障害者雇用枠の面接を受ける前に!必要な事前準備を解説!

2024年10月7日

近年政府によって提唱されている働き方改革のための施策に、障害者雇用対策があります。

これは、障害のある人も障害のない人も、同じように働く機会を持てる環境を整えようとするものです。

しかし、雇用の機会が広がったとはいえ障害者の中には、障害のない人と同じように面接を受けて安定して働き続けることが困難な人がいるのも事実です。

また、採用面接では企業側も障害の程度を把握する必要があるので、自分の障害が仕事において「どのような場面で」「どのような影響があるか」について説明できるよう、事前に考えておくなど対策が重要になります。

この記事では障害者雇用の概要を解説すると共に、障害者雇用の面接で必要な事前準備や面接で良く聞かれるポイントについてご紹介します。

障害者雇用について詳しく知りたい方や障害者雇用での採用を考えている方は、ぜひご覧ください。

 

障害者雇用とは

障害者雇用とは「障害者雇用枠」による採用のことを言います。

障害者雇用枠とは、障害のある人が働く機会を得やすくするために特別に設けられた雇用枠のことです。

障害のある人が、ない人と同様の方法で就職しようとしても能力や条件面などで不利になってしまうケースがあるため、障害者雇用促進法43条では「従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を法定雇用率以上にする義務がある」と定めています。この法定雇用率を達成するために設けられたのが「障害者雇用枠」です。

現在、民間企業の法定雇用率は2.3%で、従業員を43.5人以上雇用している事業主は障害者を1人以上雇用しなければなりません。

また、障害者雇用のために専門の子会社(特例子会社)をつくり、ここで障害者を採用した場合も障害者雇用率に算定できます。

障害者雇用と一般雇用では「障害があることを理解された上で雇用される」という点で違いがあります。障害者雇用の場合は、企業は障害の特性や体調に合わせた配慮をする義務がありますが、障害を明かさないまま一般雇用で採用された場合、企業から配慮を受けることは難しいでしょう。

 

障害者雇用の面接を受ける前の準備

障害者雇用枠での雇用を目指すには、一般雇用と同じように自治体もしくは企業の面接に合格し、採用される必要があります。面接を受けるにあたって、前もって準備しておくことがいくつかあります。まずは以下に挙げた項目について確認しましょう。

仕事内容をこなせるかよく考える

はじめに応募する職種やその仕事内容について、自身の体調面も含めた上できちんとこなせるかどうか、よく考えましょう。

「この仕事内容なら自分に合っていそう」あるいは「体調面から考えてこの勤務日数や勤務時間ならやっていけそう」といったように、仕事内容と体調面の両方から仕事ができるのかどうかを考慮する必要があります。

仕事に関するスキルはあっても体調面が思わしくない場合は、まずは体調を整えてから、現状の体調でもできそうな仕事を探すことが大切です。

生活のリズムを整える

生活のリズムを整えることも、大切な準備の一つです。

「生活のリズム」は、仕事を含め健康的な生活を送るために重要で、わかりやすく例えるならピラミッドの「台座」にあたる部分になります。

睡眠不足・過眠は集中力や心理状態に影響することもあるため、生活リズムが不安定だと、せっかく仕事のスキルがあっても働き続けることが難しくなる可能性があります。

昼夜逆転している人や夜型の生活の人など、生活リズムが不安定な人は、まず「朝にきちんと起きて」「夜によく寝る」という、一日の生活のリズムを整えることから始めましょう。

自身の障害について説明できるようにする

続いて「自分の障害について人に説明ができること」も重要です。

障害の名称はもちろんのこと、どのような障害があるのかきちんと人に説明ができるようになることは、採用面接においてとても大切なことです。

そのためにも普段の生活の中で「どのような時に不調となるのか」あるいは「どのようなことで苦しんでいるのか」を明確にしておく必要があります。普段から自分の体調についてメモをとり、わかりやすくリストアップしておくと良いでしょう。
そうすることで客観的に自分の障害について知ることができるだけでなく、自分の得意・不得意を把握することにもつながります。

また障害者に限らず、そういった得手不得手は誰にでもあるものですが、特別な配慮が必要だと思うときは事前にきちんと伝える必要があります。

苦手なことに関しては、具体的に「こういった状態になると混乱しやすい」「こういった業務が苦手」といったようにまとめておくと良いでしょう。さらに、苦手なことに対してこれまで行ってきた対応策や工夫についても「今までこういった対策を行って乗り切ってきた」「対策しておけばこの業務もできる」など、想像しやすい具体例を挙げながら説明できるようにしておきましょう。

志望動機と自己PRを用意する

面接に向けて、志望動機と自己PRを用意しましょう。

障害者雇用の面接では、障害についての質問に次いで聞かれるのが、志望動機と自己PRになります。自分が企業で役に立つと思わせるような説明ができるよう準備をしましょう。

志望動機はなぜその会社で働きたいか、納得できる内容で簡潔に説明する必要があります。そのために大切なのは企業分析です。希望する企業の事業内容や応募する職種の具体的な仕事内容を下調べして、そのなかから自分が共感した点、良いと思った点を見つけ「なぜ良いと思ったのか」「なぜその会社で働きたいと思うか」を整理しましょう。

また、自己PRは「自分がどのような面で会社の役に立てるか」をアピールする機会です。ここでは「自己分析」が重要になります。

これまでに働いた経験がある場合は前職での実例を踏まえ、希望した企業でも生かせる内容を考えましょう。働いた経験がなくても、学生時代の部活やサークルでの経験やアルバイトの経験などで、自分が良い関わりができた出来事や行動を分析し、仕事にも活かせるアピール内容を考えると良いでしょう。

 

障害者雇用の面接でよく聞かれるポイント

実際に障害者雇用の面接でよく聞かれるポイントについて以下にまとめました。

特に、退職理由や障害についての詳細、仕事や健康面での配慮などがよく聞かれる項目です。

きちんと整理して準備しておかないと、即答しづらい項目が多いため注意しましょう。

退職理由

はじめに「退職理由について」です。退職理由に関連する質問は転職の際必ずと言って良いほど聞かれる項目です。退職理由は障害が関係していたとしても、正直に話しましょう。

また、退職理由はネガティブな内容になりがちですが、良い理由で退職する人があまりいないのは面接担当者もわかっているので、自分に合わなかった部分を「冷静に分析」し「次に生かす方法」を考えているかどうかが問われます。「この業務が嫌だったから」や「この人が嫌だったから」といった表現は避け、プラスの方向で話をまとめると良いでしょう。

「またうちの会社でも同じことになるのでは」とマイナスなイメージを面接担当者に持たれないよう「退職についてどのように捉えたのか」「何を学んだのか」「今後どのようしていきたいのか」を説明し、志望動機につなげて「だからこの仕事をしたいと思いました」とまとめられると良いでしょう。

職務経歴

次に、職務経歴についてです。職務経歴はだらだらと今までの経歴を話していくのではなく、希望している企業の仕事について、今までの経験を生かせる内容を強調して話しましょう。

なぜなら、面接担当者は職務経歴を通じて、自社で必要とする能力や経験を持っているかということを判断するからです。働いた経験がない場合はコミュニケーション能力や責任感、正確さなど、どのような仕事でも必要とされる内容について「自分の強みを紹介できるエピソード」を話します。

応募する企業が何を求めているのかをよく理解をして、自分のアピールポイントにつなげていけると良いでしょう。

障害についての詳細

続いて、障害者雇用の面接では間違いなく聞かれる質問である「自分の障害について」です。これは、採用にあたって「どのような配慮が必要なのか」あるいは「長く一緒に働くために会社が何を準備すべきか」を把握するための質問でもあります。

まず、できることとできないことを明確にしましょう。とは言っても、「これはできません」と一点張りをするのではなく「この仕事は難しいですが、こういう仕事はこんな工夫をすればできます」といったように、前向きな姿勢で回答するようにしましょう。応募者と企業との両方で、どのような工夫をして協力体制を築いていくのかにあたり「私はこのような工夫をして頑張りたいです」という前向きな姿勢を面接担当者に伝えることが大切です。

面接担当者も、自身の障害についてきちんと説明ができる人のほうが、同じ会社で働くにあたって安心感を持ってもらいやすいでしょう。

障害について面接担当者に説明する時は、障害の過去、現在、未来について整理して伝えることが重要です。具体的には「障害発症の経緯」や「現在の障害の状態」「将来どのような経過をたどる可能性があるか」などを、わかりやすく整理しておきます。

障害について正確に情報が伝わらなければ、仕事が始まってから不便を感じてしまうことになりかねません。自分の障害の特性や働くときにお願いしたい配慮がある場合は、面接担当者にきちんと伝えておくと安心です。

仕事で必要な配慮

「仕事において必要な配慮はないか」についてもよく聞かれる内容の一つです。

企業には「障害がある人とない人の就労機会や待遇を平等に確保」し、障害がある人が能力を発揮するために「支障となる状況を改善すること」が義務付けられています。これを「合理的配慮」と言います。

仕事をするうえで必要な配慮があれば企業は環境を整える必要があるため、事前に聞いておきたい項目の一つとなっています。

この質問は過去の自分の経験を振り返り、どのような状況で困ったことが起きたのかよく考えます。

「設備」などのハード面と「周囲の理解」「協力」といったソフト面について分けて整理して、自分に必要な仕事上での配慮を具体的に伝えていきましょう。

健康面の配慮

最後に、通院日などを含めた「健康面での配慮」についても答えられるようにしておきます。健康面で不安なことや配慮をお願いしたいことを、面接担当者に素直に伝えましょう。

「週何日勤務できるか」「残業ができるか」、また通院日など「配慮してもらいたい事項」を具体的に伝えられるように準備します。配慮を伝えるときには優先順位をつけておきましょう。
義務とはいえ合理的配慮が多すぎたり、業務上難しかったりした場合、対応できない可能性があるためです。あれもこれもと要求するよりは「これだけはお願いします」という姿勢で伝えると良いでしょう。

このように優先順位をつけておけば、企業も障害者も安心して雇用関係を構築できます。

 

まとめ

この記事では、障害者雇用の面接についてご紹介しました。

障害者雇用の面接において、最も大切なことは「自身の障害の特性や対策を理解」し、「きちんと説明ができること」です。

もちろん志望動機や自己PR、退職理由、職務経歴などの準備も大事ですが、まずは自分の障害の特性や状態を自分自身で理解しておくことが障害者雇用の面接合格の近道となるでしょう。