ASD(自閉スペクトラム症)の転職を成功させるコツは?向いている仕事と転職対策を解説
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)は、社会的なコミュニケーションがうまくできなかったり興味が偏ったりする発達障害のひとつです。近年は、世間の発達障害への理解が深まっている背景もあり、上手にASDと共存しながら仕事ができる環境の企業も増えてきました。
今回は転職活動でお困りのASDの方に向けて、転職活動のコツや対策方法についてお伝えしていきます。
ASD(自閉スペクトラム症)と仕事での困りごと
ASD(自閉スペクトラム症)とは、「対人関係が苦手」「強いこだわりがある」などといった特徴が見られる発達障害の一種です。生まれつきの脳の異常によってもたらされる障害で、日常生活に支障をきたすほど症状が強い方もいらっしゃれば、症状が軽度で日常生活にほとんど支障がない方もいらっしゃいます。
子供のときは少し周りに溶け込むのが苦手な程度の症状でも、仕事をするようになってから大きな苦労を味わい、ASDだと気が付くケースも多いです。
ASD(自閉スペクトラム症)の方が転職で困るポイント
ASDの方のコミュニケーションへの苦手意識やこだわりの強さは、転職活動においても不利に働くことがあります。具体的には、転職において以下の悩みを抱えるケースが多い傾向にあります。
- 協調することが苦手で、物事の優先順位を決められない
- 人との距離感が掴みにくく、良好な人間関係を築きにくい
- 曖昧な指示や感情の裏表を理解しにくい
- 極度なこだわりや行き過ぎた集中で、場に相応しくない行動をとってしまう
- 突然の変更や質問にパニックになってしまう
障害に理解のある環境でないと継続が難しいため、入社前の段階で企業の障害への理解をしっかりと確認しておく必要があります。
ASD(自閉スペクトラム症)の方に向いている仕事・向いていない仕事
就職・転職活動や勤務において困ることも多いASDですが、その特性を仕事の能力として発揮できる職業があることも事実です。例えばASDの方の中には、記憶力が優れている方や興味がある分野への優れた集中力を発揮する方、独自の創造性を持つ方がいらっしゃいます。したがって、清掃や工場の決まった作業をする仕事から、デザイナーやエンジニアなどの創造力を生かせる仕事まで、幅広い転職先を視野に入れることが可能です。
一方で、接客や営業、ウェイトレスなど柔軟な対応や機転が必要になる仕事、複数のタスクを並行する仕事は苦手とする傾向にあります。もちろん、ASDの方でこれらの仕事をこなしている方もいらっしゃいます。しかし障害の性質上、サポートが少なくてもできる仕事としては、個人でコツコツと作業を積み重ねる仕事がやりやすい、と感じる方が多いのです。
ASD(自閉スペクトラム症)の方におすすめの転職対策4選
ASDの特徴や得意な仕事についてわかったところで、次は具体的な転職対策についてみていきましょう。
転職対策① 二次障害への配慮
二次障害とは、発達障害によって引き起こされる「うつ病」などの精神的な障害のことを指します。とくにASDの方はコミュニケーションが苦手なため、集団生活になじめずに精神障害を併発する傾向にあります。
うつ症状を抱えたままでは、転職活動はうまくいきません。無理をすることで、体調をより悪化させてしまう可能性も高まります。まずは医師に相談し、治療を行った上で転職活動が可能かどうかの判断を仰ぎましょう。
転職対策② 自分に合った就労形態・雇用形態を選ぶ
今までの職場環境が合わないと感じる場合は、就労形態や雇用形態を見直してみましょう。
近年はフレックスタイム制やリモートワークを取り入れている企業も増えてきており、時間が固定されている正社員でなくとも契約社員などで時間を調整していただき、無理なく働くことも可能です。また障害者雇用で転職ができれば、障害や体調に配慮してもらいながら自分らしく働くことも可能になります。
正社員や一般枠での雇用が難しい場合でも、雇用形態を変えたり障害者枠で応募したりすると採用率がアップすることもあります。
転職対策③ できることと苦手なことをしっかりと相談しておく
転職活動で失敗しないためには、できることと苦手なことをしっかりと相談しておくことが大切です。とくに障害をオープンにして転職活動をするときは、企業側に前もって苦手な業務を伝えることを意識しましょう。
企業側からすると、どんなことが得意で、どのような業務が苦手かわからない状態の方を採用するリスクは大きいです。あらかじめできる業務とできない業務がわかっていれば、入社後に任せる業務をイメージしやすくなり、採用しやすくなります。
できないことを伝えるのは勇気が必要なことですが、自分だけではなく企業にとってもプラスになることです。不安な業務があれば、あらかじめ相談しておくことをおすすめします。
転職対策④ 就労移行支援や転職エージェントを活用する
就労移行支援は、一般企業への就職を目指している病気や障害のある方を支援する福祉サービスです。具体的には、精神障害や発達障害、身体障害や知的障害、難病をお持ちの方に対して以下の支援を行っています。
- PCスキルやコミュニケーション、マナーなどの基本スキルの取得支援
- 語学やプログラミングなどの専門スキルの学習支援
- 個別面談での体調・精神面の支援
- 就職先の紹介
- 雇用枠の相談や選考対策などの転職サポート
- 就職後の面談など定着支援
障害をお持ちの方の支援に特化しているサービスなため、ASDの方に合う職場の紹介や転職サポートが非常に得意です。サポートを受ける中で向いている職種や興味がある業界など、新しい気づきが得られることもあるでしょう。
また、無料で転職支援が受けられる転職エージェントの利用もおすすめです。現在は障害者雇用専門の転職エージェントもいくつかあるため、プロのサポートを受けながら転職を進めたい方は登録しておくといいでしょう。
まとめ
本記事では、ASDの方の転職対策についてご紹介してきました。ご自身に向いている仕事や苦手とする仕事の傾向を理解し、二次障害を治療しつつ周りのサポートを受けることが、転職成功への近道です。
今まで障害を周囲に隠して働いていた方にとって、周りのサポートを受けることは容易なことではないでしょう。しかし、自分の状況や特性を理解してもらうことで、自分も周囲の方も対策を一緒に考えることで、快適に働けるようになります。