高次脳機能障害が転職を成功させるコツとは?向いてる仕事と仕事術を解説
目に見えない障害のひとつとして、高次脳機能障害というものがあります。あまり聞き慣れない障害ですが、現在数十万人以上もの人が抱えていると言われる脳の障害です。
高次脳機能障害を抱えている方は、記憶力や注意力といった点で、業務上で困ってしまうことが多い傾向にあります。その結果、うまく職場に馴染めなかったり仕事を覚えられなかったりと、勤めていた企業を退職せざるを得ない状況に追い込まれることも珍しくはありません。
そんな高次脳機能障害でお悩みの方が転職活動を成功させるためには、どのようなことを意識すればいいのでしょうか。この記事では、高次脳機能障害の転職のコツについてご紹介します。
高次脳機能障害とは
まずは、症状や障害の特性を改めて整理していきましょう。知識を身につけることにより、ご自身に合った仕事や避けるべき仕事がわかってくるためです。
高次脳機能障害の分類と主な症状
高次脳機能障害とは、事故やケガなどで脳に損傷を受け、脳機能に障害が残ってしまう状態のことを指します。高次脳機能障害には4つの分類があり、以下のような症状が出ることがあります。
【記憶障害】
- 物を置いた場所を思い出せない
- 新しいことを覚えられない
- 言われたばかりのことを忘れてしまう
- 同じ言動を繰り返してしまう
【注意障害】
- 集中力が続かない
- 複数のタスクを同時進行できない
- ぼんやりとしてしまう
【遂行機能障害】
- 計画的な行動ができない
- 指示がないとどうしたらいいかわからなくなってしまう
- 時間や約束を守れない
【社会的行動障害】
- 感情のコントロールができない
- 暴力的な行動を取りやすい
- 周囲のことを考えて行動できない
このように、高次脳機能障害は言語障害や身体の麻痺など顕著に現れる障害ではないため、周囲に理解されにくい特徴を持っています。
高次脳機能障害が仕事でよくある困りごと
高次脳機能障害の方が仕事をする上においては、さまざまな困りごとが考えられます。
仕事でよくある困りごととしては、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 教えられた仕事が覚えられない
- 自分で考えて行動できない
- 同じ業務をずっと続けられない
- 納期を守れない
- 同僚や上司と良好なコミュニケーションが取れない
先述したように、高次脳機能障害は周囲からの理解を得にくい障害であるため、職場において「自己中心的な性格」「やる気がない」と判断されてしまうことがあります。そのせいで障害に対するサポートが受けられず、職場で浮いてしまうことも少なくはありません。
しかし高次脳機能障害の症状は、ときには日常生活を送ることが難しくなってしまうほど重度なケースもあります。そのため、生活や仕事において周囲からの理解を得てサポートを受けることは欠かせないのです。
高次脳機能障害の方が安心して働くためには、障害に配慮してもらえる職場の環境が何よりも大切です。もしも上記のような症状でお悩みなのであれば、転職をしてよりいきいきと仕事ができる職場に移ったほうがいいかもしれません。
高次脳機能障害に向いている仕事
高次脳機能障害の方は、臨機応変に行動したり自分で判断したりする必要がある仕事を苦手に感じるケースが多い傾向にあります。したがって、周囲から指示をもらいながらできる仕事や同じことを繰り返し行う仕事のほうが向いていると言えます。
このことを踏まえると、以下の3つの仕事は、障害を抱えながらも無理なく働ける傾向にあると考えられるでしょう。
①オフィス内での事務仕事
入力やファイリング業務など、オフィス内の事務仕事は、高次脳機能障害の方に向いている傾向にあります。事務仕事は毎月繰り返しの業務が多いですし、すぐ近くに上司や同僚がいてくれます。業務内容を忘れてしまったときや何をするべきかわからなくなったときも、すぐにサポートしてもらえるでしょう。
また、事務仕事は臨機応変な判断が必要ないため、自分のペースで仕事を進められる点もメリットです。確実にこなせる仕事を積み上げていくことで自信につながり、やりがいを見いだせるようになるでしょう。
②店舗の清掃やサポート業務
販売店などの店舗における清掃やサポート業務も、高次脳機能障害の方におすすめです。清掃業務は覚えることがそこまで多くありませんし、難しい判断が伴わないため、ストレスを感じることなく仕事ができるでしょう。
また、品出しや簡単な調理補助などの簡単な店舗サポート業務もおすすめです。高次脳機能障害は症状の性質上、どうしても裏方の仕事が多くなりがちです。しかし、店舗サポートであればほかの仕事よりもお客様の喜ぶ姿を間近で見られる機会が多いため、よりやりがいを感じながら働けるでしょう。
③軽作業
症状が重度な場合や判断力を伴う仕事を苦痛に感じる場合は、軽作業の仕事を検討してみてください。軽作業は決められた作業が多いため、記憶力や判断力に自信がない方でも安心して働けます。
一口に軽作業といっても、荷物の仕分けや梱包、商品管理や組み立てなどさまざまな業務が存在しています。ご自身にとって苦にならないピッタリの仕事を見つけられれば、軽作業であってもやりがいを感じながらステップアップできるでしょう。
高次脳機能障害に向いていない仕事
高次脳機能障害に向いていない仕事は、臨機応変な対応やコミュニケーションを必要とする業務です。例えば、以下のような仕事を難しく感じたり苦痛に感じたりすることがあります。
- 営業職
- 販売職
- コールセンター
- チームで行動する必要がある仕事
もともと上記のような仕事をしていても、事故やケガなどで高次脳機能障害になってしまったあとでは、以前と同じような仕事ができなくなってしまうケースが多いです。ほかの部署に移動させてもらうもしくは転職をするなど、無理なく働ける環境に移ったほうが安心でしょう。
高次脳機能障害の苦手を補える仕事術
高次機能障害を抱える方がご自身の能力を活かしながら自分らしく働くためには、苦手を補いながら仕事をするための工夫が必要不可欠です。ここからは、高次脳機能障害の方におすすめの仕事術について3つ紹介します。
①メモやチェックリストを活用する
高次脳機能障害を抱える方は、注意力が低下したりやるべきことを覚えられなかったりと、ミスが多くなってしまう傾向にあります。こういったミスや物忘れを防ぐためにも、仕事をするときはメモやチェックリストの活用をするようにしましょう。教えられたことはすべてメモに残し、業務の流れをチェックリストにすることで、業務をひとつずつ確実にこなせるようになります。
また、ミスをしてしまったところは付箋などに残し、目につくところに貼っておくようにしておきましょう。最終チェックのために同僚や上司に確認してもらうことも、仕事のミスを防ぐためには有効です。
②マニュアルや指示書を用意してもらう
仕事が覚えられない場合や計画的な業務が苦手な場合は、マニュアルや指示書を用意してもらう対策法がおすすめです。どの段階でどのような業務が必要なのか、どのような方法で作業すべきなのかなどについて詳しく記載したマニュアルがあれば、高次脳機能障害を抱えていてもさまざまな業務をこなせるようになります。
障害について理解のある企業であればマニュアルや指示書を作成してくれますが、なかにはマニュアルの作成をしてくれない企業もあります。その場合は、障害のことを伝え、時間をもらって自分でマニュアルを作成してもいいでしょう。
③やるべきことや予定は可視化しておく
やるべきことや予定を可視化しておくことも、高次脳機能障害を抱える方におすすめの仕事術です。タスクの見える化は物忘れやミスを防いでくれるだけではなく、目の前の仕事に集中できるようにしてくれる効果もあります。「次はこれをやればいいんだ」と理解できるようになり、業務に対する不安を取り除けます。
当日のTo Doリストの作成はもちろんのこと、1週間、1ヶ月単位の予定もしっかりと書き出して毎日確認するようにしましょう。タスクは何でも書き留めておくようにすれば、高次脳機能障害の方でも幅広い業務の遂行ができるようになります。
高次脳機能障害の方が転職を成功させるコツ
高次脳機能障害の方が仕事をするときは、本人による工夫や努力が欠かせません。しかし、障害の特性上、どうしても補いきれない「苦手」は出てきてしまいます。その点は周囲に理解してもらい、配慮やサポートを受ける必要があります。
それでは、高次脳機能障害の方が理解を得られる職場に転職するためには、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。ここでは、高次脳機能障害の方が転職を成功させるコツについてご紹介します。
①発症前のキャリアを活かせる仕事に就く
高次脳機能障害になってしまうと、新しいことを覚えたり新しい環境に適応したりすることが難しくなってしまいます。そのため、できることなら発症前のキャリアを活かせる仕事に就くことが望ましいです。
とはいえ、営業職や販売職などの仕事についていた方の場合、高次脳機能障害を発症したあとに同じ職種へ復職することは難しいでしょう。発症前に勤めていた企業がより負担の少ない職種に配置を変更してくれればいいのですが、難しい障害だからと復職が叶わないケースもあるかもしれません。
この場合は、同じ業界の違う職種に転職をするといいでしょう。今までの経験や業界についての知識を活かせるため、新しい業界に転職するよりも適応までの負担を減らせます。
②配慮を受けながら働ける雇用枠を選ぶ
雇用枠について見直してみるのも、高次脳機能障害を抱える方の転職では大切なことです。症状が重度な場合や障害者手帳を持っている場合は、障害者雇用枠で求人応募をしてみてはいかがでしょうか。
近年は障害への理解が深まってきており、障害者雇用枠であってもキャリアや能力を十分に活かせる求人が増えてきました。障害者雇用枠であれば希望する配慮も伝えやすくなり、無理のない範囲内で業務を任せてもらえるようになります。
また、労働時間や雇用形態について見直してみるのもひとつの選択肢です。長時間の労働がストレスになるのであれば、短時間勤務や勤務日数の少ないアルバイトや派遣社員からはじめてみてもいいかもしれません。やってみて続けられそうな仕事であれば、さらにステップアップするために正社員を目指せばいいのです。
何よりも大切なのは、働くご本人がストレスを感じずいきいきと仕事をすることです。雇用枠や雇用形態にとらわれず、できることからはじめてみてくださいね。
③障害のプロに相談しながら転職活動をする
高次脳機能障害の方が、ご自分の力だけで適性の高い仕事を探すのは難しいことです。どこが障害に理解のある企業かを見極めることは困難ですし、ご自身の適性を自分で客観的に判断することも簡単なものではありません。
より働きやすく適性の高い転職先を探したいときは、ぜひ公的機関や障害者向けの支援を行っている民間企業にご相談ください。障害の専門であるプロが、障害や一人ひとりの特性に合った仕事を探すサポートをしてくれます。
なかでもおすすめなのが、障害者の転職に特化した転職エージェントの活用です。求人の案内はもちろんのこと、選考や入社後のサポートを行うことで、高次脳機能障害の方が働きやすい環境を整えていきます。
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高次脳機能障害の方が仕事をするうえではもちろんご本人による工夫や努力が必要ですが、周囲からの配慮や理解も欠かせません。
高次脳機能障害は目に見えず理解されにくい障害であるため、「性格上の問題」「やる気がないだけ」と勘違いされやすい傾向にあります。もしも今、障害が原因で働きにくさを感じているのであれば、サポートを受けながら働ける職場に転職することを視野に入れたほうがいいでしょう。
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