ヘルプマークとは?対象者・入手方法・利用方法などを分かりやすく解説

2023年3月14日

ヘルプマークと手帳とメモ

駅や町を歩いている中で、カバンに赤いタグのようなものを付けている方を見かけたことはないでしょうか。これは「ヘルプマーク」というもので、さまざまな理由から援助や配慮を必要とする方が適切な対応を取ってもらえるように生み出されたアイテムです。この記事では、そんなヘルプマークの入手方法や使い方、実際に使っている方の声をご紹介します。

 

ヘルプマークとは

ヘルプマークとは、障害のある方や病気の方など「支援を必要とする方」が身につけるマークです。2012年に東京から始まったこのマークは、全国各地に広がっています。
必要な方は、近くの役場窓口などに行けば無料で入手できます。

 

援助や配慮が必要な方のために作られたマーク

冒頭でご紹介したように、ヘルプマークは障害をもつ方や病気の方など、支援・配慮が必要な方が活用するものです。症状やその他さまざまな理由で「自分の口から話せない状況」になったとしても、これを見せれば自分の障害について説明できるようになっています。そのため、障害のある方をはじめ、多くの方がこのマークを身につけています。

また、ヘルプマークは災害時や日常生活の中で困った際にも便利で、難病をもつ方や妊娠中の方も利用が可能です。

そんなこのヘルプマーク、そもそもは2012年に東京都で始まった取り組みでした。
その有用性から現在は多くの自治体に広がり、2014年7月から民間企業への働きかけも行っています。2021年時点で1都1道2府43県へ広がっており、今後はよりいっそう普及していくでしょう。

 

ヘルプマークは無料で入手できる

ヘルプマークを入手するうえで、手帳などの準備は要りません。
自治体によっては「ヘルプマーク交付申請書」が必要なケースもありますが、審査などは行いません。必要な方なら誰でも入手できます。

また、直接もらいに行くことが困難な場合は、代理申請することも可能です。
主な配布場所は、以下の通りです。

  • 都道府県または市区町村役場の担当課窓口、福祉課など
  • 保健所や保健センター
  • 福祉センターや市民センター、障害者相談センター
  • 地下鉄各駅(東京都)など

ちなみに、配布場所に行けず郵送対応もしてもらえない場合には、自分で作ることも認められています。その場合は、東京都福祉保健局のホームページ内にある「ヘルプマーク作成・活用ガイドライン」を確認しましょう。

 

どのような人がヘルプマークの対象なの?

ヘルプマークを使える人は「援助や配慮が必要な方」です。障害や重い病気じゃないと使えない……といったことはありません。これから紹介する障害や病気は具体例なので、これ以外の障害や病気でも、援助や配慮が必要な場合はヘルプマークを使えます。

身体の内部・外部に障害のある方

義足や人工関節を使用している方のように、目に見えて支援が必要な方。てんかん発作がある方や認知症の方。精神疾患や発達障害がある方。臓器などに障害を抱えた「内部障害」のある方などもヘルプマークを利用できます。

なお、一般的には以下のような障害が内部障害と称されますが、配慮や支援が必要な方であれば誰でもヘルプマークを利用できます。

  • 心臓機能障害
  • じん臓機能障害
  • 呼吸器機能障害
  • ぼうこう又は直腸の機能障害
  • 小腸機能障害
  • 肝臓機能障害
  • 免疫機能障害

病気の方や妊娠中の方も使える

難病の方や妊娠初期の方などもヘルプマークを利用できます。
何らか病気にかかっている方・妊婦の方々は疲れを感じやすかったり、吐き気・めまいなどの症状が出やすくなったりすることがよくあります。しかし、その一方でこれら症状は目に見えないため、理解が得られにくい特徴があります。例えば、電車などで優先席に座って休みたいと思っても、優先席に座った際の周囲の視線などを考えて我慢してしまう方もいるでしょう。

しかし、こうした状況でもヘルプマークを持っていれば、自分が配慮を必要としている事実を話さずとも周囲に伝えることができます。一見すると健康そうな方が優先席に座っていても、実は病気と戦っているのかもしれません。ヘルプマークを利用することと併せて、改めて調子が良い時は席を譲ったり、声をかけたりするなど、お互いに配慮の気持ちを持ちましょう。

 

ヘルプマークの利用方法

ヘルプマークは、周りの人に見える場所につけておくことが大切です。
例えば、バスで体調が悪くなってしまい席を譲ってほしいときなどには、このマークを見せれば「体調が良くないのかな」と気づいてもらえるでしょう。

また、もしもの時どういった対応をしてもらいたいのか、配慮の内容を具体的に記入しておくことも重要です。

 

周囲の人から見えやすい場所に付ける

配布されているヘルプマークにはストラップがついているため、リュックやバッグなどに付けると良いでしょう。ヘルプマークは決して恥ずかしいものではありません。いざという時に「周りの人から見えること」が重要なので、ハッキリ見えるように付けることをおすすめします。

 

もしもの時の対応を記入しておく

配布されたものによって場所は異なりますが、多くの場合、ヘルプマークの裏側には名前や緊急時の電話番号などを記入できるスペースがあります。この部分を書いておけば、症状やさまざまな理由で「自分の口から話せない状況」になったとしても、自分がどんな配慮・支援を求めているのか伝えることが可能です。具体的には、以下のような情報を記入しておくと良いでしょう。

  • 利用者の情報(氏名や電話番号)
  • 緊急時の連絡先(家族やかかりつけの病院など)
  • 配慮してほしいこと
  • 手伝ってほしいこと
  • 通院・服薬の状況
  • アレルギーの有無

必要なときだけ付けるのもOK

ヘルプマークはもらったら必ず付けなければならないものではありません。

体調が良い日など、支援や配慮が不要な場合は付けないで過ごしても良いのです。
そのため、症状が発生しやすい場所に行くときや交通機関の利用時、施設の利用時、役所の利用時など多くの人が行き交う場面で利用することをおすすめします。

また、地震などの災害時に対応してもらえるよう、普段使っているカバンなどに入れておいて、すぐに出せるように準備しておくと安心です。

 

ヘルプマークを使っている人の声

実際にヘルプマークを持っていると、どんな支援が受けられるのでしょうか。
ここでは、東京都福祉保健局のサイトで公開されている「ヘルプマーク利用者の声」の一部をご紹介します。

 

助けてもらいやすくなった

ヘルプマーク最大の目的である、説明しなくても「配慮が必要」なことを伝えられた事例をご紹介します。

外見ではわからないもののヘルプマークを付けている方

 ヘルプマークをいただいたきっかけは、通勤ラッシュ時に男性のひじが体にあたり、胸に入っているカテーテル(透析用)を固定する糸が切れてしまったエピソードからでした。外見からはなんの障害もなくカテーテルが入っているようには見えないので、自分の身の安全を確保するためにいただきました。
ヘルプマークをバッグにつけるようになってからは、周囲の方からなんとなく気を使っていただいているように感じられます。先日は透析後体調不良で電車に乗っていたら、快く座席を譲っていただけました。私のように、外見からはわからない障害をもっている人にはありがたいマークです。自分が元気な時は、このマークを付けている方のお手伝いが出来たら良いと思います。

49歳/その他

(引用:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/helpmarkforcompany/lp/episode.html)

 

障害ではないものの、難病をもつ方

 私は特定疾患を持つ患者であるが、障害者手帳を持たない。
ヘルプマークは、障害者手帳の有る無しに関わらず斬新である。その定義は単純明快。外見では伝え難い不自由さを抱える者に寄り添い、広義にわたる使用を許される。病名や障害の部位に限定されることもない。この理念は、実に画期的である。これに助けられる当事者の数だけ、その心も救われることだろう。私もその内の一人だ。
私がヘルプマークを手にしたのは、平成25年の秋頃であったと思う。当時は、私のような当事者を見かけることは少なかった。だが、めげることなく使い続けて今に至る。当初はヘルプマークの周知に乏しくとも、いつの日か必ずや、ヘルプマークが今より知れ渡ると信じて使い続けた。当事者たちが掲げることによって、その存在が認知される一助になるだろう、そう考えた。私もその一員になろうと思った。
無論、公式な啓発活動なくして普及はありえない。交通機関や病院内でヘルプマーク啓発のポスターなどを目にするのは有難い。近年では、民間企業への働きかけにも力を入れてくださっている都の取り組みに感謝したい。
ある時、電車内でスーツ姿の40代と思われる男性が席を譲ってくれた。私のヘルプマークに目をやった後の行動だった。彼がヘルプマークを知っていたのも、都の働きかけによるものかも知れない。

35歳/自営業

(引用:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/helpmarkforcompany/lp/episode.html)

 

持っているだけでも安心できる

続いて、体調に合わせて活用している事例を紹介します。

 

調子が悪いと文字を読めなくなってしまう、といった特徴のある方

 私は都内在住の精神障害者で、夫と二人で暮らしています。遠距離通勤を週5日しています。私は障害特性からとても疲れやすく、また調子が悪いと文字の意味がわからなくなるという障害があります。移動にはいつも残りの体力を考慮しています。
イレギュラーな事態にとても弱いという特性もありますが、ある時、いつも利用している電車が運転見合わせになってしまったことがありました。新宿駅は乗客たちで大混雑・大混乱。駅員さんへ怒号を飛ばしている人もいて、私は怖くなって壁に寄りかかるようにしてなんとか立っていました。思考がうまく回らず、ベンチを見つけることができなかったのです。私はリュックサックにヘルプマークをつけているのですが、それが見えるような状態でのしんどそうな様子の私を見て、若いOL風の女性が声をかけてくれました。「大丈夫ですか?」その優しい声かけに、少しホッとしました。私は「ありがとうございます。今、駅構内の文字放送の意味が分からず、音声案内も聞き取りづらくて困っています。どこか休める場所はないでしょうか」と伝えると、その女性は「改札を出た先にファーストフード店があります。そこで休んではいかがですか。よかったら案内しますよ」と言ってくれました。そして、一緒に改札を出て、混雑の中、近くのイスのあるファーストフード店まで案内してくれました。私が「ありがとうございます」とお礼を言うと、その女性は「困ったときはお互い様ですから」と笑顔で返してくれ、去っていきました。
「お互い様」。この言葉は、私の中で宝物です。この経験以降、私は自分が優先席などに座っている時、ヘルプマークやマタニティマークなどを着けた方がいたら積極的に声をかけるようになりました。自分の体調と相談しながらですが、私もまた「助けられる側」から「手を差し伸べる側」になれるのだと実感した出来事と言葉でした。

35歳/会社員

(引用:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/helpmarkforcompany/lp/episode.html)

見た目に異常がないため気付かれにくい病気を抱えている方

私は多発性硬化症という難病を患っています。見た目は何も異常がありません。だから、一見して病気を理解してもらうことはできません。ヘルプマークの存在を知ったのは、自分が難病になってからでした。これがあれば、優先座席に座る罪悪感が少しは無くなるのになぁと思っていました。その頃はまだ、私が住んでいたところではヘルプマークは配布されていませんでした。
私は、しんどくない時もあります。そんな時はヘルプマークをカバンにしまっています。しんどくて優先座席に座っている時だけ、ヘルプマークをつけています。お年寄りの方とかに譲れないのが申し訳ないので。
ヘルプマークは、カバンにしまっているだけでも安心感があります。私に何かあった時、これを見てもらえば、「この人、普通に見えるけど何かあるんだな」と救急隊員の人には思ってもらえるかも、という安心感です。
見た目で病気をわかってもらえない人の拠り所になるよう、ヘルプマークが、ずっと、もっと、普及することを願います。

42歳/フリーター

(引用:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/helpmarkforcompany/lp/episode.html)

 

まとめ

手をつなぐ男女とリュックに付けられたヘルプマーク

ヘルプマークとは、援助や配慮が必要な方が身に付けるマークです。身体の内部・外部に障害や病気のある方、妊娠中の方などが利用できます。駅や役場窓口などで入手でき、費用はかかりません。
何かあったときに「どんな配慮をしてほしいのか」「緊急連絡先はどこか」などの情報をヘルプマークに記入し、普段使っているカバンに付けておけば、必要なときに見せて使えます。
ぜひ、自分の体調と相談して身につけてみましょう。