手帳なしでも障害者雇用枠で働ける?利用できる福祉支援なども解説!

2022年12月29日

近年、障害者に対する福祉制度の拡充が進められています。法定雇用率が引き上げられたり、障害者が就職・勤務しやすいようなサポート体制が整えられたりするようになりました。しかし、障害者手帳を取得していない場合は、福祉制度の一部が利用できません。手帳を取得せずに働く場合の待遇や責任の範囲は健常者と同水準になる可能性があり、メリットと同時にデメリットにもつながります。そのため、手帳を持っていない方でも利用できるサービスの活用が重要です。この記事では、障害者手帳を持っていない障害者が就職するための方法とメリット・デメリット、さらに利用可能な福祉支援サービスを紹介します。

 

障害者が手帳なしで働く方法

障害者手帳を取得した方の就労は、一般的に障害者雇用制度を活用する傾向にあります。選択肢のひとつである「オープン就労」と呼ばれる就職形態は、自分が障害者であると最初から社内に周知する方法です。障害者の働き方としてオープン就労は一般的なものですが、手帳なしで応募できるオープン就労の求人募集は少なく、採用基準も一般就労と同等であるといった問題があります。手帳を持っていない障害者が就職する場合、主に2種類の方法が存在します。ここでは、手帳がなくオープン就労の利用が困難な障害者の働き方を紹介します。

 

セミオープン就労

セミオープン就労とは、自分の障害を最小限の人にのみ開示する就労方法です。一般的に、オープン就労は社内の全従業員に自分の障害を開示しますが、セミオープン就労では上司や採用担当者など必要最低限の人以外には開示しません。

多くの従業員には障害者であると伝わらないため、オープン就労と比べて障害開示に対する不安感は少ない点がメリットです。収入面などの待遇も、オープン就労より好条件が期待できます。一方で業務内容の面ではクローズ就労と同水準であり、障害の内容や自身の状態によっては大きな負荷となる可能性が考えられます。セミオープン就労を受け入れている企業が少ない点もデメリットです。

 

クローズ就労

クローズ就労とは、自分の障害を社内の誰にも伝えず就職する就労方法です。扱いとしては健常者と変わらない一般就労になるため、待遇・負担などが一般採用枠と同水準になります。求人募集数や待遇面でのメリットがある就労方法ですが、こなすべき業務内容は「障害がない」という前提のものです。

基本的には採用後に障害を知られても解雇されませんが、業種によっては障害の存在が欠格事由にあたる可能性もあります。欠格事由を隠しながら入社したと判明すると、最悪の場合懲戒処分などにつながる恐れもあるため注意しましょう。

 

クローズ就労のメリット

クローズ就労は自分の障害を開示せずに通常の求人へと応募するもので、障害者雇用において起きやすい悪影響を受けずに就労できます。自分の障害を誰にも伝えたくない場合や、より理想的な求人を探したいならばクローズ就労が適切でしょう。以下ではクローズ就労の主なメリットを3種類紹介します。

 

障害を開示しなくても働ける

クローズ就労すると表向きは健常者として入社するため、自分の障害を伝えずに就労できます。障害や病気に関する事柄はプライバシーであり、人によっては伝えたくない場合もあるでしょう。また、障害によって人から気を遣われたり、業務に制限が生じたりすることに対して懸念を抱くケースも珍しくありません。誰にも自分の障害を知られたくない、障害に対する配慮も必要ないという場合は、クローズ就労ならば障害がないと認識されながら働けます。

 

豊富な種類の求人がある

クローズ就労は一般就労と同様の求人から就職先を探すため、障害者雇用に限定されるオープン就労と比べて非常に多くの求人が選択肢になります。障害者雇用の求人数は一般採用と比べて数や種類が少ないため、就職可能な企業や職種などに制限がかかるかもしれません。一方、クローズ就労であれば多くの求人が出されている一般採用を利用できます。通いやすい職場や務めたい業種などの好みに合った求人を探しやすくなるでしょう。

 

給料などの条件が良い

クローズ就労の待遇は、オープン就労よりも条件が良い傾向にあります。障害者雇用による求人は、業務内容や勤務時間などの観点から給料の水準がそれほど高くないケースも珍しくありません。待遇面でより良い条件を探す場合、障害者雇用だけでは満足できる求人をなかなか見つけられない可能性があります。

ただ、待遇面の差は障害者・健常者の差以上に企業や職種などによる差の方が大きく現れる場合もあります。「クローズ就労ならば多くの収入が得られる」と考えすぎず、求人内容や企業などを良く吟味して選びましょう。

 

クローズ就労のデメリット

障害者雇用制度を利用せずにクローズ就労すると、仕事での思わぬ負担が発生するかもしれません。クローズ就労が原因で障害が悪化する恐れもあるため、就労形態を選択する際は自分に適しているか慎重に考えましょう。以下ではクローズ就労の主なデメリットを3種類紹介します。

 

障害に対する配慮を受けられない

クローズ就労すると、障害に対する企業からの配慮が受けられません。表向きは健常者という扱いで就職しているため、企業からも健常者向きの対応・要求がされます。通院や服薬などのタイミングについて考えることも必要です。障害の影響で業務をうまく進められないと、健常者基準で評価されて「仕事ができない」とみなされる可能性もあります。

体調面での不調が続くと有給休暇の取得が続くため、周囲から「休みが多く大事な仕事を任せられない」という評価にもつながりかねません。障害への配慮がないため、十分な実力を発揮できなくなる可能性は考えておきましょう。

 

障害を知られてしまう不安感がある

クローズ就労は障害を開示せずに就職するため、社内の同僚や上司などに自分の障害内容を知られてしまう可能性があります。とは言え、入社後に障害者であると判明しても、障害があることを理由とする解雇は法律上できません。

ただし、入社するにあたって病歴を不当に隠していた場合には労働契約法違反にあたり、懲戒処分を受けるケースもあります。クローズ就労で応募した会社でも、過去の病歴について採用面接で聞かれた際には正直に回答しましょう。

クローズ就労で入社した場合、どのような状況でも障害の存在を隠して働く必要性が生じます。障害がないことを前提とした業務をこなす中で、障害を隠し続けるという別の負担も発生します。必要以上に生じる負担が原因で業務効率が落ちたり、うつ病・不安障害など別の病気を患ったりする危険もあります。

 

企業と支援機関の連携したサポートを受けられない

オープン就労と異なり、クローズ就労すると就職後に企業・就労支援機関の連携によるサポートを受けられません。障害者雇用により就職した障害者に対しては、基本的に企業と支援機関が職場定着・雇用継続のための連携したサポートを行います。一方、クローズ就労においては企業と支援機関の間で連携がとれていないため、就職後は支援機関単独のサポート以外受けられません。障害を補う働き方や業務内容調整の頼み方などが分からず、1人で悩み続けてしまう可能性もあります。

 

障害者手帳なしでも利用できる福祉支援

現在では障害者に対するさまざまな福祉支援サービスが提供されており、なかには障害者手帳を持っていなくとも利用可能なものもあります。手帳を取得せずにクローズ就労すると、障害に対する職場からのサポートが受けられないため、各種福祉支援サービスを積極的に利用してクローズ就労のデメリットを補いましょう。この章では、障害者手帳を持っていない場合でも利用可能な福祉支援サービスについて詳しく解説します。

 

就労移行支援

全国で提供されている就労移行支援サービスを利用する方法があります。就労移行支援サービスは障害者福祉サービスの1つで、就労移行支援事業所に通って就労のために役立つサポートを受けられます。継続的な支援を通じて就職に必要な知識・スキル・ビジネスマナーなどを習得できるでしょう。就職後も職場定着のためにさまざまなサポート・アドバイスを行ってくれます。

就労移行支援サービスは18歳以上65歳未満を対象としており、障害者手帳がなくとも自治体から利用資格を認められれば利用可能です。就職までの計画を建てて、必要な学習・訓練を順次行っていきましょう。

 

就労継続支援A型・B型

就労継続支援サービスの利用も可能です。就労継続支援サービスは障害者が職業訓練・生産活動できるように各種の支援を行うサービス・施設です。就労継続支援にはA型とB型があり、雇用契約の有無が大きな違いとして挙げられます。A型では障害者が事業所と雇用契約を結ぶため、最低賃金以上の収入を受け取りつつ利用可能です。一方B型では雇用契約が結ばれず、一般企業への就職やA型作業所の利用などは難しいと判断された人が利用します。

就労継続支援は将来的な一般就労へのシフトを目的として行います。A型からは企業に、B型からはA型を経由して企業に就職できるよう訓練します。

 

就労定着支援

企業への就職後は就労定着支援サービスを利用できます。就労移行支援や就労継続支援などのサービスを受けて就職した人を対象として、就職後の悩みや問題などを解決できるようサポートするサービスです。各種支援を受けずに就職した場合は、就労定着支援サービスを受けられません。

利用時には最初に面談をして、現状抱えている課題点を明確にします。その後解決に役立つアドバイスを受けたり支援スタッフが職場に訪問したりして、課題を解決していきます。医療機関や福祉機関との連携も行います。

 

ハローワーク

ハローワークの障害者専用窓口を利用して就職先を探す方法もあります。ハローワークの多くでは「専門援助部門」を設けており、障害者雇用の求人紹介や企業との仲介などを行っています。障害者一人ひとりの特性に合った仕事探しをサポートしてくれるでしょう。厚生労働省管轄のもとで全国に設置されているため、特に地方では民間の就職サービスよりも多くの求人数が期待できます。

直接的な求人紹介だけでなく、面接の練習や職業訓練、ジョブコーチ支援などもハローワークで受けられます。

 

障害者職業センター

全国に設けられている障害者職業センターも利用できます。就労体験として簡単な作業を行ったりビジネスマナーを学んだりすることができ、作業の様子をスタッフが観察して職業適性の判断も行ってくれます。職業紹介は行っていませんが、ハローワークと連携して各種のサポートを実施している施設です。

自分の強みや今後の課題点を把握したり就職後の企業訪問によるサポートを受けたりと、障害者の就職において幅広く活躍してくれるでしょう。障害者職業センターは障害者手帳がなくても無料で利用できます。

 

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターからのサポートを受ける方法もあります。地域に密着して障害者の就職をサポートする施設です。就労支援に加えて日常生活のサポートも行っており、障害者が就職を目指して活動するために幅広く活躍してくれるでしょう。生活を安定させれば就職活動にも注力しやすくなるため、短期間で理想的な企業に就職できる確率が上がります。

障害者就業・生活支援センターを利用するためには基本的に医師の診断書が必要ですが、センターによっては診断書が不要な場合もあります。あらかじめ利用したいセンターに確認しておきましょう。

 

発達障害雇用開発助成金

医師から発達障害者の診断を受けている場合は発達障害雇用開発助成金を利用できることがあります。ハローワークの職業紹介を利用した方が対象で、正確には発達障害者を雇用する事業主が支給対象です。障害者手帳の有無にかかわらず申請できる助成金制度で、事業主の方は対象の発達障害者に対する配慮事項について報告することが支給条件のひとつになっています。

前提として事業主には障害をオープンにする必要があり、雇い入れから6ヶ月後にはハローワーク職員等による職場訪問が行われます。セミオープン就労も含めて就職活動を行う方は、間接的な福祉支援として知っておくと役立つかと思われます。

 

まとめ

障害者手帳を持っていない障害者の就職方法とメリット・デメリット、さらに利用可能な福祉支援サービスを紹介しました。障害者手帳がないと障害者雇用による就職が行えないため、障害について伝える相手は最低限に留めるか、あるいは誰にも伝えない形になります。

障害を開示せずに働くと心身に大きな負担がかかるかもしれません。手帳を持っていなくとも利用できる福祉支援サービスを活用して、就職先を探したり就職後のサポートを受けたりしましょう。