アンガーマネジメントの実践方法!怒りのメカニズムを知り正しく対処する

2023年3月14日

あなたは怒りに任せて誰かを攻撃したことはありますか。
子供や若者が激しく感情を表現するのは珍しいことではありませんが、大人になればそのように激しい怒りの感情を持ちはしても、それを人に向けることは控えたいものです。

怒りの感情に身を任せることは、人間関係や仕事上でのトラブルに繋がり、大切な信頼関係を失う原因にもなります。この「怒り」をコントロールする術として近年注目を集めている技法が「アンガーマネジメント」です。

本記事では、怒りのメカニズムを知り、正しく対処するアンガーマネジメントの基礎知識や実践方法などについて解説します。怒りの感情をコントロールできているかどうかについて、この機会に考えてみましょう。

アンガーマネジメントと怒りの基礎知識

人はなぜ怒るのでしょうか。激しい怒りの感情が沸き起こるときには、必ずその怒りを湧き起こらせる原因となる出来事が発生しています。

ですが、その出来事がなぜ怒りという感情に繋がったのか、冷静に説明できる人は多くはないでしょう。怒りという感情のメカニズムを知ることは、怒りをコントロールする術を学ぶことに繋がります。

アンガーマネジメントは以上のような考え方が元になっています。
まずはアンガーマネジメントの概要や、怒りという感情に関する基礎知識を解説します。

アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントとは、怒りの感情とうまく付き合うための心理トレーニングです。元々この概念は、1970年代に犯罪者の矯正プログラムとして発案されました。

その後、人の行動に関する心理学の研究が進むにつれて、より多くの方を対象とした感情コントロールの技法として注目されるようになったのです。現代では、企業研修や医療福祉、カウンセリング、アスリートのメンタルトレーニングなどの分野でも広く活用されています。

アンガーマネジメントはその名称から、しばしば怒りを抑える方法と誤認されがちですが、アンガーマネジメント本来の目的は「必要のある怒りを上手く表出し、必要のない怒りは抑えるための線引きをする」ことです。

アンガーマネジメントを正しく実践することで、怒りの感情とうまく付き合えるようになると期待されています。

アンガーマネジメントが注目される背景

アンガーマネジメントの技法が注目されるようになった背景には、多様性の広がりという社会情勢と、ハラスメントの防止策という一面があります。

「他人のライフスタイルや価値観を認めよう」という多様性の考え方は、世界的に広まりを見せています。しかしながら、自分の価値観だけを信じ、合わないものを受け入れなかったり、排除しようとする考え方をもつ人もまだまだ多くいるのが現状です。

また、そうした価値観の相違がSNSなどを通じたプライベートのトラブルにとどまらず、職場で起きることもあるでしょう。そこで怒りを顕わにしてしまえば、そのままパワハラ・セクハラ・マタハラ等のハラスメントに直結する可能性が高くなります。

そこで、怒りをマネジメントし上手に付き合うことで、こうした対人トラブルやハラスメントを未然に防ぐことが期待されています。これがアンガーマネジメントが注目される背景のひとつとなっているのです。

怒りのメカニズムと性質

怒りという感情は、誰しも持ち合わせている自然な感情です。
そして、これは人間だけのものではなく、他の哺乳類や爬虫類といった動物にも存在する、極めて原始的な感情です。

動物は危機が迫った際に一瞬で判断し、行動に移さなければなりません。
怒ることでアドレナリンを大量に分泌し、脈拍を速くして血流を増やし、危機を脱するための行動(闘争・逃走)やその判断を行っています。

このように、怒りは“防衛のための感情”ともいえます。
私たち人間は野生の動物と異なり、日常的に命が脅かされることはありませんが、その代わりに自分の立場や価値観、考え方など、複雑な精神構造を持ち、これらを守りたいと思っています。
そして、これらが侵害されたとき、命を守るために怒る動物と同じ原理で「怒り」という強い感情が沸き起こるのです。

また、怒りは第二次感情とも呼ばれています。第二次感情とは、第一次感情を不適切に表現することにより生じる感情です。

第一次感情とは、不安や苦痛、寂しさ、虚しさ、罪悪感などのネガティブな感情を指します。怒りは、第一次感情を上手く自分の中で昇華できず、周りにも伝えられずに溜め込んでしまった状態が爆発した結果沸き起こる二次的な感情なのです。

そのため、多くの場合、怒りという感情の裏には「わかってほしい」という想いが隠れていることがあります。第一次感情の時点でネガティブな感情を上手く解消したり、表現できていれば、怒りという感情は生じにくいといえるでしょう。

アンガーマネジメントの基本的な考え方では、この「第一次感情に気づくこと」が重要だといわれています。

怒りの種類

さて、ここまでアンガーマネジメントの概要についてご紹介してきましたが、そもそも怒りの感情にはいくつかの種類があることをご存知でしょうか。

怒りには「頻度が高い怒り」「持続性がある怒り」「強度が強い怒り」「攻撃性がある怒り」の4種類あり、それぞれに特徴があります。

頻度が高い怒りとは、一日中イライラしている状態です。日常の些細な出来事にもすぐにカチンときたり、舌打ちをしたりするような人は頻度が高い怒りに支配されている状態といえるでしょう。なお、頻度の高い怒りは、せっかちな人ほど陥りやすいとされています。

持続性がある怒りとは、怒りの感情が持続する状態です。
昔の出来事をいつまでも覚えていて、ことあるごとに引き合いに出して怒りをぶつける人に出会ったことはないでしょうか。持続性のある怒りをもつ人は、過去の出来事と現在の出来事を関連付けて怒りの感情を生じさせます。本人にとっては過去の出来事ではなく今まさに起こっていることのように思えているのです。

強度が強い怒りとは、些細なことでも激昂(げっこう)する状態です。
大声を出して怒る、あからさまに不機嫌な態度を取るなど、激しい感情を隠さずに、周囲から見て明らかに怒っていることがわかるような人は強度が強い怒りに当てはまります。

攻撃性のある怒りは、何かに対して攻撃的になる怒りです。
人やモノに当たったり、自分自身を傷つけたりすることで怒りを発散させようとします。

これらの4つの「怒り」は、攻撃対象によってさらに3種類に細分化されます。

1つ目は「自分に向ける怒り」です。怒りの感情を相手に向けることができずに自分の中に溜め込む状態を指します。

2つ目は「他人に向ける怒り」です。これは、怒りを他人にぶつけて人を追い詰めたり、無関係な人に八つ当たりをしたりする状態を指します。

3つ目は「モノに向ける怒り」です。怒りに任せてモノを壊したり、ドアを思い切り閉めたりする状態を指します。これらの3種類の対象をもった怒りは、いずれか1つに向かうこともありますが、組み合わせて生じるケースもあります。

怒りの持続時間

怒りの感情が生じると、大脳の一部が活発に働きアドレナリンが全身を巡ると言われています。同時に、前頭葉では理性的な対処を行おうとする作用が働きます。

しかし、怒りの感情が生じてから前頭葉の判断が届くまでタイムラグがあります。
このタイムラグは約6秒であると考えられています。

つまり、「怒りを感じても約6秒間抑えることができれば理性的な対処ができるのではないか」というのがアンガーマネジメントの考え方です。

怒りの悪影響

アンガーマネジメントの必要性を解説する前に、怒りによる悪影響を認識しましょう。

怒ることは、周囲だけでなく自分にとっても大きなストレスになります。
頻度の高い怒りや持続性のある怒りが生じやすい人は、常にストレスに晒されていると言えるでしょう。

また、不適切な怒りを相手にぶつけると、職場環境や人間関係が悪化してコミュニケーションの不和が生じます。その結果、仕事の生産性が低下するなどの悪影響を及ぼすでしょう。また、攻撃性のある怒りがモノに向かうことで物的損失はもちろん、自身の怪我にも繋がりかねません。

このように、不適切な怒りは、さまざまな損失を生むネガティブな感情だと言えます。

アンガーマネジメントの必要性

職場でいつも上司がイライラしていると、部下は常にびくびくと緊張したり、顔色をうかがいながら仕事をしたりすることを余儀なくされ、仕事のパフォーマンスが下がってしまいます。また、怒りがすぐに相手に向かう状況では冷静な対話もできません。

このような職場環境では、社員同士の連携ができなかったり、社員の育成が疎かになったり、社員が向上心を持ちにくくなったりします。

一方で、場面に応じた適切な怒りは職場にほどよい緊張感をもたらす場合もあります。業務効率化や生産性の向上が求められるビジネスシーンにおいても、アンガーマネジメントは非常に重要とされているのです。

アンガーマネジメントの効果

アンガーマネジメントを正しく実践すると、職場や人間関係においてさまざまな効果を得ることができます。
ネガティブな感情に支配されることなく穏やかな気持ちで仕事に取り組むことができるのはもちろん、相手に理解してほしいことを適切に伝え、意思疎通が円滑に進むことで、職場には良い感情のサイクルが生まれます。

その結果、生産性の向上が期待できるだけでなく、もしトラブルが生じたとしても感情に任せるのではなく、理性的な対応によって適切な問題解決ができるようになるでしょう。

 

怒りのタイプを特定する

これまで、怒りには4つの種類があると解説しましたが、種類とは別に怒りには6つのタイプがあります。

6つの怒りのタイプは、日本アンガーマネジメント協会が公表する「アンガーマネジメント診断」によって割り出されます。ここでは、アンガーマネジメント診断についてご紹介するとともに、各タイプの特徴と対策について解説します。

アンガーマネジメント診断

アンガーマネジメントを実践するにあたり、自分の怒りのタイプを理解することが重要です。アンガーマネジメント診断によって自分の怒りのタイプを割り出し、タイプに応じた対策を実践しましょう。

アンガーマネジメント診断

下記の12の質問に対してどう思うかに応じて、以下の点数を割り振っていきましょう。

全くそう思わない=1点
そう思わない=2点
どちらかと言えばそう思わない=3点
どちらかと言えばそう思う=4点
そう思う=5点
すごくそう思う=6点

Q1.世の中には尊重すべき規律があり、人はそれに従うべきだ。
Q2.ものごとは納得のいくまでつきつめたいと思う。
Q3.私は自分に自信がある。
Q4.リーダー的な役割が自分の性に合っていると思う。
Q5.人の気持ちを間違って理解していたことがよくある。
Q6.簡単には解決できない強いコンプレックスがある。
Q7.たとえ小さな不正でも見逃されるべきではないと思う。
Q8.好き嫌いがはっきりしている方だ。
Q9.自分はもっと評価されても良いと思う。
Q10.言いたいことは、はっきりと主張すべきだ。
Q11.自分で決めたルールを大事にしている。
Q12.人の言うことをそのまま素直に聞くのが苦手だ。
引用:日本アンガーマネジメント協会(https://www.angermanagement.jp/am_shindan/

 

次に、各質問の点数をもとに以下の組み合わせで合計点数を算出しましょう。

Q1+Q7=
Q2+Q8=
Q3+Q9=
Q4+Q10=
Q5+Q11=
Q6+Q12=

この中で、合計点数が最も高いものがあなたの怒りのタイプです。
・Q1とQ7の合計点数が最も高い方は「公明正大タイプ」
・Q2とQ8の合計点数が最も高い方は「博学多才タイプ」
・Q3とQ9の合計点数が最も高い方は「威風堂々タイプ」
・Q4とQ10の合計点数最も高い方は「外柔内剛タイプ」
・Q5とQ11の合計点数が最も高い方は「用心堅タイプ」
・Q6とQ12の合計点が最も高い方は「天真爛漫タイプ」

ご自身がどのタイプかわかったら、当てはまるタイプの特徴と対策を確認しましょう。

公明正大タイプの特徴と対策

公明正大タイプの人は、正義感が強いという特徴があります。
このタイプは、自分の価値観において正しいことを重要視します。

したがって、怒りのトリガーは「正義」や「道徳」「倫理」「マナー」「規約的態度」などがあげられるでしょう。正義感が強いことは、組織の規律を守るために有用です。

しかし、物事によっては必ずしもルール通りではなく、その人の正義に反する状況も発生します。このようなとき独りよがりになってしまったり、その状況を許せなくなって怒りが湧き上がることがあります。

対処法は、自分の価値観と他人の価値観を切り離して考えることです。
自分の正しさを相手に押し付けずに、他人の考え方も受け入れる寛容さを身につけましょう。

博学多才タイプの特徴と対策

博学多才タイプの人は、何事にも白黒つけたがる両極端な考え方をもつという特徴があります。加えて完璧主義でもあるこのタイプは、グレーゾーンで物事を考えることが苦手な傾向にあります。

したがって、このタイプの怒りのトリガーは「相手が曖昧な回答を続けること」などが代表的です。

対処法は、グレーな部分を許容することです。世の中は必ずしも白黒付けられる状況だけではありません。柔軟な思考を持ち、どうしても発生してしまうグレーな状況や、グレーを許容できる価値観を持つ人への理解を深めることからはじめてみましょう。

威風堂々タイプの特徴と対策

威風堂々タイプの人は、自分に自信がありプライドが高いという特徴があります。
言い換えれば、自己承認欲求の強い人です。

怒りのトリガーとして「邪険に扱われること」や「低い評価を受けること」などが挙げられます。このとき本人は「否定された」と受け取り、ある種の自己防衛として怒りの感情が生じます。

対処法は、受け取り方を変えることです。たとえ他人に低い評価をされたとしても、それは自分自身の評価が下がることに直結しません。自信やプライドの軸を他人からの評価ではなく自己評価におくことで、否定されたと感じる機会を減らすことができるでしょう。

外柔内剛タイプの特徴と対策

外柔内剛タイプの人は、頑固で他人の意見を聞き入れないという特徴があります。
このタイプの人は、自分なりのルールや意見、信念を持っています。堅実ですが、ルールに固執することは不安な気持ちの裏返しとも言えるでしょう。

したがって、怒りのトリガーは、「自分が決めたルールとは異なる方向に物事が進むこと」や「信念に反する出来事が起こること」があげられます。

対処法は、他人も独自のルールを持っていることを理解することです。
そして、相手の行動や意見などを聞き入れる許容範囲を広げましょう。相手にも自分と同じく、独自のルールや許容範囲がある、ということを認めてあげるのが重要です。

 

用心堅固タイプの特徴と対策

用心堅固タイプの人は、石橋を叩いて渡るように慎重に物事を考えるという特徴があります。加えて、パーソナルスペースを人一倍意識しており、人に心を開きにくいという性質もあります。

また、心理的にも他人との距離をおく傾向があるため、人を観察することが苦手です。
そのため、人に対する思い込みが強いケースがしばしば見られます。

したがって、怒りのトリガーは、「行動力のある人を相手にすること」や「思い込みにより生じる妬みの感情」などがあげられます。

対処法は、相手と本音で話し、他人への思い込みをできる限り解消することです。
本音で話すこと自体に不安を覚えるかもしれませんが、それにより自分の慎重に動きたいという思いを理解してもらえる可能性もあります。また、コミュニケーション不足による双方の誤解が解けることも期待できます。

 

天真爛漫タイプの特徴と対策

天真爛漫タイプの人は、自分の気持ちを正直に伝えられ、かつ行動力があるという特徴があります。このタイプの人は、他者との境界線を上手く引けません。自分だけでなく相手にも自分と同等の行動力を求める傾向にあります。

したがって、「じれったい人や行動しない人を相手にすること」が怒りのトリガーになる可能性があります。対処法は、必要以上に相手を変えようとしないことです。

行動しない人にも本人なりの理由があるため、まずは理由を聞いて相手の気持ちを推し量ることが大切です。自分の気持ちを伝えることだけに専念しすぎず、相手を理解した上で動くことで、行動力の高さをプラスに活かすことができるでしょう。

すぐできる!8つのアンガーマネジメント実践法

アンガーマネジメントでは一次感情に気づくことや自身の怒りのタイプを知り適切な対処法をとることが有効です。

しかし、知識があるだけでは実際に怒りが沸き起こる状況に直面した際に、適切な怒りのコントロールは難しいかもしれません。ここからは、すぐにできるアンガーマネジメント実践法をご紹介します。

まずは6秒待ってみる

怒りの感情が生じたとき、前頭葉が介入し理性的な思考ができるまでのタイムラグが約6秒です。約6秒間は自己コントロールが難しい状態が続きます。

そのため、感情的になったときは、行動を起こす前に約6秒待ちましょう。
約6秒間耐えることができれば、怒りに支配されることなく冷静に対処できるようになります。

深呼吸をする

怒りの感情が生じたときに、深呼吸をすることも効果的です。
人は怒りの感情が生じると呼吸が早く、また浅くなる傾向があります。

これは、自律神経が乱れて交感神経が活発になることが要因だと言われています。
野生動物であれば交感神経が活発になることで判断を早め、生存のために役立てることができますが、人間の場合はこのような状態に陥ると情緒不安定になり、イライラした気持ちになります。

深呼吸は、この状態を意識的に治め、自律神経を整えるために効果的とされます。感情的になった場合は、2~3回深呼吸をしてリラックスすることを心がけましょう。

100から数を数える

冷静になるために100から降順に3つ飛びで数を数えることも効果的です。
アンガーマネジメントでは、このテクニックをカウントバックと呼びます。

反射的に怒りを爆発させないために、あえて数えにくい方法をとるのがポイントです。100、97、94、91…と引き算をするように数えてください。なお、最後まで数える必要はありません。

この方法の本質は、数を数えることそのものではなく、約6秒の時間を稼ぐことです。そのため、英語を使うなどオリジナルの数え方を用いても良いでしょう。

魔法の言葉を用意しておく

事前に魔法の言葉(マントラ)を用意しておくことも効果的です。
アンガーマネジメントではこのテクニックを「コーピングマントラ」と呼びます。
マントラは、自分を落ち着かせるために適したものを用意しましょう。

アンガーマネジメントでは、相手を罵倒するようなマントラは怒りを助長するため好ましくないとしています。

効果的なマントラの例として、「大丈夫」「いい勉強になる」「なんとかなる」などの肯定的なものが挙げられます。怒りの感情が生じたら、頭の中でマントラを唱えながら約6秒間待ちましょう。

アンガーログをつける

アンガーログをつけることは、アンガーマネジメントの基本であり最も重要なテクニックです。アンガーログは、怒りの感情が生じたときに状況などを記録するものです。

具体的な内容として、怒りを感じたときの時間や場所、出来事、思ったこと、怒りの強さなどが挙げられます。アンガーログは、怒りを感じたときにできるだけその場で直感的に記録するのがポイントです。

記録したアンガーログを分析することにより、自分の怒りの傾向やパターンを把握でき、効果的な対処法に繋げられます。

許容範囲を広げてみる

私たちが怒る要因の一つとして「~すべき」あるいは「~すべきではない」という考え方が挙げられます。ほかにも、「当たり前」や「常識」「普通」という考え方に固執している場合もあるでしょう。

これらをアンガーマネジメントでは「コアビリーフ」と呼びます。

コアビリーフは、それまで自分が築き上げてきた価値観であり、許容範囲のゾーン分けと言い換えることもできます。
コアビリーフには、許せる・ある程度許せる・許せないという3つのゾーンが存在します。許せないゾーンが広い方は、それだけ怒りが生じやすいと言えます。反対に、許せるゾーンが広ければ怒りが生じにくくなります。

まずは許せるゾーンと許せないゾーンの境界線をはっきりさせることで、怒る必要のないことと、怒る必要のあることを明確に分けることができます。

自分で変えられないことは手放す

物事には自らの意思で変えられることと、変えられないことがあります。
例えば、他人の性格や過去の出来事そのものは変えられませんが、他人の行動や出来事に対する解釈は変えられる余地があります。

許せないと思っていた出来事も、「実はこういう理由があったのかな」などと考え直すことで徐々に昇華していけるのではないでしょうか。

あるいは、仕方がないと割り切り、思い切って手放しましょう。自分で変えられないものを、あえて変えようとするのは時間の無駄だからです。その場合は原因のことはいったん置いておき、結果に対して現在、何ができるかを考えるほうが建設的になれるでしょう。

その場から離れる

感情的になったときに、一度その場から離れることも効果的です。
これをアンガーマネジメントでは「タイムアウト」と呼びます。

例えば、言い争いになった場合にヒートアップすれば、相手を屈服させようとする本能が働きます。そのままではいつまでも建設的な話し合いができないばかりか、その人との関係が修復不可能になってしまうかもしれません。

したがって、まずは相手にタイムアウトを示して冷静になってから話し合いを再開しましょう。会社の中ならいったん離席して相手にも休憩を促す、飲み物を飲むなど、別のことをするのも有効です。
自分が本当に知りたいことや、相手に求めていることが何なのかを整理してから、改めて相手と向き合いましょう。

まとめ

本記事では、アンガーマネジメントの基礎知識や実践方法を解説しました。
多くの人が、怒りとは自分の意思とは関係なく沸き起こる感情であり、コントロールが不可能なものであると思っています。

また、怒りをコントロールできるのは性格や性質次第であり、衝動的に怒りの感情を爆発させる人はそういう性格だから治らない、とも思われてきました。

しかし、怒りの感情のメカニズムを正しく理解し、自分の傾向を知ったうえで、アンガーマネジメントを実践すれば、ある程度は自身の怒りをコントロールできるようになります。
怒りを時には抑制し、時には適切に表現する習慣をつけることで、自分の周りの人にも穏やかで前向きな感情が広まり、人間関係や職場環境の改善に役立つでしょう。