肢体不自由の方が働きやすい仕事とは?|障害者雇用枠での就職

2020年7月13日

肢体不自由を抱えながら仕事をする方には、働きづらい、長く続けられるかどうか不安、と感じている方も少なくないでしょう。中には「自分の障害のせいで、迷惑をかけているのではないか」と思う方もいるのではないでしょうか。肢体不自由の方が仕事をする中で感じる困難は、本人が工夫や努力をするだけでなく、周囲の理解と配慮があって初めて取り除かれるということも多いです。障害があるからと言って仕事を諦めず、能力や意欲を活かして働くためにも、肢体不自由の方によくある困りごとや、それに対する対処法、困りごとに出会いにくい職場環境について、知っておきましょう。

肢体不自由の方の仕事でのよくある困りごと

肢体不自由の方は、仕事をするにあたって、様々な局面で物理的な障壁に出会う可能性があります。また、痛みや痺れといった目に見えない困難を抱える方の場合は、周囲の人から怠けていると思われることもあります。例えば以下のような状況が考えられます。

通勤ラッシュ時の電車やバスでの通勤に苦労する

肢体不自由の方で、狭い通路や階段を通るのが難しいという場合、混雑時には余計に移動に時間がかかってしまうことがあります。また通勤ラッシュ時は電車の中で座ることができない場合も多く、痛みや疲れが出やすいことから立っているのが辛いと感じることもあります。車椅子で移動したいが、混雑した電車に乗るために無理をして杖を使って通勤している、という方もいます。

社内外の移動、荷物の持ち運びが難しい

階段や段差は社内にもあり、移動に困難を感じる方も多くいます。荷物や配線など、床に障害物がある場合、躓きやすい、車椅子の旋回のスペースがない、といったこともあります。段差や障害物はなくともオフィス内が広いために、移動に時間がかかる、立ち座りの動作が困難だということもあり、呼ばれても相手のところにすぐに行けない、という場合もあります。

外回りの多い仕事においても、移動に時間がかかる、思うように移動できない、といった困難を抱える方がいます。

また、手や腕を片方しか使うことができない、握力が弱い、関節が曲がらない、という場合は、荷物を自力で持ち運ぶことができないことがあります。

デスクや会議室など、社内の設備が使いづらい

肢体不自由の方は、デスクや椅子の高さが合わないことがあり、高さの調整ができないと使いづらいと感じることがあります。入館・入室時にセキュリティカードをかざす、本棚や戸棚にあるものを取る、コピー機を使う、といった動作も、高いところに手を伸ばさなければならない場合、自力ではできないことがあります。

温度調整が難しい

手足を動かしにくいと、服の着脱に時間がかかり温度調整をしづらいことがあります。また、脳性麻痺などの脳原性疾患があると、随伴障害として、皮膚感覚やその他の知覚の低下・喪失、体温調整機能の低下といった症状を持っていることがあり、この場合も自力での温度調整が難しくなります。

肢体不自由の方が仕事を続けていくために工夫できること

それでは、肢体不自由の方が仕事を続けやすくするために、自分で工夫できることには、どのようなことがあるのでしょうか?

通勤の時間や手段を変える

通勤ラッシュを避けるために、通勤時間をずらす、通勤ルートを変える、公共交通機関を使わずに通勤する、といった方法が考えられます。ただし、時差出勤制やフレックスタイム制といった制度があること、混まない電車やバスの利用、自動車・バイクでの通勤を許可してもらえることが前提になります。

力仕事や移動を伴わない仕事に専念する

同じ仕事・職場の中でも、物理的な作業をPC上での作業に置き換える、外回りの予定を避ける、力仕事や移動の求められないポストに配置転換してもらう、といった工夫が考えられます。ただし、障害の特性に応じて仕事の仕方やポストを変更してくれるような柔軟さのある職場にいることが前提となります。

助けが必要なことを明確にし、職場内に共有しておく

助けが必要な作業については、「手にものを持った状態での階段移動ができない」「10キロ以上のものを持ち運ぶことができない」などと明確にしておきましょう。そうすることで、困難な作業を指示されることも少なくなり、自力ではできない作業が発生した場合も助けを呼びやすくなります。温度調整についても、暑すぎたり寒すぎたりしないかという声掛けをしてもらう、空調を調整してもらう、といった簡単な配慮だけでも過ごしやすくなりますので、障害の特性と配慮してもらいたいことを正しく伝えておくのが有効でしょう。

肢体不自由の方にとって働きやすい職場・働き方

肢体不自由の方が、自分なりに工夫したとしても、働きづらさが残ることがあります。職場の制度や物理的環境、人間関係からして、そもそもそのような工夫をすることができないということもあります。そのような場合は、自分にとって働きやすい仕事や職場環境を選び直すことを検討してみても良いかもしれません。特に障害者雇用枠での転職の場合は、障害の特性に応じた配慮を受けやすくなっています。

通勤の時間や手段へ配慮がある職場を選ぶ

時差出勤制やフレックスタイム制といった制度のある職場や、自動車・バイクなどでの通勤が認められている職場であれば、通勤ラッシュを避けやすくなります。在宅勤務のできる仕事を選ぶのも一つの手です。ただし、自動車・バイクでの通勤は、東京をはじめとした都心部では認められていない場合が多いため、注意が必要です。障害者雇用枠での転職の場合は、既存の制度や規則に囚われず、通勤時間・方法を個別に変更することのできる可能性も高くなります。

力仕事や移動を避けやすい職種・業界・職場を選ぶ

力仕事や移動のない職種や業界を選ぶと、仕事をする中で困ることも少なくなります。例えばPC操作や電話がメインの事務職、座ったまま対応できる受付業務などが考えられます。なお、同じ職種でも、業界特性や企業風土によって、紙媒体での作業が中心になっている場合は、重い書類を持ち運んだり、書類の整理やプリンター操作のために体を動かしたりする機会が多くなると考えられるため、注意が必要です。

障害者雇用枠での転職の場合は、どのような職種・業界であっても、力仕事や移動の必要な作業を減らしてもらうなどの配慮をしてもらえることが、総じて多くなります。また、インターンや実習などの形で実際に仕事を体験し、無理なく働けるかどうか事前に確認することができる場合もあります。

移動や業務をするのに快適なオフィス環境がある職場を選ぶ

移動に困難のある方は、オフィスの広さや構造、関係部署のあるエリアを事前に確認できる場合、できる限りデスク間・フロア間の移動の少ない職場を選ぶと良いでしょう。

ただし、このような職場の物理的な環境の観点のみで仕事を選んでしまうと、希望する企業や職種、業界に就職・転職することができなくなる可能性もあります。

障害者雇用枠での転職であれば、同じ企業や職種、業界であっても、移動に不便のない部署に配属してもらう、移動の少ない仕事を回してもらう、といった配慮を受けやすくなります。障害の特性や配慮してもらいたいことを積極的に聞き入れてもらえることも多くなるので、肢体不自由の方が快適に過ごせるよう、通路にものを置かない、空調を柔軟に調整する、といった工夫を周囲の人がしてくれることも多いです。職場環境の確認の目的で、入社前に企業を訪問できる場合もあります。

肢体不自由の方が転職を考えるときは障害者雇用専門の転職エージェントの利用がおすすめ

肢体不自由の方が、障害者雇用枠での転職を検討している場合は、障害者雇用専門の転職エージェントを利用するのがおすすめです。

自分に合った仕事を見つけたり、配慮してもらいたいことを企業側に十分に伝えたりするのは難しい、と感じることも多いでしょう。転職エージェントに登録すると、専門のアドバイザーが障害の状況や希望の職種・条件を詳細にヒアリングし、適切な仕事の紹介を受けられます。また実際に面接を受けるにあたって、配慮事項やその他に企業に伝えておいた方が良いことを一緒に検討したり、配慮事項を事前に企業側に伝えてもらったりすることができます。

肢体不自由の方が、働きづらい、今の仕事を続けるのが難しいと感じる場合は、障害者雇用専門の転職エージェントの利用を検討してみると良いでしょう。