障害者枠の給料は安いって本当?障害者雇用の概要やメリット・デメリットと併せて紹介

2023年3月20日

「障害者雇用枠とはどのようなものか」と聞かれて、あなたはすぐに答えられるでしょうか。一般雇用と業務内容が違う、賃金などの条件も相応、そんな漠然としたイメージをお持ちの方も多いと思われます。
本記事では働くための重要なモチベーションである給料をはじめ、障害者枠で働ける条件や、障害者枠で転職をするメリット・デメリットなど、障害者雇用の実情について幅広く解説します。

障害者雇用について

障害者雇用とは、企業や自治体が障害のある方のために設けている「障害者雇用枠」における雇用のことです。

障害によって労働に一定の制限がある方は、一般就職をしようとしても同条件で働けないことが多くあります。そのギャップを解消し、障害のある方が能力や適性に応じた就労の機会を得ることができるよう定められたのが、障害者雇用枠です。

法律で定められている雇用の枠組み

一定人数以上の従業員がいる企業や自治体は、障害者雇用促進法において、従業員数に応じて一定の割合で障害のある方を雇うことが義務付けられています。

これを障害者雇用率制度といい、令和3年3月現在、従業員が43.5人以上の民間企業の事業主には、2.3%の法定雇用率が定められています。また、国・地方公共団体等における法定雇用率は2.6%、都道府県等の教育委員会における法定雇用率は2.5%です。雇用義務を履行しない事業主には、行政指導が行われます。

障害者雇用における合理的配慮について

障害者雇用枠では、障害の有無にかかわらず従業員が平等に働き、能力を発揮できるよう、1人1人の障害特性に合わせた配慮を得ることができます。これを合理的配慮といいます。

事業者は、過重な負担にならない範囲で、この合理的配慮を障害のある方に提供する義務があります。障害をオープンにし、合理的配慮の元で働くことによって、働きやすい環境での就労が実現できます。そのため、障害者雇用は一般枠での就労と比べ、長期的に安定して働ける可能性が高くなります。厚生労働省職業安定局は、障害のある方が一般雇用枠で就職する場合、職場定着率は低くなる傾向があるという調査結果を発表しています。

障害の種類

障害者雇用の対象になる障害の種類は、以下の4つです。

身体障害 身体機能の一部に不自由があり、日常生活に制約がある状態。 視覚障害・聴覚障害・肢体不自由など
知的障害 知的発達の遅れや知的行動の支障のため、社会生活に影響をきたす状態。IQと生活能力水準で判断される。
発達障害 先天的に脳の機能に偏りがあり、様々な傾向や社会生活に支障が生じる状態。 自閉症スペクトラム症・注意欠陥多動症など
精神障害 脳および心の機能や器質の障害によって日常生活や行動に支障をきたす状態。 気分障害・統合失調症・不安障害など

障害者雇用枠で働くために

障害者雇用の対象になるのは、身体障害・知的障害・発達障害・精神障害のいずれかに該当し、原則として障害者手帳をお持ちの方です。

障害者手帳は以下の3種類に分かれています。

  • 身体障害者手帳
  • 精神障害者保健福祉手帳
  • 療育手帳(地域によって愛の手帳・みどりの手帳など名称が異なることがあります)

各手帳の申請は、各市区町村の障害福祉課の窓口で行う必要があります。申請の際は医師による診断書、本人確認書類等が必要です。

障害者雇用枠で就労するメリット・デメリット

障害者雇用で働くことには、どのようなメリットとデメリットがあるでしょうか。

1番のメリットは、障害特性への理解が得られることです。障害への配慮があり、残業もない求人が多くみられます。そのため通院がしやすくなったり、通勤の負担が減らせたり、隠すことなく服薬ができたりします。また、得意なことや長所を生かして働ける可能性も広がります。結果として、安定した就労が可能になります。

しかし、一般雇用枠に比べると求人の数は少なく、仕事の選択肢が狭められてしまうことがデメリットです。また、障害に対する配慮が影響し、逆に裁量のある仕事にありつけないことで悩む従業員もいるようです。

障害者雇用枠で就職する場合には、仕事内容や期待される役割、社内でのキャリアプランについて、より詳しく確認することが大事でしょう。上司とうまくコミュニケーションをとることで、「配慮のある労働環境」と「やりがい」の両面で満足の行く仕事に就いている方も多くいます。

障害者の最近の就職状況

障害者雇用枠での就職は増加傾向にあるのでしょうか。全体の傾向をみていきましょう。

年々増加している障害者枠での就職件数

厚生労働省が発表した調査によれば、ハローワークを通じた障害者の方の就職件数は10年以上連続で増加しています。平成30年のハローワークを通した障害者の就職件数は102,318件で、前年度から比較して4.6%増加しました。

また新規求職申込件数は211,271件で、前年度と比較して4.5%の増加でした。

就職率は48.4%で、前年度と同水準です。

障害別の内訳については以下の通りで、障害種類にかかわらず新規求職申込数と就職件数はいずれも増加しています。()は対前年度比です。

  新規求職申込数 就職件数
身体障害者 61,218件(1.1%増) 26,841件(0.3%増)
精神障害者 101,333件(8.1%増) 48,040件(6.6%増)
知的障害者 35,830件(0.2%増) 22,234件(5.9%増)
資料・抜粋:厚生労働省 平成30年度障害者の職業紹介状況等より

障害者雇用を促すための国や企業の取り組み

厚生労働省は、障害の有無にかかわらず各人が能力・適正・希望に応じて活躍できる社会を目指し、障害者雇用対策に取り組んでいます。

 前述した、企業への障害者雇用を義務づける障害者雇用率制度のほか、障害者雇用納付金制度では事業主間の経済的負担を調整するため、法定雇用率を満たしていない企業から納付金を徴収し、障害のある方を多く雇用している企業へ向け必要な施設設備にかかる費用等の助成金を提供しています。

また、障害のある方に対しては、職業紹介や地域就労支援の実施を各地で行っています。

  • 全国に544ヶ所あるハローワークでは、職業相談・求人の紹介や職業指導を受けることができます。
  • 地域の障害福祉圏域に設置されている障害者就業・生活支援センターでは、就業面と生活面の相談支援を実施しています。
  • 各都道府県に設置されている地域障害者職業センターでは、専任カウンセラーが職場適応援助等の専門的な支援を行っています。

これら地域の就労支援機関では、就職準備の段階から、企業とのマッチング、職場への適応、定着支援まで、一貫したサポートを受けることができます。

障害者雇用における給料と雇用環境

障害者雇用枠で働く際に気になる職場の環境やお給料について、ご紹介します。

障害者雇用のお給料の相場

障害者雇用におけるお給料の実態はどのようなものでしょうか。

厚生労働省が障害のある方82万1,000人に対して行った調査によると、平成30年5月の平均賃金は、身体障害者が21万5千円、知的障害者が11万7千円、精神障害者が12万5千円、発達障害者が12万7千円となっています。

このうち、調査対象となった方の障害種別は、身体障害者が42万3,000人、知的障害者が18万9,000人、精神障害者が20万人、発達障害者が3万9,000人でした。この数字だけを見てみると、「障害者雇用枠の賃金は安い」というイメージを強く持つかもしれません。しかし、注視すべきは雇用形態と労働時間です。

正社員の割合を見ると、身体障害者は52.5%、知的障害者は19.8%、精神障害者は25.5%、発達障害者は22.7%です。身体障害をお持ちの方以外の正規雇用は20%前後と、低い水準です。

また、週30時間以上のフルタイムで働く身体障害者は79.8%、知的障害者は65.5%、精神障害者は47.2%、発達障害者は59.8%です。それ以外の方は、週に30時間未満の短時間勤務です。

週所定労働時間別の1ヶ月の平均賃金を見てみると、フルタイム(30時間以上)の者が24万8千円、20時間以上30時間未満の者が8万6千円、20時間未満の者が6万7千円となっています。

障害のある方の多くは、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員などの非正規雇用形態、かつ短時間勤務を行っているため、結果としてお給料が低い傾向があるようです。ただし、障害者雇用枠でもフルタイムの正社員求人は多くあり、その人の能力次第で給料をあげていくこともできます。

障害者雇用の働き方(ポジション・勤務時間・勤務地)

障害者雇用ではどのような職種・ポジションがあるのでしょうか?

平成30年の調査では、事務職が32.7%と最も多くなっています。次に多い職種は生産工程に関わる職業で20.4%、続いて専門職・技術職13.4%、サービス業10.3%です。

このように現在の障害者雇用枠では、一般事務・総務事務・営業事務・経理事務・人事事務などの事務職が多いです。また近年では、システムエンジニア・プログラマーなどのITエンジニア職の求人が多く見られます。エンジニア職は、自閉症スペクトラム症なの発達障害の方とも相性が良い職種として注目されています。

またポジションについては、役職のない一般社員として働いているケースが多いです。一方で障害者雇用には、個人の経歴やスキルに応じて職種やポジションを決定するというオープンポジションもあり、部長や課長など管理職の役職についている方もいらっしゃいます。

また勤務時間については、障害特性や体調に合わせ、時短勤務やフレックス制度のある会社、ラッシュアワーを避けた時差通勤等ができる会社も増えています。

障害者雇用では、合理的配慮のもとこのような勤務時間の配慮に関しても企業と相談することができます。

最後に、障害者雇用枠での募集はどの地域が多いのでしょうか。

現在のところ、障害者雇用枠の求人は東京都23区に集中しています。これは障害者雇用を行っている会社には大企業や上場企業が多く、その本社は23区内にあることが多いという背景があります。神奈川県・千葉県・大阪府にも同様に多くの求人が見られますが、大企業の少ない地域ほど、障害者雇用が進みづらいという現状があります。

障害者雇用を実施している企業

前述のように、従業員が300人以上の大企業や上場企業では、積極的に障害者雇用を実施しています。

一方で、中小企業の障害者雇用への取り組みは、進んでいるとは言えません。

この理由として、中小企業は大手企業と比べ人的資源が少なく支援者の設置が困難であること、採用のコスト・ノウハウが少ないことなどが挙げられ、多くの課題が残っています。

障害者枠への就職・転職はより良い働き方を実現するための大切な手段

 

障害者枠への就職・転職は、より良い環境での働き方を実現するために有効な手段のひとつです。
現在一般雇用枠で働いている障害者の方も、障害者雇用枠を考慮に入れることで自分らしい働き方が見つかるかもしれません。


障害者手帳を所持していれば、障害があっても「一般枠」「障害者雇用枠」両方での就労が可能です。
一般枠から障害者枠に転職し、周囲の理解のもと働けるようになったことで、ストレスが減り精神的にも安定したという方は多くいらっしゃいます。

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