身体障害とはどんな状態?認定基準や等級、身体障害者手帳の取得方法について解説

2023年3月20日

身体障害者マーク

身体障害とは、先天的あるいは後天的な理由で身体機能に障害が生じている状態を指します。身体障害の対象となる部位は手足や臓器などさまざまで、障害の度合いによって等級が変わります。

この記事では、身体障害の種類と認定基準、等級などについて解説します。身体障害者手帳の交付条件や必要書類、支援制度についても紹介しているため参考にしてみてください。

身体障害とは?

身体障害とは、先天的な要因もしくは病気、事故などの後天的な要因によって身体機能の一部に障害が生じている状態です。
身体障害者福祉法の第4条では、身体障害者は身体障害手帳を交付されたものと定義されており、障害者の等級は「身体障害者福祉法施行規則別表第5号」に記載されています。

なお、厚生労働省の「生活のしづらさなどに関する調査」によると、2016年時点での身体障害者手帳の取得者数は428.7万人で、障害者人口は増加傾向にあります。

身体障害の種類

前述したように、身体障害として分類される症状は身体障害者福祉法で定められています。
ここでは、身体障害者の定義と概要について見ていきましょう。

視覚障害

視力が一定値より低い、もしくは視野角が狭くなる「視野狭窄」が視覚障害として分類されています。視覚による情報をほとんど、もしくは全く得られない状態を「全盲」、生活を送る上で視覚補助具を必要とする状態を「弱視」といいます。

視力の低下や視野狭窄が生じる原因は主に、白内障や網膜症、網膜色素変性などです。
視覚障害の判定を行う際には、視力測定に関しては万国式視力表、視野の判定に関してはゴールドマン型視野計もしくは自動視野計を用いて行うことが障害者福祉法で定められています。

聴覚または平衡機能の障害

聴覚障害は音や話し言葉などが聞き取りづらい状態を指しており、聞き取れる音量の大きさに応じて等級が決められています。
聴覚障害が生じる一般的な原因は主に脳腫瘍や中耳炎、老人性難聴などです。先天的な聴覚障害である場合、言語習得の遅れが生じることがあります。

平衡障害は三半規管や脳機能の異常などによって平衡感覚が著しく損なわれている状態で、めまいやふらつき、まっすぐ歩けないなどの症状が一般的です。

音声機能、言語機能またはそしゃく機能の障害

音声機能障害とは、喉頭や発声筋などに障害があることで発声に支障がある、もしくは発声できない状態です。喉頭の摘出や発声筋麻痺などが音声機能障害の主な原因になっています。

言語機能障害は発音や言葉の聞き取りが行えず、言語機能に障害がある状態です。
先天的な聴覚障害によって音声言語が扱えなかったり、後天的な脳障害によって言語機能が低下したりします。
そしゃく機能障害は、筋肉、神経などの障害によって、食べ物をかみ砕いてのみ込む動きが正しく行えない状態です。そしゃく機能障害がある場合、食べ物を細かくしたり流動食にしたりする必要があるなど、食事の内容や方法が著しく制限されます。

肢体不自由

肢体不自由とは、手足や体幹部に欠損もしくは機能障害があることで日常生活に支障がある状態です。機能障害の度合いや欠損している部位に応じて等級の区分が定められています。

肢体不自由の主な原因は、先天的な機能不全、後天的な脳疾患や病気、負傷などによる四肢の切断です。

内部障害

内部障害とは、人体の内部器官に障害があることで日常生活に支障がある状態です。
身体障害者福祉法では「心臓機能障害」「腎臓機能障害」「呼吸器機能障害」「ぼうこう・直腸機能障害」「小腸機能障害」「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害」「肝臓機能障害」の7種類が内部障害として分類されています。

身体障害の等級

身体障害の等級は身体障害者福祉法によって定められており、区分は障害の種類や程度に応じて1〜7級までです。身体障害の種類および等級は「身体障害者福祉法施行規則別表第5号」に記載されています。
身体障害者手帳の交付を申請する際には、表に記載されている障害に該当していることを証明する医師の診断、意見書が必要です。

視覚障害

視覚障害による等級は1〜6級までに区分されています。
身体障害福祉法では「両目の視力がそれぞれ0.1以下」「一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下」「両目の視野がそれぞれ10度以内」「両目による視野の2分の1以上が欠けている」状態が視覚障害です。

なお、万国式試視力表で測定したことと、屈折異常がある方は矯正視力を測定したことが条件となっています。

聴覚障害

聴覚障害による等級は2級から4級、および6級に区分されます。
身体障害者福祉法では「両耳の聴力レベルが70デシベル以上」「一側耳の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳の聴力レベルが50デシベル以上」「両耳による最良の語音明瞭度が50パーセント以下」の状態が聴覚障害とされています。

平衡機能障害による等級は3級もしくは5級に区分されます。
身体障害者福祉法では「平衡機能の著しい障害」は5級、「平衡機能の極めて著しい障害」は3級に区分される症状とされています。

肢体不自由

肢体不自由による等級は1級から7級までに区分されています。身体障害者福祉法での取り決めは以下の通りです。
  • 上肢、一下肢又は体幹の著しい障害で、永続するもの
  • 上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの
  • 下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
  • 両下肢のすべての指を欠くもの
  • 上肢のおや指の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの
  • 1から5に掲げるものの他、その程度が1から5までに掲げる障害の程度以上であると認められる障害

内部障害

内部障害による等級は1級から4級までに区分されており、障害の種類によって等級の区分や基準が異なります。
身体障害者福祉法では「心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害その他政令で定める障害で、永続し、かつ、日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められるもの」が、身体障害者手帳の交付に相当する障害の定義です。

 

身体障害者手帳について

身体障害者福祉法で定められた障害がある方は、福祉事務所もしくは市役所で交付申請を行うと身体障害者手帳の交付を受けられます。
障害者手帳の交付を受ける主なメリットは、障害者雇用への応募や障害福祉サービスの利用などを行えることです。

ここでは身体障害者手帳の交付条件、基本的な必要書類と交付までの流れをご紹介します。

交付条件

身体障害者手帳は、身体障害者福祉法で定められた身体上の障害がある方に交付されるものです。

対象となる障害が一定以上で永続するもので、6級以上に区分される障害がある、もしくは7級に区分される障害が2つ以上あることが身体障害者手帳の交付条件となります。
7級に区分される障害は単独では交付の対象になりませんが、6級以上の障害と重複しているケースは交付対象です。

なお、身体障害者手帳の交付を受けた後に更生医療や訓練などによって障害の状態が変化した場合、自治体から再認定の手続きを指示されることがあります。
「再認定」とは検査によって障害の程度に変化が認められた際に、手帳の再交付もしくは返還を指示される制度です。

必要書類

身体障害者手帳の交付申請を行うには、交付申請書、診断書(発行から1年以内)、本人の顔写真(縦4cm×横3cm)、マイナンバーが確認できる書類が必要です。
都道府県や自治体によって必要書類は異なる場合がありますので、申請前に問い合わせしてみましょう。

交付申請書と診断書は、交付申請を行う役所の窓口で入手できます。ただし、交付申請に用いる診断書の作成は、身体障害者福祉法15条で定められた指定医に依頼する必要があるため注意しましょう。
お住まいの地域で診断書の作成を依頼できる指定医については、交付申請を行う役所の窓口に問い合わせることで確認することができます。

ちなみに、最近では平成28年1月に「行政手続における特定の個人を識別するための利用等に関する法律」(番号法)が施行されたことで、平成28年1月1日以降に身体障害者手帳の申請を行う際にはマイナンバーが必要となりました。
申請者本人が手続きを行う場合、マイナンバーカードもしくは通知カード、身分証明書が必要です。

また、交付条件を満たす方が15歳未満である場合、その保護者に対して身体障害者手帳が交付されるよう、身体障害者福祉法15条で定められています。
交付申請を行う際には代理人となる方の戸籍謄本、マイナンバーカードなどが別途必要になることがあるので確認の上で申請しましょう。詳細は申請を行う自治体の窓口に問い合わせてみてください。

交付までの流れ

身体障害者手帳を申請してから交付されるまでには、1か月から2か月ほどの期間を要するケースが一般的です。
最初に役所で交付申請書と診断書を取得した後、指定医で診断を受けて提出用の診断書・意見書の様式を受け取ります。必要書類が揃った後、役所の窓口で交付申請を行うことで障害認定の手続きを経て障害者手帳が交付されます。

ただし、障害認定の過程で指定医の診断書・意見書に記載された内容に疑義が生じた場合、指定医の意見と異なる等級に認定されたり、身体障害者手帳の交付を却下されたりすることがあります。
交付までの流れは自治体によって異なる場合があるので、詳細は申請を行う自治体の障害福祉窓口で確認してください。

 

身体障害を持つ方が受けられる支援

身体障害者福祉法で定められている身体障害を持つ方は、年金事務所や都道府県の自治体などで手続きを行うことでさまざまな経済的支援、生活支援を受けられる場合があります。

障害年金の受給や日常生活の支援、身体機能向上を目的とした訓練など、身体障害者を対象とした支援内容は多岐にわたるので、障害の状態に応じて助けとなるものもあるでしょう。

支援制度の利用を検討する際には、それぞれの制度の適用条件や手続き先を把握しておくことが大切です。以下で詳しく見ていきましょう。

経済的支援

経済的支援に該当するものには、主に障害年金・更生医療・心身障害者医療費助成制度の3種類が存在します。

障害年金

身体障害者手帳の交付条件に該当している方は、年金事務所で障害年金の受給申請を行うことで障害年金を受給できる場合があります。

障害年金の申請を行うには、障害の原因になった傷病の初診日、保険料納付状況、障害内容を証明できる診断書等の情報、書類が必要です。
初診日の時点で国民健康保険に加入している方は障害基礎年金1級もしくは2級、厚生年金保険又は共済年金に加入している方(過去に一定期間加入していた方)は障害厚生年金1級から3級もしくは障害手当金の支給対象になります。

障害基礎年金の支給額は1級が97万2,250円、2級が77万7,800円です。障害厚生年金の支給額は厚生年金保険の加入期間に応じて決まる仕組みになっており、厚生年金保険の加入期間が25年未満の場合は25年として報酬比例部分の計算が行われます。

更生医療

更生医療は自立支援医療の一種であり、各自治体の役所で申請手続きが行えます。
身体障害の除去、軽減を目的とした治療で確実に効果が見込める18歳以上の方を対象として、必要な自立支援医療費の支給を行う制度です。

心身障害者医療費助成制度

身体障害者手帳の交付を受けている人は、心身障害者医療費助成制度の対象になる場合があるのでこちらもチェックしておきましょう。
各自治体に設置された福祉窓口で申請を受け付けており、医療保険の対象となる医療費、薬剤費などが対象になります。

適用条件は自治体によって異なりますが、東京都の場合は身体障害者手帳1級又は2級(内部障害については3級も含む)の交付を受けていることが、心身障害者医療費助成制度の適用を受ける主な条件です。

生活支援

生活支援に該当するものには、相談支援事業所・自立訓練・生活介護の3種類が存在します。

相談支援事業所

障害者の自立を支援する施設として、相談支援事業所があります。
自治体と連携している事業所を利用したい場合も含め、申請は基本的に自治体の窓口で行います。

障害者を対象とした相談支援事業所は、障害児通所サービスの案内、利用している通所サービスの見直し提案といった情報提供を実施している施設です。
相談支援事業所は、対応する相談内容に応じて「基本相談支援」「地域相談支援」「計画相談支援」「障害児相談支援」の4種類に大きく分類されています。

基本相談支援はさまざまな相談を受け付ける窓口であり、必要に応じて連絡体制の確保や不安解消を目的とした相談対応などを実施していることが一般的です。

自立訓練地域

生活を営む上で一定の支援が必要な方は、障害者支援施設や障害福祉サービス事業所で自立訓練を受けられます。この制度も、利用申請は自治体の窓口を通して行う場合がほとんどです。

自立訓練は大きく分けて、身体機能向上を目的とした機能訓練、生活能力向上を目的とした生活訓練の2種類です。原則として機能訓練は1年6か月、生活訓練は2年が利用期間の上限と決められています。

ただし、長期間入院していた、または相応の理由がある場合、生活訓練の利用期間を3年に延長することが可能です。

生活介護

身体障害などにより常時介護を必要とする方は、自治体の役所に申請を行うことで生活介護を受けられます。
生活介護の内容は入浴・排せつ・食事等の介助や創作的活動、生産活動の機会の提供などです。生活介護のサービス利用には、50歳未満であれば障害支援区分3以上、50歳以上であれば障害支援区分2以上であることが条件になります。

なお、障害支援区分については市町村による認定調査と医師の意見書を合わせて、市町村の方で認定される仕組みです。

 

身体障害がある方の仕事の探し方

身体障害を持つ方が仕事を探す際には、一般雇用や障害者雇用での就労を目指したり、一般就労に向けて福祉サービスを利用したりすることが一般的です。求人情報を取り扱う場所や福祉サービスの種類を複数把握しておくと、自分の目的に適した仕事を探しやすくなります。

公共職業安定所

公共職業安定所(ハローワーク)では、一般枠もしくは障害者雇用枠の求人情報が掲載されています。
障害者雇用枠は、原則として障害者手帳を持っている方を対象とした求人募集です。障害があることを応募先に知らせた上で就職活動を行う(オープン就労)ので、障害に対する理解や合理的配慮を受けやすくなるメリットがあります。

公共職業安定所では職業相談や求人情報の提供、障害者職業センターの案内といったサービスを受けることが可能です。公共職業安定所での求人検索や職業相談などは、障害者手帳の有無にかかわらず利用することができます。

また、障害により来所が難しい方が求人を検索したい場合は、ハローワークインターネットサービスを利用するのもひとつの方法です。

障害者職業センター

障害者職業センターは、就職又は職場復帰を図る障害者を対象として、職業相談や就職準備支援、定着支援などを行う施設です。
公共職業安定所や障害者雇用を行う企業などの機関・企業とも連携しており、就職活動の進め方や職業に関する技能習得に向けた支援などを受けられます。
障害者職業センターは全国各地に存在しており、障害の種別や障害者手帳の有無に関わらず利用することが可能です。

就労移行支援

就労移行支援は、一般就労を目指す65歳未満の方を対象とする就労支援サービスです。
就職に必要な知識やスキル、体力などを向上させることを主な目的として、就職に向けたトレーニングや就職活動のサポートなどを受けられます。
就労移行支援を利用できる期間は原則として2年ですが、必要性が認められた場合に限り、利用期間を最大1年延長することが可能です。

なお、就労移行支援の利用を開始するには、先に自治体の窓口で障害福祉サービス受給者証の申請手続きが必要です。障害福祉サービス受給者証が発行されてから就労移行支援事業所と利用契約を結ぶことで、就労移行支援を利用できるようになります。

ちなみに、就労移行支援はあくまで一般就労に向けたトレーニングを提供するサービスであることから、工賃作業以外での賃金は発生しないため注意しましょう。

就労定着支援

就労定着支援は、就労移行支援や自立訓練などの利用を経て一般就労に移行した障害者が継続的に就労できるようにサポートを行う制度です。
職場への定着を目的として、就労した障害者との定期面談や企業担当者との情報共有などが実施されます。

就労定着支援を利用できる期間は最大3年6か月です。生活介護や自立訓練を経て一般就労した場合、就労から6か月間は所属していた事業所が定着支援を担当し、6か月経過後に最大3年間の就労定着支援へ申し込むという仕組みになっています。

なお、就労定着支援は支給期間が1年を超える場合、1年ごとに支給決定期間の更新手続きが必要です。就労定着支援では利用料の1割を利用者が負担し、9割を自治体が負担する仕組みになっています。
利用者の所得に応じて負担上限月額が設けられており、生活保護受給世帯もしくは市民税非課税世帯は負担上限月額が0円です。

就労継続支援事業所

就労継続支援事業所は、一般就労が困難である方を対象として、就労および生産活動を行う機会を提供する障害福祉サービスです。
就労継続支援はA型とB型に分類されており、就労継続支援A型は雇用契約に基づく就労を行える方、就労継続支援B型は雇用契約に基づく就労が困難である方を対象としています。

就労継続支援は利用期間の制限が設けられていない障害福祉サービスであり、通所を通じて一般就労への移行に必要な支援、訓練を行うことができる施設です。
就労継続支援A型は利用者と雇用契約を締結することが特徴で、仕事を通して利用者には所定の給与が支払われます。
就労継続支援B型は仕事を通して利用者に工賃が支払われることが特徴で、平均的な収入はA型の方が安定しているといえます。

ただし雇用契約を結ぶA型の場合、先にご紹介した就労移行支援と併用することはできず二者択一となります。将来的に一般就労を目指す場合は、得られるスキルや収入などを比較し、どちらに通所するのが適切なのか十分検討する必要があるでしょう。

 

まとめ

身体障害は視覚や聴覚、内部器官などの身体機能に支障がある状態で、一定以上の障害を持つ方は身体障害者手帳の交付を受けられる場合があります。身体障害者手帳の申請から交付までには1~2ヵ月ほどかかることが一般的で、各自治体の役所で申請手続きが可能です。

身体障害者を対象とした経済的支援、生活支援にはさまざまなものがあり、相談支援事業所や年金事務所などの関係機関で支援制度の相談を行うことができます。

一般就労への移行を目指す場合、就労移行支援や就労継続支援などの利用を検討することも一考しましょう。