発達障害者の金銭管理が楽になる? 3つの公的支援制度をご紹介!

2022年12月8日

発達障害の方は細かい金銭管理を苦手としている場合が多く、症状によっては浪費や借金などの問題を起こしやすくなってしまいます。
発達障害の方が計画的に金銭管理を行うには、自分の特徴を把握し、適切な対策を取る必要性があります。

この記事では、発達障害を持つ方が金銭管理を行う際の特徴と、発達障害者を対象とする3種類の支援制度を解説します。
支援制度を利用する条件やメリットも解説しています。金銭管理を確実に行いたい方は当記事を参考にしていただければ幸いです。

【大見出し】発達障害とは

発達障害とは、ASD(自閉症スペクトラム)やADHD(注意欠陥多動性障害)などを表す言葉です。発達障害に分類される症状は先天的な脳障害が原因であり、本人の性格や育った環境といった後天的な要素で発達障害になることは無いとされています。

ASDの場合、物事へのこだわりが強い、集団行動を苦手とするなどの特性を持つ人が多い傾向にあります。
興味を持ったことを集中的に話したり、他の人に関心を示さなかったりすることでASDだと考えられるケースもあるようです。

次にADHDの場合、多動性の強さや集中力が持続しない、物忘れが多いといった特性を持つ人が多い傾向です。
成人になると多動性は弱まる傾向にありますが、物忘れや集中力が持続しないといった特性は成人後も残るケースが見受けられます。

発達障害は子どもから大人になる過程で症状が治まったり、行動療法や薬物療法で治せたりする場合もあります。
とはいえ、発達障害は完全に治すことが困難な病気であり、人によっては生涯にわたって症状が続くケースもあるようです。

発達障害の人は社会生活を送る上で苦労する場合があることから、発達障害の方は相談窓口や各種支援制度を適切に利用することをおすすめします。

【大見出し】発達障害者の金銭管理の特徴

症状の種類や程度には個人差がありますが、発達障害に分類される方は金銭管理を苦手とする傾向があります。
ここでは、ASD・ADHDに分類される発達障害者が金銭管理を行う際の特徴と傾向、特にどういったことが苦手かを解説します。

【中見出し】ASDの場合

ASDの方は、自分が興味を持ったことに対して過剰にお金を使う傾向があります。
興味の対象となる物や使う金額は人によって異なりますが、生活費を他の用途へ使ったり、浪費によって借金をしたりするなどのケースが実際にあるようです。

浪費以外の特徴として、ASDの方は計画を立てて金銭管理を行うことが苦手な傾向にあります。
本人の性格とは別の問題として、予算内でお金を使うことが困難だったり、訪問販売やキャッチセールスを真に受けやすかったりするなどの問題が生じるリスクがあります。

ASDの方が適切に金銭管理を行うための対策として挙げられるのは、クレジットカードを使わない、家族に金銭管理を依頼するといった方法です。
一度に使用できる金額を制限する、金銭管理を得意とする人にお金を預けるなどの対策を講じておけば、ASDの特性による浪費をある程度は軽減できるでしょう。

【中見出し】ADHDの場合

ADHDの方は計画的な金銭管理が苦手であり、無駄遣いや衝動買いをする傾向があります。
ADHDの特性上、忘れ物や落とし物を買い直すことで余分な出費をするケースもあるようです。
予算の計画を立てたり、収支計算が苦手だったりする場合が多く、使う金額を予算内に納めることが困難になっていると考えられます。

ADHDの方が適切に金銭管理を行うには、クレジットカードを使わない、使う金額を3~4種類ほどに分けるといった方法があります。
予算計画を立てる際には、生活費・貯金・その他といったように、項目が多くならないように分類する方が習慣として続けやすいでしょう。

項目数に比例して作業量が増えるため、ADHDの方が予算管理を行う場合は分類項目をできる限り少なくすることをおすすめします。

【大見出し】発達障害者を対象とした金銭面の支援

個人で金銭管理を行うのが困難である場合、発達障害者を対象とした支援制度を利用するのもひとつの方法です。
ここでは、発達障害者が利用申請を行える支援制度を3種類紹介し、制度の概要や本人が得られるメリットを解説します。

【中見出し】日常生活自立支援事業

日常生活自立支援事業とは、各市町村の社会福祉協議会が実施している、福祉サービスの利用援助や日常的金銭管理などを受けられる支援事業です。
日常生活を送るうえで必要なサービスを利用するための情報を入手・理解・判断し、意思表示することが本人のみでは困難な方が利用できます。

福祉サービス利用に関する相談や支払い代行、預貯金通帳の預かりなどを依頼できる支援事業であり、利用には社会福祉協議会への問い合わせ手続きが必要です。
実際に相談やサービスを利用する際には、社会福祉協議会に在籍する専門員や生活支援員が直接訪問するシステムになっています。

利用申請や支援計画の策定は無料で行えますが、福祉サービスの利用援助や金銭管理などを依頼する際には1回あたり約1,200円の料金が発生します。

【中見出し】成年後見制度

成年後見制度とは、判断能力が不十分な方を保護することを目的とした制度です。
契約を締結する際の判断、財産管理などの業務を本人に代わって実施できる人物を選任することが、成年後見制度の概要になっています。

成年後見制度は、対象となる人の判断能力の高さに応じて、補助・補佐・後見の分類があるほか、「任意後見」という制度もあります。
成年後見制度を適用するには、家庭裁判所への申し立てが必要です。
申し立てを行うことで成年後見人を選任する手続きが行われ、指名された成年後見人に対して財産の管理や契約手続きなどを代行する権利が付与されます。

成年後見人には被後見人の財産管理を行う義務や家庭裁判所への定期的な報告義務などが課されるため、使い込みや不当な契約などから被後見人の財産を保護できるようになっています。
ただし、成年後見制度を利用する際には一定の費用が掛かります。家庭裁判所への申し立てを行う際に印紙代や司法書士への依頼費用として10万円~20万円ほどが必要であり、制度を利用し始めた後は成年後見人に対する報酬が必要です。

報酬金額は申し立てを受ける家庭裁判所が決定する項目になっており、一般的な相場は月額0~6万円程度とされます。
成年後見制度を利用する際の手続きの進め方や必要書類などに関しては、家庭裁判所や各市町村の地域包括支援センターなどにお問い合わせください。

【中見出し】生活福祉資金貸付制度

生活福祉資金貸付制度とは、在宅福祉や社会参加の促進を図ることを目的とした制度です。
社会福祉協議会が実施する貸付制度であり、適用対象となる世帯に対して、必要な資金貸付と民生委員による相談支援が実施されるようになっています。

同制度は低所得者世帯・高齢者世帯・障害者世帯のいずれかであることが適用条件になっています。
障害者世帯の場合、障害者手帳の交付を受けている、あるいは同程度と認められる者が属する世帯であることが適用条件です。

生活福祉資金貸付制度を利用する際には、総合支援資金・福祉資金・教育支援資金・不動産担保型生活資金の4種類から用途に応じて借入申し込みの手続きが必要です。
福祉資金・教育支援資金・不動産担保型生活資金の借入申し込みは市区町村の社会福祉協議会が窓口になっており、総合支援基金は自立相談支援機関が窓口になっています。

生活福祉資金貸付制度に関するお問い合わせは、お住まいの市区町村の社会福祉協議会か都道府県社会福祉協議会で行えるようになっています。

まとめ

発達障害は先天的な脳障害が原因であり、計画的な金銭管理を苦手とする傾向があります。
個人での金銭管理が困難である場合、発達障害の方を対象とした支援制度を利用するのもひとつの方法です。