うつ病の人も仕事は続けられる|自分に合ったより良い働き方に向けて

2023年1月11日

うつ病は、日本では約15人に1人が一生のうちにかかる病気といわれており、特別な病気ではありません。近年はメディアでも注目され、一般的なうつ病への認知度も上がってきました。しかしながら、未だ正しい理解が浸透していないという現状もあります。この記事では、うつ病について正しく紹介するとともに、うつ病と付き合いながらどのように仕事をしていくかについて、考えていきたいと思います。

うつ病の原因

うつ病の原因は、心因性・内因性・身体因性の3つに分けることができます。それぞれの詳細を以下に説明します。

・心因性

環境や性格が原因のうつ病です。職場・家庭での心理的ストレスや、身内の不幸・災害などによるストレス体験、精神的葛藤などによって発症します。

・内因性

遺伝や体質が原因のうつ病です。心理的ストレスで発症することが多く、心因性のうつ病と区別することは難しいといわれています。

・身体因性

身体の病気や脳の病気、薬剤が原因のうつ病です。糖尿病や脳腫瘍、副腎皮質ステロイドなどが原因で発症します。

うつ病を抱えながら仕事をしている人

うつ病のよくある症状・特徴

誰でも落ち込むこと、憂うつになることはあります。しかし、うつ病になると、抑うつ状態が継続的に続き、私たちの心身の安全と健康に深刻な影響を及ぼします。少なくとも2週間の間、ほぼ毎日のように悲しみや空虚感を感じており、振り払うことができないという方はうつ病と診断される可能性が高いでしょう。以下に、うつ病の代表的な症状についてまとめます。

精神症状

● これまで楽しめていた活動への興味や喜びがなくなる

● 抑うつ気分が続き、気力の減退がある

● 自分は価値がないと思う

●自分への罪悪感や自責感を覚える

●集中が困難になる

● 物事の決断ができなくなる

● 朝に気分が最も重く、夕方にかけてやや回復していく(これを日内気分変動といいます。一方で、若年層に多い新型うつでは、夕方にかけて気分が重くなるといわれます。)

● いらいらする

● 不安を感じる

● 急に涙が出る。または涙もろくなる

● 悲観的になる


身体症状

● 不眠や過眠など、睡眠の障害が起きる

● 食欲の変化、突然起こる体重増加または減少

● 疲労感が続く

● 腹痛や胃の不快感がある

● 頭痛や肩こりがある

● 動悸がする

活動できない自分に対する自責念から未来に希望が持てず、自分を追い詰め、死んでしまいたいという自殺念慮を抱くこともあります。死や自殺について反復的に考えるようになったら、すぐに医療機関にかかりましょう。

うつ病になりやすい人の性格と思考性

うつ病は誰でもかかる可能性のある病気ですが、下記に当てはまる方はうつ病になりやすい病前性格といわれています。

●律儀で責任感が強く、物事にのめり込みやすい方

●仕事には几帳面で責任感が強く、対人関係では他人のために尽くし秩序と援助を重んじる方

●自尊心が低い方

●ストレス対処に問題がある方

また、うつ病などの精神疾患の治療を目的として発展してきた認知行動療法では、抑うつの原因を、「あらゆる出来事に対してネガティブに偏った思考をしてしまう歪んだ認知」であると考え、その認知の歪みを修正していきます。

そこで問題となる”歪んだ認知”や”不条理な思い込み”には、以下のものがあります。

● 良いことを無視し、なんでも悪い方に考えるマイナス思考

● 失敗や短所を大げさに考え、成功や長所を過小評価する

● 客観的な事実より、感情的に物事を決めつけてしまう

● 〜すべき/〜しなければならない と考える固定的な思考

● 1つよくないことがあると、「いつもこうだ」「上手くいったためしがない」など、一般化して捉える

● 確かな理由がないのに、深読み・先読みによって否定的な結論に飛躍してしまう

また、前述した性格や思考以外にも、遺伝や脳内化学物質のバランスの崩れ、環境などによっても、うつ病発症のリスクは高まるといわれています。

うつ病になりやすい仕事・職場

うつ病になりやすい仕事・職種には、時間外労働が多い仕事や、数字・結果を出さなくてはいけないというプレッシャーが大きい仕事などが挙げられます。また、職種問わず職場での人間関係トラブルはうつ病の発症の大きな要因となっています。

「エンジニア職で、過度な残業がある職場」「営業や事務職で、上司からの過度なプレッシャーがある職場」などはうつ病になりやすい職場環境と言えるかもしれません。

うつ病を改善し再発させない方法

うつ病は再発しやすい病気であり、再発を繰り返すとさらにその後の再発率が高くなるといわれています。ここからは、再発を防ぐためにできることについて、紹介します。

生活習慣を改善する

うつ病の発症・再発を防ぐため、心身を健康に保つことはとても大切です。

● 適度な運動

定期的な運動はうつ病に効果的なことが研究によって証明されています。ウォーキング・ジョギング・ヨガなどの運動は、ストレス解消、睡眠の質の改善、身体能力の向上に有効です。

● 健康的な食事

バランスの良い食事は心の健康にとっても重要です。脂質が少なく、たんぱく質・野菜・果物の多い食事は、副作用のいくらかを消失させることもあるといわれています。また、アルコールは短期的な不安を解消させるのに役立ちますが、長期的にはうつ病を悪化させるため、要注意といわれています。

職場環境を整える

うつ病を再発させないためには、どの様な職場環境が必要でしょうか。

● 理解者・味方をつくる

うつ病のサインや心の不調というのは、「周りの人に心配をかけたくない」「メンタルが弱いと思われる」という気持ちから、周りに助けを求めづらく、自分で抱え込む方が多いといわれています。その結果、職場でも孤立感を感じ、自分を責め、より大きなストレスを抱えてしまいがちです。自分や、不安定な精神状態のことを理解してくれる人の存在は非常に重要です。職場に理解者・味方がいるかいないかでは、精神保健の観点から見ても、病状に大きな影響を及ぼします。自分の症状を打ち明けることは簡単ではありませんが、日頃のコミュニケーションから、周囲の人との信頼関係を作っておくことが大切になります。

● 勤務時間を調整する・毎日一定の時間に食事をするよう心がける

正しい生活リズムは心の状態を安定させる鍵となります。

仕方なく残業・食事を抜いてしまうという事態を避けられない時もあるかもしれませんが、できる範囲で毎日決まった時間に食事や睡眠を取り運動を取り入れることが、うつ病の再発予防につながります。

偏った認知を自覚し修正する

前述したように、うつ病に罹患している時や気分が落ち込んでいる時、私たちの認知や思考は、非合理的で偏ったものになりがちです。また、私たちの感情は出来事から生じているのではなく、その出来事に対する私たちの認知や思考から生じます。よって、ネガティブな感情が現れた時には、「どうしてそのように思ったのか」「その考えは現実的なものか」「正しく物事を捉えられているか」を検討し、思い込みや認知の歪みを修正していくことが大切です。思考が変われば、感情や行動も変化します。これはうつ病などの治療に用いられる認知行動療法の考え方です。

病院やカウンセリングを活用する

自分の認知を自覚し修正することについて述べましたが、自分1人で客観的な視点に立つことは簡単ではありません。うつ病が重くなる前に、心療内科やメンタルクリニックを受診し、カウンセリングや心理療法を受けることは、精神的な負担を軽減するために大変有益です。また、うつ病が重症化すると、抗うつ薬などの投薬が必要になります。早めに専門家に相談しましょう。

うつ病を完治させることは簡単ではないことを理解する

前述のように、うつ病は大変再発が多い病気です。一度症状がなくなり自分はもう大丈夫だと思っても、治療や服薬をやめるとぶり返してしまう可能性があります。うつ病の症状がなくなり、元の状態に戻ることを「寛解」といいますが、寛解は治癒とは異なります。治癒は完全に治ることを意味しますが、寛解は症状が一時的に落ち着いている状態を意味します。もちろんそのまま回復に向かう方もいますが、注意しないと再発の可能性があるということです。寛解に至らなくても就労は可能です。治癒を目指すより、うつ病とうまく付き合っていくことが大切かもしれません。

うつ病で仕事ができない時は環境を変えることも大切

現在の職場でできる対策を試みたが環境改善が難しい時や周囲の理解がない時、うつ病が重症化し仕事への支障が大きい時は、どうすれば良いのでしょうか。うつ病が悪化してしまった時にはどのような選択肢があるのかについて、ご紹介します。

仕事を休む・休職する

うつ病の治療期間は、大きく急性期・回復期・再発予防期の3つに分けられますが、急性期のうつ病の治療にまず必要なのは、休養です。休養によって体力・気力を回復させることは必須ですが、真面目な方ほど休むことへの抵抗が強い傾向があります。しかし、うつ病を放置することは、精神面に深刻な影響を及ぼします。うつ病を重症化させないためにも、医師とよく相談したうえで、必要な場合には休職を検討することも重要です。

仕事を辞め、継続的に就労するためにトレーニングを受ける

休養によって心身の状態が安定してきたら、自分に合う働き方について考えてみましょう。再発しやすいうつ病を抱えながら仕事をしていくためには、自分の心や障害と向き合い、上手に付き合っていく方法を探すことをおすすめします。うつ病を経験した方が社会復帰を目指す際に利用できるサービスの1つに就労移行支援があります。就労移行支援は、就職活動のサポートを行ったり、就労や障害特性に関する相談を受けたりしてくれるサービスです。ストレスマネジメントやコミュニケーション研修、仕事のスキルアッププログラムなどが充実しているところもあります。

障害者枠での転職

心身の状態が落ち着き復職を考える段階になったら、うつ病などの障害を企業に開示するオープン就労か、企業に障害のことを伝えずに働くクローズ就労かを検討する必要があります。障害者枠とは、企業や自治体が障害のある方のために設けている「障害者雇用枠」のことです。障害者枠で転職をすると、障害に理解のある環境で、障害特性に合わせた配慮を受けながら働くことができます。一般枠で障害のことを非開示にして働くよりも、障害者枠での就労は長期的に安定して働ける可能性が高くなります。一方で、求人数が少ない、裁量のある仕事が限られることがあるなどのデメリットもあるため、よく検討することが重要です。

うつ病の人ができる、おすすめの仕事・職場

うつ病を抱えながら働いていくためには、どのような仕事が良いのでしょうか。うつ病に至る原因や症状は様々なため、誰にでもあてはまる適職というのはありません。人間関係が得意でない方は、なるべく人との接点がない工場での軽作業や清掃の仕事を選んだり、大きな責任がプレッシャーになってしまう方は、マニュアルが決められている一般事務職のオフィスワークを選んだりすることが、精神的な負担がかかりにくいでしょう。うつ病再発を予防し、心身の健康を保つために働きやすい職場には、以下のような環境が考えられます。

● 障害に関する理解があり、個性を尊重する

● 障害者雇用に積極的に取り組んでおり、障害を持った方が既に働いている

● 普段からメンバー間の助け合いがあり、心理的安全性が高い

● 勤務時間が決まっており、生活リズムが整えられる

● 日々の通勤が負担になる方は、通勤時間が短い職場や時差通勤が可能な職場

●在宅ワーク

●短期アルバイト

うつ病の人が転職を考える際は、転職エージェントへの登録がおすすめ

障害者雇用枠での就労を検討したいけれど、どうしたらいいか分からないという方は、転職エージェントを活用しましょう。転職エージェントは、転職を希望する求職者と、採用を行う企業との橋渡しをするサービスを展開しています。ココピアキャリアでは、障害者雇用に特化した就職・転職支援を行っています。転職エージェントの活用がおすすめな理由は、以下の2つです。

それぞれの障害特性等に応じた、求人の紹介が受けられる

障害者雇用専門の転職エージェントは、多くの障害者雇用での就職・転職をサポートしてきた経緯から、多くの知見を持っています。そのため、利用することで個人の障害特性に応じた求人の紹介を受けることができます。また、「うつ病」を抱えていても、人によって発症の原因・症状・ストレスを感じる事柄・適職・自分に合う環境などは様々です。ココピアキャリアでは、休職者の方のお話をじっくりヒアリングし、みなさまの障害特性やご希望の条件・環境に合う求人をご紹介しています。

これまでの経験を活かした、幅広い求人の紹介が受けられる

障害者雇用枠では、採用している職種が狭くなってしまうというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。しかし、従業人43.5人以上の企業には、規模に応じて一定の障害を持つ方を雇う義務が定められています。それらの企業の業種や採用を行う職種は多岐にわたるため、障害者専門の転職エージェントでは、転職希望者のスキルやご経験に応じた幅広い求人の紹介を受けることが可能です。また、業務内容や給与などの条件面も、専門のアドバイザーが交渉をしてくれるため、より自分の強みを生かしたポストへの転職が可能になることもあります。ココピアキャリアでは、企業とのマッチングから、転職活動時の書類の添削や面接対策、企業への条件交渉、転職中の不安や疑問のサポート、内定後のフォローまで、一貫してみなさまのお仕事探しをサポートします。ぜひ転職エージェントを活用し、ご自身に合ったより良い働き方を見つけていただきたいと思います。