【障害者の仕事探し方法】障害者に向いている仕事や支援サービスを解説
障害のある方はどのように仕事探しをすれば良いのでしょうか。体調を安定させて長く働ける企業を探すためにも、慎重に仕事探しをする必要があります。まずは自分が抱えている障害の特性や得手・不得手をしっかり把握し、向いている仕事を見つけましょう。障害者の仕事探しをサポートしてくれるサービスの利用もおすすめです。
この記事では、障害者の仕事探しの現状や働き方、仕事探しのポイント、障害者に向いている仕事、支援サービスについてご紹介します。
障害者の仕事探しの現状
厚生労働省が発表した「令和3年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業では雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新しています。公的機関において雇用障害者数はいずれも前年より上回り、独立行政法人では雇用障害者数および実雇用率のいずれも前年より上回る結果となりました。
この集計結果は、障害者雇用促進法に基づき、毎年6月1日現在の身体障害者・知的障害者・精神障害者の雇用状況を障害者の雇用義務のある事業主に報告を求めたものです。集計結果から分かるように、雇用障害者数や実雇用率は上昇傾向にあります。従って、障害者も仕事探しをしやすい状況になりつつあるといえるでしょう。
障害者はどこで仕事探しをする?
障害者と一口にいっても、障害の状態や目標によって適した働き方が異なります。無理なく働くために、自分に合った働き方の中で仕事探しをするようにしましょう。ここでは、4つの働き方について解説します。
一般枠採用
企業や公的機関などに障害のない方と同様の条件で働く方法です。職種や求人数が豊富な反面、障害に対する配慮や理解が十分ではない場合もあります。特に、障害があることを伝えない「クローズ就労」の状態は、障害上難しい業務を任されても断れない場面があるため注意が必要です。キャリアアップや収入面を重視する方にとっては一般採用の方がやりがいを感じられるかもしれませんが、障害の特性や体調面を考慮して慎重に検討しましょう。
障害者枠採用
一般枠採用と同様に企業や公的機関などに就職する働き方です。障害者枠採用では、障害があることを事前に伝える「オープン就労」の状態で求人に応募します。企業が導入している制度の適用を受けられたり、合理的配慮をしてもらえたりするため、体調面に不安がある方も安心して働ける点がメリットです。「求人の選択肢が限られる」「業務範囲が狭い」「給与が低くなる」などのデメリットはあるものの、サポートを受けながら働きたい方に適しています。
特例子会社
特例子会社とは、障害者雇用の促進および安定を図るために設立された子会社です。一定の要件を満たすことで、厚生労働大臣から特例子会社として認定されます。特例子会社で働くメリットは、短時間勤務制度や通院休暇制度など障害のある方に配慮した職場環境が整備されていることです。また、定期的な面談の実施や複数業務の体験など、能力発揮やキャリアアップのための取り組みも行われています。一般採用や障害者枠採用など一般就労に不安のある方は、特例子会社への就職も視野に入れてみましょう。
就労継続支援
就労継続支援とは、一般企業での就労が困難な方を対象に、障害や体調に合わせて自分のペースで訓練や仕事ができる福祉サービスです。就労継続支援には雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばないB型の2種類の事業所があります。A型は一般企業での就労は困難なものの、一定のサポートがあれば働ける方を対象としたサービスです。
カフェやレストランの調理・接客、パソコンの入力作業、軽作業など、仕事内容は事業所によって異なります。B型は雇用契約を結んで働くことが困難な方を対象に、生産物に対する成果報酬を「工賃」として支払うサービスです。仕事内容はA型事業所と同様に事業所によって異なります。働くことが不安な方は、まずは就労継続支援を使用してみましょう。
仕事探しをする前にやるべきこと
入社後に体調を崩してしまったり、想像していた仕事と異なったりすることを避けるために、仕事探しを始める前に必要な準備をしておきましょう。特に「自己分析」と「企業研究」は時間をかけて行っておきたいポイントです。ここでは、「自己分析」と「企業研究」の必要性や内容を紹介します。
自己分析をする
自己分析は障害の有無にかかわらず就職活動の面接で必要となります。障害者の場合は自分の障害特性を理解し、仕事をするうえで必要な配慮を伝えられるようにしておかなければなりません。自分の障害が先天的なものか後天的なものか、後天的なものであればどのような経緯で発症したかを整理しておきましょう。
障害の特性や必要な配慮が整理できたら自分の性格を分析します。インターネットで「自己分析 チェックシート」と検索すると無料で分析できますので、ぜひ一度実施してみてください。自分だけで自己分析が難しければ家族や友達、支援機関に相談して力を貸してもらいましょう。
企業研究をする
応募を検討している企業の仕事内容や職場環境、求めている人材を念入りに調べておきましょう。障害者枠で働く場合は合理的配慮のための取り組みや、障害者の雇用実績なども確認します。求人票や企業のホームページの確認はもちろん、企業の動向を知るためにニュースのチェックも必要です。可能であれば実際にその企業で働いているOB・OG訪問を行い、生の声を聞くとより安心できるでしょう。
求人でチェックするポイント
企業研究の項目でも触れましたが、障害者枠で働く場合は、障害があっても働ける企業か確認する必要があります。求人でチェックしたいポイントとしては「勤務時間に融通が利くか」「キャリアアップが図れるか」といったことが挙げられます。自分の障害特性や希望するキャリアプランに応じて労働条件を確認しておきましょう。
短時間勤務やフレックスタイム制を導入しているか
障害の特性上、フルタイムで働くことが負担になる方も少なくありません。また、満員電車で体調を崩してしまう場合もあります。いずれはフルタイムで働くことを視野に入れている方も、最初は時短勤務から始めて徐々に勤務時間を伸ばしていくことも一つの方法です。応募を検討している企業の求人内容をよく見て、短時間勤務やフレックスタイム制など柔軟な働き方ができるかチェックしましょう。障害特性によっては在宅勤務の可否もチェックポイントです。
正社員登用制度の有無
障害者雇用は契約社員の求人が多く、正社員の求人が少ない傾向にあります。長期的に働くことを検討している場合は、正社員登用制度の有無やその実績をチェックしましょう。求人で正社員登用制度があることを確認できたら、正社員になるための条件なども確認してください。いずれ自分が適用対象となるか把握できるとともに、モチベーションにもつながります。
就職活動のときに確認しておきたい3項目
いざ就職活動が始まると、履歴書や面接で自分の特性を伝えたり、企業から職場環境の説明を受けたりします。ここでは、働き始めてからお互いにずれが生じないように事前確認しておきたい3項目についてご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。
自身と同じ障害のある人物の雇用実績
面接の際に、自身と同じ障害を持つ方と働いた経験があるかを確認しておきましょう。雇用経験がない場合は、自分の障害特性や必要な配慮を詳細に伝えます。また、自身と同じ障害のある方の雇用実績があったとしても、障害の特性や必要な配慮が異なる場合もあるので、雇用実績の有無に応じて分かりやすい伝え方を考えておくと安心です。
合理的配慮の合意形成
働く上で必要な合理的配慮は、企業としっかりすり合わせておくことが重要です。業務面での得手・不得手や通院、休暇などを明確化しておきましょう。のちほどご紹介する就労移行支援事業所を利用している場合は、合理的配慮に関する資料を作成している事業所もあります。自力で作成する場合は、障害者職業センターのホームページから合理的配慮の作成に役立つ記入式ナビゲーションブックをダウンロードして活用すると良いでしょう。
雇用前実習の有無
企業によっては雇用前実習を実施している場合があります。雇用前実習を活用すれば、就職前に職場のイメージをある程度把握できるでしょう。職場の雰囲気や業務内容が自分に合っているか知るために、人事担当者に雇用前実習の有無を確認してみてください。雇用前実習がある企業であれば積極的に活用して、その企業で働いていけるかどうかの判断材料にすると良いでしょう。
障害者に向いている仕事
体調を安定させながら長期的に働き続けるためには、障害者に向いている仕事を選ぶことが大切です。障害の特性によっては、ここでご紹介する仕事以外にも向いている仕事があるかもしれません。自己分析を基に、長い目で見て自分に合う仕事を探しましょう。
事務職
事務職は電話・来客対応からデータ入力、書類管理、郵便物の発送・仕分けまでさまざまな業務を担当する仕事です。オープンで働く場合、電話・来客対応を担当せずに済む場合が多く、データ入力などのルーチンワークを任せてもらえます。コミュニケーションが苦手な方や体力に不安がある方でも働きやすい仕事の一つです。
デザイナー
発達障害など障害特性上、自分の興味がある分野に突出した才能を持つ方はデザイナーのようなクリエイティブな仕事が向いている場合があります。デザイナーにはグラフィックデザイナーやファッションデザイナー、Webデザイナーなどさまざまな種類があるので、自分に向いているものが見つかるかもしれません。
コールセンター
コールセンターのテクニカルサポートやヘルプデスクの仕事はマニュアルが完備されているので、障害者でも働きやすい傾向にあります。詳細なマニュアルがあることで不安を軽減できる方や、座って仕事をしたい方におすすめの仕事です。
製造ライン作業
食品や自動車メーカーなどの製造工程の作業を行う仕事です。毎日マニュアル通りの同じ作業になることが多く、変化に対応しづらい方にも向いています。また、未経験可・学歴不問の求人がほとんどであることから、挑戦しやすい仕事といえるでしょう。
倉庫内作業
倉庫内作業は、荷物の搬出入作業やピッキング作業、在庫管理などを行います。指示通りに動くことや決められたことをこなすのが得意な方に向いている仕事です。マルチタスクやコミュニケーションが苦手な方でも安心して働ける業務といえます。
キッティング作業
キッティング作業とは、PCやスマートフォンなどの導入時に各種設定やソフトウェアのインストールなどのセットアップを行う作業のことです。マニュアルに沿って黙々と単調な作業を行うのが好きな方や、パソコン・ITに興味がある方に向いています。
清掃
商業施設やホテル、ビルなどさまざまな施設の清掃を行います。事務作業よりも体を動かす作業の方が好きな方におすすめの仕事です。募集が多く、競争率が低めなので応募のしやすい傾向にあります。
障害者の仕事探しをサポートしてくれるサービス
障害者として仕事探しを始めるとなると不安を感じる方もいるかもしれません。その場合は障害者の仕事探しに特化したサービスの利用をおすすめします。的確なアドバイスをしてくれたり、希望の条件を満たす求人を紹介してくれたりするので、積極的に相談してみましょう。
ハローワーク
ハローワークは、厚生労働省が全国500か所以上に設置する地域の総合的雇用サービス機関です。求人の紹介から職業訓練の相談、自己分析・履歴書作成・面接のサポート、紹介状の発行などさまざまな支援をしてくれます。障害者専門窓口では、障害者の支援に特化した支援員が障害特性についてカウンセリングした上で適した企業探しを支援してくれるため、安心して就職活動ができる点がメリットです。障害者求職登録を済ませれば、ハローワークインターネットサービスを利用して自宅でも求人検索できます。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターとは、職業評価や職業準備支援、ジョブコーチ支援、職場復帰支援など障害者に対して専門的な職業リハビリテーションを実施する施設です。直接就職先を紹介してくれる施設ではないものの、就職に向けたさまざまな支援を受けられます。ハローワークや企業とも連携していることから、地域障害者職業センターを利用しながらハローワークなどで仕事探しをすると良いでしょう。
障害者に特化した就職・転職エージェント
障害者の就職・転職に特化したキャリアコンサルタントが就職・転職活動をサポートしてくれるサービスです。無料で利用でき、履歴書・職務経歴書の添削や面接対策、入社日の交渉などのサポートを受けられます。求職者と企業側の希望条件がマッチする企業をキャリアコンサルタントが紹介してくれるので、入社後のミスマッチが起こりづらい点が特長です。
障害者就業・生活支援センター
通称「なかぽつ」「就ぽつ」とも呼ばれる障害者就業・生活支援センターは、就業や生活に関する相談・支援を行う機関です。全国に設置されていて無料で利用できます。働く前に体調を安定させたい方や就職後に定着支援を希望する方におすすめです。
障害者職業能力開発校
障害者職業能力開発校とは、障害者の職業訓練を行うための公共職業能力開発施設です。全国に設置されており、訓練中の生活費として訓練手当が支給されます。具体的には、基本手当や技能習得手当、通所手当、寄宿手当(寄宿の場合のみ)などです。入校検定料や入校料、授業料は無料ですが、教科書代や訓練中の昼食代は自己負担となります。ITの専門スキルや事務職に必要な知識、ものづくりの技術など、学校によってさまざまなコースが用意されているため、興味があるスキルを身に付けられるでしょう。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、企業で働くことを希望する障害者に対して職業訓練や就職活動のサポート、就職後の定着支援などを実施する障害福祉サービスです。利用料金は前年の世帯年収に応じて異なりますが、多くの方が無料で利用できます。利用期間は原則2年間なので、その期間内に就職活動の準備、企業インターン、就職活動を行う流れです。学校のように通いながら就職に向けたサポートを受けたい方にぴったりのサービスといえます。
まとめ
障害者として仕事探しをするのは、ハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、近年は雇用障害者数や実雇用率が上昇傾向にあり、障害者も働きやすい社会になりつつあります。長く安定して働き続けるためには、「一般枠採用」「障害者枠採用」「特例子会社」「就労継続支援」など、自分に合った働き方を選んで仕事探しをすることが大切です。初めての仕事探しで不安な方は就職活動を支援してくれるサービスを利用しましょう。