類があり、全国の都道府県に最低1か所ずつ設置されています。運営元は独立行政法人高齢・障害者・求職者雇用支援機構です。

 

ハローワークや企業、医療・福祉などと連携しながら、障害者一人ひとりに適したさまざまな職業リハビリテーション、事業主に対する専門的な助言や支援、さらには地域関連機関への助言や就業支援に関わる人材育成のための研修などが行われます。

 

なお、障害者職業センターで受けられる支援は専門性が高く、職員には厚生労働省が定めた研修や試験を修了した障害者職業カウンセラーがいるのに加え、ジョブコーチや相談支援専門員も配置しています。

 

障害者就業・生活支援センター

「障害者就業・生活支援センター」は、障害者雇用促進法に基いて創設された施設で、全国の公益法人・福祉NPO法人事業所・社会福祉法人によって運営されています。利用対象は、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳、身体障害者手帳のいずれかを持ち、一般就労を希望するか、すでに一般就労していて支援が必要な人です。

 

障害者就業・生活支援センターでは、対象となる障害者に対する指導・助言や関係機関との連絡調整等を通じて、就職や職場への定着に向けた支援が行われます。
同時に、金銭や健康の管理などの生活面に関する支援や相談対応も行いつつ、自立した職業生活を送るうえで欠かせないマインドの醸成や生活スキルの獲得が目指されます。

そのため、生活支援センターのなかには、レクリエーション活動を実施したり、フリースペースを提供したりといった「場の提供」や、ランドリーなどの生活サービスの提供を行っているところもあります。

ハローワーク

「ハローワーク」は正式には「公共職業安定所(職安)」といい、障害のある人が仕事を探すだけでなく、働く上でのさまざまなサポートを行っています。

 

具体的には、障害者のために専門の職員・相談員を配置したうえで、ケースワーク方式により、求職の申込みから就職後のアフターケアまで一貫させたサービスを行っています。障害者枠の求人のほか、一般求人に応募することもできます。
そのほかにも、個別でその人に適した求人を開拓したり、面接への同行をしたりといった、細かな配慮が特徴です。

 

さまざまな企業を訪問しながら、障害者雇用の啓蒙活動を実施したり、求職者に公共職業訓練を受けるように取りなしたりといった活動も行っています。加えて、障害のある人を対象とした就職説明会の実施もしています。
開催日時などの詳細は、開催地の各都道府県の労働局のホームページで案内されています。

 

また、ハローワークではインターネットサービスも利用可能です。インターネットサービスでは、一般求人だけでなく障害のある方用の求人も検索できます。求職登録をしていれば、ハローワークに行かなくても求人応募できるものもあります。

 

障害者雇用促進法の近年における改正ポイント

ここまで、障害者雇用促進法の内容などについて詳しくご紹介していきました。同法は、障害者の職業の安定を図るため、「法定雇用率引き上げ」をはじめとするさまざまな改正を重ねてきているのはすでにみた通りです。

そこで、ここでは近年行われた重要な改正ポイントとして、2019年に成立した障害者雇用促進法の改正に基づき2020年4月1日より施行されている「事業主に対する特例給付金制度」と「優良事業主に対する認定制度」の2つの措置をご紹介します。

短時間労働者に対して特例給付金を支給する

かつて、週所定労働時間が20時間を下回る雇用障害者は雇用率制度の対象外であり、事業主に対する雇用調整金などの支援もありませんでした。
その一方で、障害の特性から週20時間を超えた勤務ができない人も存在していたため、法改正により週所定労働時間が10時間以上20時間未満の短時間労働障害者(ただし実労働時間10時間以上)を雇用する事業主に対して、特例給付金が支給されるようになったのです。

 

これにより、短時間であれば働くことのできる障害者にも雇用機会をもたらすことが期待されています。ただし、雇用率制度の対象となる常用労働者は「週20時間以上の労働者」であることは維持されるため、特例給付金の支給対象となる雇用障害者の数は法定雇用率には反映されません。

優良事業主を認定する

「障がい者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度」、通称「もにす認定制度」は、中小企業を対象にしたもので、法改正の際に新たに創設されました。「共に進む(ともにすすむ)」という言葉を由来とし、企業と障害者とが共に明るい未来や社会に進んでいこうという期待が込められています。条件を満たした常用労働者300名以下の中小企業は、申請することで厚生労働大臣より「優良な企業である」と認定されます。

 

現状では障害者雇用率を満たさない中小企業が少なくありませんが、この認定制度の創設によって、障害者雇用が促進されることが期待されています。

 

もし認定制度に認定されれば、自社の商品・広告などに障害者雇用に関して優良な中小事業主である旨の認定マークが使用でき、広く社外に向けたダイバーシティや働き方改革などの広報効果をもたらすでしょう。また、日本政策金融公庫による働き方改革推進支援資金の低利融資の対象になることから、障害者雇用の推進にかかる設備投資や長期運転資金の調達が容易になるメリットも享受できます。

 

まとめ

障害がある人にとり働きやすい社会をつくることは、障害者だけでなく、すべての労働者の働き方の多様化などの面においても重要なことです。今後も状況に応じて障害者雇用促進法は改正され、障害のある人がより働きやすい社会へと変わっていくことが予想されます。

 

事業主には、より一層障害者を積極的に雇用することが求められていくでしょう。