聴覚障害者の仕事で起こりやすい問題とは?問題なく働くためのポイントも紹介!

身体障害者は障害を抱える部位によりさまざまな種類に分けられますが、聴覚に異常があり音を聞きづらい人は聴覚障害者に分類されます。
音が聞こえないと日常会話や業務などさまざまな場面で不便を感じやすくなりますが、自分や周囲のちょっとした工夫で仕事をするうえでの不便を減らすことが可能です。
この記事では、聴覚障害の特性や聴覚障害者が働く際のポイントについて解説します。

 

聴覚障害とは

聴覚障害とは、聴覚の異常によって、人の声や一定の音域の音が聞こえない、あるいは聞こえにくい状態になる障害を指します。
聴覚障害は聞こえた音を耳から脳に送る過程のどこかで異常が生じることで起きますが、その原因や聞こえる度合いなどは人により異なります。
障害レベルや育った環境などで使用できるコミュニケーション手段も異なり、聴覚障害についてあまり詳しくない健常者との間で認識の食い違いが生じる可能性もあります。
以下で聴覚障害の概要を解説します。

原因

聴覚障害は、主に先天性と後天性の2種類に分けられます。
先天性の聴覚障害は遺伝や早産、母胎内でかかった疾患などが原因で発生しており、およそ1,000人に1人の割合で生まれます。新生児の段階でスクリーニング検査をすることで障害の有無がわかります。
後天性の聴覚障害は病気や薬の副作用、重度の騒音、ストレスなどさまざまな原因で発生します。
若いうちだけでなく、加齢による老化現象として聞こえづらくなることもあります。

分類

聴覚障害は聞こえる程度により2種類に分けられます。
音がほぼ聞こえないかまったく聞こえない場合は「ろう」と呼ばれて、多くの人は日常的に手話を使ってコミュニケーションをとっています。
音が聞こえづらくともある程度聞こえている場合は「難聴」と呼ばれて、障害の原因がある部位によってさらに3種類に分かれます。
難聴は原因がある部位により「伝音性」「感音性」「混合性」の3種類に分けられ、それぞれで治りやすさや治療方法なども異なります。
伝音性は耳の比較的外側にあたる外耳や中耳に障害がある場合で、補聴器や人工内耳手術などで改善することがあります。
感音性は内側にあたる内耳に障害がある場合で、聴覚障害者のうち最も多い分類とされます。混合性は伝音性と感音性の両方が発生している場合を指します。

等級

聴覚障害は聴力の度合いに応じて「6級」「4級」「3級」「2級」という4段階の等級が設けられています。等級は聴力検査や語音明瞭度検査により判断されます。
目安として、6級では40cm以上離れると会話語が理解できず、2級ではほぼ何も聞こえない程度です。
6級では補聴器を使えば会話を聞き取れる場合が多く、障害者雇用ではなく一般雇用で働いている人も少なくありません。
2級では主に手話・口話・筆談を用いてコミュニケーションをとりますが、同じ2級でも人によって聴力や発話レベルなどが異なります。

コミュニケーション手段

聴覚障害者の障害特性は人により大きく変わり、特性の違いに合わせて使用する言語やコミュニケーション手段も異なります。
主に、口の動きや声を組み合わせて意思を伝える「口話」、紙や手のひらなどに字を書く「筆談」、手指の動作や顔の動きで表現する「手話」の3種類が用いられており、なかでも手話を使う人は多いです。
日本で一般に使われる手話は「日本手話」と「日本語対応手話」の2種類があり、聴覚障害者が多く用いる手話は日本手話です。
健常者が一般的に学習する日本語対応手話とは助詞の有無や単語の意味などさまざまな違いがあり、このような違いから同じ手話でありながら意思の疎通が十分にできない場合があります。

 

聴覚障害者の仕事

聴覚障害者は障害の特性により、働ける業種の制限や勤務中のハンディキャップがあります。
聴覚障害者が安心して働くためには、耳が聞こえなくとも問題なく働ける業種であることや、職場から障害に対して理解を得られることなどの条件を満たさなくてはなりません。
しかし、聴覚障害自体への世間の認知度は高く、すでに様々なサポート事例があるため、他の障害者に比べると就職は比較的容易にできるでしょう。
障害者向けの合同説明会や専門の就職エージェントなどのサポートを受けられればより採用されやすくなります。
聴覚障害者が仕事に就くための問題点や就職活動の方法などを以下に紹介します。

主な業種

聴覚障害者は障害の特性上、会話がしづらい人が多いため、働ける業種はある程度限られてしまいます。
しかし、近年ではIT技術が発達したことにより、聴覚障害があっても働ける業種が増加しました。
現代では、倉庫の在庫管理やIT分野でのシステム開発、Webデザインなどのさまざまな仕事に就労することが可能になっています。
聴覚障害者は集中力が高く一つの作業に打ち込める人も多いため、集中力と正確な作業が必要とされる仕事が適しているといわれており、働きぶりに期待をする会社も増えています。
また、ある程度のコミュニケーションが可能であれば事務職など業種の幅はさらに広がるでしょう。

業務上のハンディキャップ

聴覚障害者は健常者のように会話することで意思を伝達できない場合が多いため、コミュニケーションをとるためには別の手段を使う必要があります。
また、1対1の会話はできても、複数人が話す場や、まわりが騒がしい場では内容を理解しづらい場合もあります。
また、耳の不調は体全体の不調に繋がりやすいため、頻繁に休憩を挟まなくてはならない場合もあります。
聴覚障害者が業務の際に抱えるハンディキャップについて以下で詳しく解説します。

ほかの人とコミュニケーションをとりづらい

健常者は会話をしてコミュニケーションをとります。
しかし、聴覚障害の程度によっては会話が難しい場合があり、コミュニケーションをとりづらい問題があります。
必要に応じて筆談や手話などを挟む必要があるため時間を要することも多いです。
文章や手話を使うと口頭での会話に比べて直接的な表現が増えるため、気をつけなければ相手にきつい印象を与えてしまうかもしれません。
ある程度聴力があり会話ができる場合でも、相手の話を上手く聞き取れず何度も確認したり、間違った内容で認識してしまったりする場合があります。

複数人の声を聞き分けづらい

聴覚障害があると複数人で話している声を聞き分けづらくなります。
一対一の会話であれば唇の動きを見て判断できますが、複数人があちこちで話していると理解が難しくなります。
そのため、一般の業務が問題なくできる聴覚障害者でも、会議などでは特別な配慮なしには参加が難しい場合があるでしょう。
ほかにも職場での飲み会やパーティのような集まりで会話に入れず疎外感を感じる場合もあります。
チャットツールや音声認識アプリなど、リアルタイムで会話の文字起こしを行えるツールの使用を上司に認めてもらう必要があるでしょう。

体調が悪くなりやすい

耳に不調があるとめまいや吐き気などの体調不良が誘発されやすく、業務に影響が出る場合もあります。気圧や気候の変化に敏感な聴覚障害者もいます。
また、手話や口話などでの読み取りも人によっては体力を消耗し、身体への負担となります。
体調が悪くなりやすい天候の日や長時間コミュニケーションをとったあとは、こまめに休憩をとれるように職場内の理解を得ておく必要があります。

就職活動の方法

聴覚障害者の就職活動は求人を出している企業に直接応募したり、ハローワークで求人を探したりするだけでなく、障害者向けの合同説明会や障害者雇用に特化した就職エージェントを利用する方法もあります。
特に、就職エージェントは障害者雇用に関する情報を豊富に持っているためおすすめです。
自分に近い障害を持った人の就職事例など参考にできる情報を得られるだけでなく、応募先企業に障害の説明をしてくれるなど、サポートを受けることができます。
聴覚障害者は障害者雇用において企業からの人気が高く、会社の提供できるサポート体制が十分であれば希望どおりに就職できるケースも多いです。

 

聴覚障害者が円滑に働くためのポイント

聴覚障害者がなるべく不自由な面を減らして働くためには、いくつか意識すべきポイントがあります。
会社や職場の人からのサポートはもちろん必要ですが、自分が働きやすい環境は自分が一番よくわかっているものです。
自分から働きかけてより良い職場環境を作っていきましょう。聴覚障害者が働く際のポイントを以下で詳しく解説します。

自分の障害について周囲に伝える

職場で一緒に働く人に自分が聴覚障害を持っていること、音が聞こえづらいことなどを伝えておくことは大切ですが、それだけではなく、「自分はどの程度聞こえるのか」、「どのような状況で不便を感じるか」、「周囲の人に何をしてもらえると嬉しいか」などをわかりやすく伝えましょう。
音が聞こえない感覚はほとんどの人にとって理解しづらく、また聴覚障害者同士でもそれぞれ聞こえる度合いが異なります。
そのため、ただ単に「障害者なので配慮してほしい」と言っても、周りの人は具体的に何をすればいいかわかりません。
最初の自己紹介のときに話したいことや、周知したいことをまとめて紙で配布することも効果的です。

複数のコミュニケーション手段を用いる

聴覚障害者が働く際は、複数の種類のコミュニケーション手段を用意して、使い分けることをおすすめします。
普段使っている補聴器が故障したり、騒音が大きな場所で相手の声が聞こえなくなったりと、状況により普段使っている手段が使えなくなる可能性があります。
また、取引先の相手が手話を使えない、暗い場所のため手元が見えないなどの場面に遭遇するかもしれません。
口話・手話・筆談などの手段を常に複数確保しておくことに加えて、音声文字変換や手話通訳などのサービスも活用できるようにしておけば安心です。

働きやすい環境を自分から作る

上司や同僚などに積極的に相談して、自分が不自由なく働ける環境を自ら作ることが大切です。
障害者本人でなければわからないことも多いため、よかれと思ってしてくれた職場からの配慮が自分には合わない場合があります。
気になる点や改善してほしい点は申し出て、自分が働きやすい環境をつくることが大切です。
例えば、来客に気付きやすくするよう入口に近い席にする、雑音で聞こえづらくならないように音があまり反響しない場所を選ぶ、などです。
ホワイトボードや掲示板などで情報を視覚化してもらうなどの日常的な協力を仰ぐことも必要です。

非常時の対応を事前に決めておく

災害のような非常時にとるべき対応を、あらかじめ職場内で決めておきましょう。
耳が聞こえづらい聴覚障害者は、避難を促す警報などが聞き取れず、危険な状況に陥りやすくなります。
非常時に情報を視覚的に伝えてもらえるような準備を職場にお願いする必要があります。
また、このように警報情報がわからないために避難開始が遅れる可能性があることを職場内で周知し、緊急時の配慮や支援をお願いしましょう。
避難訓練の実施や緊急連絡先を伝えることなども大切です。

 

聴覚障害者に対する周囲の配慮

聴覚障害者が不自由なく働くためには、周りの配慮や支援が欠かせません。
逆をいえば、障害者であっても、適切な配慮や支援さえあれば、生き生きと働くことができるということです。
多くの聴覚障害者が必要とする支援はコミュニケーションに関するものですが、円滑なコミュニケーションができる環境を整えるためには、何が必要なのでしょうか。
聴覚障害者に対して周囲が行う配慮について以下に解説します。

コミュニケーションをとりやすい体制を整える

聴覚障害があっても、職場内で問題なくコミュニケーションをとれる体勢を整えましょう。
本人の希望と職場が対応可能なコミュニケーション手段について、意見をすり合わせることが大切です。
メールやチャット、音声認識アプリなどを活用するとともに、文字だけの指示では冷たい印象になりそうなときは適宜声掛けや面談などの機会を設けると良いでしょう。
また、日常的にやり取りする社外の人にも、聴覚障害についてあらかじめ説明しておくと実際に会った時の対応に困りません。
障害について他の人に話す場合は、必ず障害者本人の許可を得る必要があります。その他、社内研修での社員同士の交流や、朝会で手話の講習を行うことなどもおすすめです。

日常的にコミュニケーションをとる

聴覚障害者と普段から積極的にコミュニケーションを取ろうとする意識が必要です。
聴覚障害があると健常者より情報が得づらくなり、認識に食い違いが生じて業務に支障が出る可能性があります。
特に、会話ができる程度の聴覚障害者は、会話は出来ても会議の内容は聞き取れなかったり、遠くからの声掛けは聞こえなかったりする場合があります。
外見上は障害者とわかりにくいこともあり、ついいつも通りの情報伝達で済ましてしまうこともあるでしょう。
職場に聴覚障害者がいる場合は、情報がきちんと伝わっているかについて、より一層の注意が必要です。
普段のコミュニケーションに加えて、会議後の内容確認や業務の進捗確認、定期面談などのタイミングでも情報不足がないか確認することをおすすめします。
聴覚障害者が使う手話は、口頭で話す日本語と文法や語彙などで異なる点があり、この違いも互いの認識をずれやすくします。
比喩や暗示を用いる表現は誤解されやすいため注意しましょう。

 

まとめ

この記事では、聴覚障害の概要と障害者の就職における特徴、聴覚障害者が支障なく働くために本人や周囲が気を付けるべきことなどを解説しました。
聴力にハンディキャップを抱える聴覚障害者ですが、近年ではIT技術の発達もあり、多くの就労機会が生まれています。
これまで聴覚障害者を受け入れていなかった業種でも、これからは聴覚障害者とともに働く機会があるかもしれません。
聴覚障害者へのサポート体制を整えるためには、全体への周知や必要な機器の導入に加え、本人の要望に柔軟に対応することが大切です。
このようなサポートは会社にとってはある程度の労力や負担がかかるものですが、これからは障害者雇用にかぎらず、会社には様々な形態の雇用が求められる時代です。
従業員の多様な雇用に対応するためにも、労働環境をよりバリアフリーな状態に改善し、またそのための意識を高く持つことは、会社や従業員全体の理にかなったことといえるでしょう。
障害者であっても、周囲の心がけや支援と適切な労働環境で高いポテンシャルを発揮できる人も少なくありません。
障害があっても輝ける社会を目指して、障害者本人と受け入れる会社がともに幸せに働ける環境をめざしましょう。