PTSDでも仕事ができる?休職中のポイントや受けられる支援もご紹介

2023年3月31日

ヘルプマークとPTSD

PTSDとは、災害や戦争、虐待などの命の危機に関わるような大きな出来事を体験した際に、それが心の傷となり、何度も思い出してしまうストレス障害です。
意思とは無関係に症状が出るため就労が難しいと思われがちですが、治療が進み体調が落ち着いていれば復職・就職も不可能ではありません。

この記事では、PTSDの原因や症状を解説しながら、休職・復職の際のポイントや受けられる支援などをご紹介します。

 

PTSDとは?仕事に影響するの?

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder)とは、強い恐怖感やトラウマを体験した人が、日常的に何度も辛い記憶を思い出してしまうストレス障害です。心的外傷後ストレス障害とも呼ばれます。

本人の意思や我慢強さなどとは関係なく発症するもので、支援や治療を進めていけば働くことも可能になります。

 

PTSDが発症する原因

PTSDは、犯罪被害や災害、事故などのトラウマ体験の目撃・体験が原因で発症します。強いショックによって、脳の一部分が収縮したり血流が低下することで、精神・身体に影響を及ぼします。

不安や恐怖から、不眠や動悸などの症状が続き、日常生活に支障をきたすことも珍しくありません。

辛い体験をすれば、誰しも悲しみや気分の落ち込みといったショックを受けるものですが、時間が経つにつれてストレスは和らいでいくのが一般的です。そのため、例えトラウマ体験があっても、すべての人がPTSDになるわけではありません。

PTSDの発症は、一般的にストレスの強さや種類・環境などに左右されると言われています。自分のストレス体験だけではなく、親や兄弟、友人などの近しい方が体験した事柄をきっかけにPTSDを発症することもあります。

 

PTSDの症状

PTSDの症状には以下のようなものが挙げられます。

 

・侵入症状

自分の意思とは関係なく、恐怖体験が記憶で鮮明によみがえったり、あるいは悪夢に見たりする場合があります。
このような症状をフラッシュバックと言い、実際にその場にいるような感覚に陥る、臭いや音の感覚まで再現されるなどの症状が現れることがあります。

・回避症状

恐怖体験をした場所を通らないように迂回したり、恐怖体験の話題に触れることを拒否したりといった行動をとります。
また、恐怖の対象(場所・状況・人)を回避しようとすると、対人関係そのものにストレスを感じ、他者との関わりを避けてしまうこともあります

・過覚醒症状

過覚醒とは常に緊張している状態であり、交感神経が過敏になることで日常生活に影響が及ぶ場合があります。具体的には「イライラする」「攻撃的になる」「些細なことにも敏感になる」「不眠」「動悸」などの症状が現れます。

 

「(単純性)PTSD」と「複雑性PTSD」の違い

ICD-11(国際疾病分類第11版)では、PTSDは「(単純性)PTSD」と「複雑性PTSD」に分けられています。
「(単純性)PTSD」は地震などの災害・交通事故といったトラウマを一度経験したことが関係します。
それに対して「複雑性PTSD」は虐待など長期にわたって苦しみを受けるような、慢性的な状況が関係すると言われています。

複雑性PTSDには、「感情のコントロールの困難さ」「自己卑下・自己否定」「他者との関わりの困難さ」という特徴があります。

 

PTSDの診断を受けたら仕事はどうするの?

PTSDと診断された場合、まずはストレスの原因から離れて治療を受けることが重要です。同じ場所でそのまま働き続けていると症状が改善しにくくなり、さらには悪化するケースも考えられます。

仕事を再開するには、業務量の調整や環境の改善なども考慮した上で相談した方がベストと言えそうです。

 

体調次第では就職・復職も可能

PTSDと診断された場合、ストレスの原因から距離をとり、原因を解消するのが有効です。しかし、原因自体が解消されたとしても、人や場所などその場の状況が影響して辛くなってしまったり、身体的な症状が出てしまったりすることも考えられます。
そのため、復職を検討している場合には、どういった勤務条件であれば復職できそうか事前に確認・相談する必要があるでしょう。

症状を悪化させずに働くためには、以下のような工夫が必要になってきます。

・短時間の勤務から始める

・休日を増やす

・業務量を調整する

・働きやすい職場環境に整えてもらう

 

休職も検討しよう

会社に休職制度がある場合は、「一定期間休む」という選択肢も検討しましょう。
休職を希望する際は、まず主治医に相談し「仕事を続けることが困難であること」「休職が必要な期間」などについて診断書を作成してもらいます。休職期間は主治医の判断で決定されることが一般的ですが、相談調整が行える場合もあります。

診断書ができたら上司に相談し、休職の期間や有給の使用などを話し合いましょう。
休職期間中は給与補償制度や傷病手当金などの支援制度を利用できる場合があるので、勤務先に相談してみるのも手です。また、休職に向けた話し合いの過程で、周囲に症状が理解されることも考えられます。

 

PTSDの方の休職・復職のポイント

PTSDと診断されて休職をするにあたって、一定期間仕事を休んでしまう不安感から気持ちが焦ってしまう方もいるかもしれません。ここでは、休職している間の過ごし方や、復職する際のポイントをご紹介します。

 

ストレスの少ない環境で休む

休職したばかりの時期は、仕事を休むことに罪悪感を覚えたり、「何か別のことをしなくては」と焦ったりします。それでも、まずは心身の回復を優先し、復職などの重要な判断はある程度症状が回復してからです。

「休み方が分からない」という方は、まず夜は早めに就寝し、日中に太陽の光を浴びる、という習慣づけから始めてみましょう。

 

自分にとってのストレスを把握しておく

PTSDの症状とストレスには密接な関係があります。PTSDの症状と上手く付き合うためにも、自分にとって「何がストレスになるか」「どうすれば負担を最低限に抑えられるか」などを把握しておきましょう。

なお、復職する際は上司などと相談して、できる限りストレスの少ない環境を選びましょう。たとえば所属部署の環境や業務内容にストレスの原因がある場合は、別の部署で働けるよう打診したり、担当業務を変更したりするといった対策が考えられます。

 

PTSDの方が受けられる支援

多くの企業では、病気などによって働けなくなった場合に手当金が支給される「傷病手当」や「休職」といった制度があります。
また、条件を満たせば「就労移行支援」などを利用することが可能です。利用したい制度が見つかったら、まずは一度、主治医に相談することをおすすめします。

 

傷病手当

企業で働いている方がPTSDと診断された場合、休職や傷病手当といった支援を受けられることがあります。「傷病手当」とは、病気や怪我のために会社を休んでしまい事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されるものです。
傷病手当の支給を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

・業務外の事由による病気やケガを理由に休業した
・仕事に就くことができない状態
・連続3日間を含み4日間以上就業できなかった
・休業期間内に給与の支払いを受けていない

 

休職

一方「休職」とは、事業主と契約を結んだままの状態で休むことを指します。法律によって定められた一律のものではなく、各企業の就業規則や、雇用契約などに記載されていることが多いです。

なお、復職する際には勤務先が定める条件を満たす必要があります。医師の診断書のみで良い場合もありますが、会社によっては一定の水準で業務を行えることが復職の条件になっている場合もあります。具体的な条件は休職前の段階で確認しておくとよいでしょう。

 

就労移行支援

就労移行支援は、障害のある18歳以上65歳未満の方を対象として、就職に役立つ知識や必要なスキル、体調などに関する相談などのサポートを行う事業者です。

PTSDの診断だけでは就労移行支援を利用できないことが多いですが、うつ病や不安障害など、二次的な症状を併発している場合は一度相談してみることをおすすめします。

 

まとめ

PTSDは強い衝撃を伴うストレス体験によって、日々の生活に支障が出てしまう病気です。自分の意思とは無関係に辛い出来事を思い出したり、不眠やめまいなど身体的な症状が出たりします。

休職を選択する人も多くいますが、休んでいる間は焦りや不安を感じることも多いでしょう。そういう時には、支援や治療を受けながら、復職や就職に繋げていくことも可能です。

なお、PTSDだけでは障害者手帳の対象とならないことが多いため、転職や再就職の際に、障害者向けの就職支援制度やサービスは利用できないケースが多いです。しかし、ハローワークの窓口では障害者手帳の有無に関係なく、就職の支援や求人の紹介を受けることができます。転職や就職でお悩みの方は、一度相談してみるのも良いでしょう。